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085.精霊術士、収納アイテムを得る

「"人魚の肉"。不老不死を齎す、究極のアイテムの1つや!!」

「あー、以前から欲しがっていましたもんねぇ……」


 カングゥさんが、納得したように、頷いている。


「実はね、皆さん。このメロキュアは、かつて人魚の肉を食べたことがあるのです」

「えっ……!?」

「そうや。そのせいで、不老不死になってしもうて……。もう30近くなるのに、未だに、こんなちんちくりんや」


 メロキュアさんが、自身の薄っぺらい胸に手を当てて、はぁー、とため息を吐いた。


「せめて、もう少し大人になってから、不老になったら良かったのに……。こんな見た目じゃ、殿方も相手にしてくれへん」

「まあ、あなた、元々、研究室にこもりっきりだから、そもそも男性との出会いとかあんまり……」

「不老でもないのに、独り身のあんたに言われたくないわ」

「私は、そもそも、生涯の伴侶など求めていませんので。一人は気楽でいいですよ」

「よぼよぼのじじいになった時に、同じこと言えるとええけどな。そんとき泣きついても、せせら笑ったるから覚悟しときや」

「あ、あのぅ……」


 なんだか、2人の世界に入りつつあるカングゥさんとメロキュアさんの会話を止めるように、僕は、おそるおそる挙手をした。


「実は、僕ら、すでに"人魚の肉"、持ってるんですが……」

『へっ!?』


 綺麗にカングゥさんとメロキュアさんの声がハモった。仲良いなぁ。


「いや、持ってるって……でも……!?」

「ほら、これよ」


 チェルが大切に保管していた人魚に肉を差し出した。

 まだ、鑑定もきちんと受けていないが、大賢者様なら、きっと見ただけでそれが本物かどうかわかるだろう。


「…………ほ、本物や。え、ちょ、マジで……」

「あー、もしかして、黄昏の湖畔のボスドロップですか?」

「そうです」


 どうやら、カングゥさんは、僕らの攻略動画を見てくれていたらしい。


「いや、確かに、あそこのボスは人魚ですがね……。でも、まさか、たった1回の攻略で、こんな超絶レアなアイテムを手に入れてしまうとは……。本当に君達は規格外がすぎる」

「ぼ、僕達自身そう思います……」


 チェルから、人魚の肉を手渡されたメロキュアさんは、大切なものを扱うように両手で恭しく持ち上げながら、マジマジと見つめ続けている。


「こ、これを解析できれば、もしかしたら、うちの不老不死を解除することも……。いや、もし、解析できんかったとしても、最悪、グゥにこれ食べさせれば……」

「なんか恐ろしいこと言ってませんか? 嫌ですよ。あなたと2人だけ年取らずに、何百年も何千年も過ごすのは」

「と、とにかく! これ、もろてもうてええんか? 売れば、ひと財産どころやあらへんけども」

「別にいいわよ。元々、レアアイテム過ぎて、扱いに困っていたのよ。あなたが処分してくれるなら、こっちとしても、ありがたいわ」

「お、恩に着る!!」


 メロキュアさんは、何やら筒のようなものを取り出すと、人魚の肉がその中へと吸い込まれた。


「ふぅ、研究室に持ち帰るのが楽しみや」

「あ、あの、なんですか。今、人魚の肉を吸い込んだ、水筒みたいなもの……?」

「ああ、これか」


 件の筒を僕らにもよく見えるように掲げるメロキュアさん。


「最近開発した魔道具でな。マジックボトルっていうんや。中に魔術的な仮想領域が存在してな。ある程度の大きさのものまで、この中に保管することができる。今、量産に向けて、動き出しとるとこや」

「す、凄い……そんな魔道具が……!!」


 この魔道具があれば、冒険者は大きな荷物を持って、ダンジョンに臨まなくても良くなる。

 機動力も上がれば、長期の探索も可能になるだろう。

 冒険者以外でも、商人などは、自身の商品をここに入れて、身軽に運ぶこともできるようになるだろうし、映像水晶(パルスフィア)に匹敵するほど、革命的な魔道具だと言えた。


「言うても、コストがかかりすぎるから、映像水晶ほどたくさん作ることはできんやろけどな。人魚の肉の礼や、一本、あんたらにあげる。聖塔の攻略でも役立つやろうし」

「い、いいんですか!! めちゃくちゃ助かります!!」


 これが、あれば、聖塔はもちろんだが、攻略に数日を要する特級ダンジョンの攻略でも、間違いなく役立つ。

 僕は、メロキュアさんから、マジックボトルを受け取ると、すぐにアイテムバッグに入れておいた。失くさないように、あとで、紐でもつけておこう。


「じゃあ、これで、条件のうち2つはクリアしたことになるのね」

「そうや。あとは、天空の架橋さえ、攻略できれば、うちは、全力で、あんたらの聖塔攻略に力を貸すで」

「望むところよ。みんな、いいわね」


 立ち上がったチェルに、コロモが、エリゼが、セシリアさんが力強く頷いた。

 もちろん、僕も。


「おっ、あれをやるんですね」

「あれ?」


 動画で見たことがあるらしいカングゥさんが、微笑を浮かべ、こちらを見守っている。

 立ち上がったチェルに、僕らは手を重ねた。


「私達はぁ~」

「かわいい!!」

「強い!!」

「輝くアイドル冒険者!!」

「天空の架橋の攻略目指してぇ~!!」

極光の歌姫ディヴァインディーヴァ、レディ……」

『ゴー!!!』


 こうして、僕らの特級ダンジョンへの挑戦が始まったのだった。

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