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「はい、次の方どうぞ〜!!」


大陸屈指の福祉国家フィン…その首都ヨルムにある老人ケア施設『太陽の家』のロビーにいささか間抜けな声が響く。


「はぁ、何で僕がこんなことを…」


様々な人であふれかえるロビーをながめ、当の声の主である介護士のブランは思わずタメ息をもらす。

本来、『太陽の家』への来客は、入居者の家族がほとんどであり、それも1日に多くて2〜3家族といったところである。

しかし今ロビーには、少なく見積もっても三十人近くの人がごったがえしている。しかも全員入居者とは何の血縁関係もない人たちなのだ。


「すいません、お手洗いはどちらかしら」


中年の女性にたずねられ、生真面目なブランが笑顔の対応をしていると、二階へと続く階段から、ここの入居者である老人、ガンダルガが降りて来た。

元冒険者の戦士であった彼は、ブランが見上げる程の大柄な男で、真っ赤なシャツとはげあがった頭が人目を引く。

ガンダルガはロビーの様子を見ると顔をしかめ、ブランを手招きして呼びよせた。


「おい、小僧!!ちょっと来んか!!」


「あの、小僧ではなくてブランです」


「そんなこたぁ、どうでもいいわ。それより、こりゃ一体何の騒ぎなんじゃ?」


「それは…」


「どうせまた、あのババアがらみのろくでもない事なんじゃろ?」


鋭い指摘を受けて、ブランは思わず口をつぐんでしまう。確かにガンダルガの読み通り、この混雑の原因を作っているのは、アリッサ…この施設の三階に入居している、ブランが担当する元冒険者の魔法使いに他ならないのだ。


「まったく…ワシが少し目を離すとすぐにこれじゃ」


ガンダルガは、昨日までの一週間、かつて一緒にパーティーを組んでいた戦友たちと共に隣国まで温泉に行っていたのだ。


「では、先ほどの質問に答えてもらおうか」


ガンダルガからのプレッシャーにあえなく屈したブランは事情を簡単に説明した。


先月、アリッサは、首都ヨルムからはるか西にあるキリー村で起こった怪異をその魔力によって無事に解決した。

噂というのは、瞬く間に広がるもので、元々、老後の小遣い稼ぎにと、気が向いた時に占いや魔物払いをやっていたアリッサだったが、彼女への依頼人が、この一週間で十倍近くに膨れ上がったのだ。




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