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異世界No.3―ガーデン2

 もうね、開きすぎると自分でも分からなくなるんです。

 赤とブラウンの二人に何処かの屋敷に連れてこられて二日間程経った。

 この二日間で大分私の置かれている状況が分かってきた。



 私の種族は普通に存在している花人とはちょっと違うらしい。


 ・・・おい、おい!白神ぃぃ!?話が違うんじゃないかなぁ!?



 おっと失礼。普通なら森の奥深くに自生する草木から生まれるらしいんだけど、どういうわけか私はこの世界で重要な太陽花という各々の国に一つある大花に宿ってしまったらしい。

 まだ白神から何も返答が無いので原因は不明だけどまぁ、生まれてしまったものは仕方ないよね。


 あ、ちなみに言葉の方は片言なら理解できるようになった。案外すんなりと覚えられて良かった。



 そしてここからが重要なこと


 太陽花から生まれた花人には役目がある。この国に長く留まるり長生きしてこの土地の生命力マナを正しく循環させることだ。この国は長い間太陽花の花人が居なかったために荒廃が進み隣国からは喧嘩を売られている状態で何としても私を保護したいようだ。

 私を保護した二人は王家派の貴族の出身で第一王子に命じられ異変があった王家の森を調査中に眩しい光を放つ太陽花の蕾から生まれ落ちる私を発見、保護したらしい。あの二人騎士なんだね。通りで私がぶつかってもびくともしないわけだ。



 それからここ二日間は言葉を覚えることと平行して歩行の練習をしていた。ちなみに連れてこられたこの屋敷は王宮の外れにある離宮で人は余り居ない。信頼のおける使用人だけを置いていると説明された。正直それは有りがたい処置だと思う。人が大勢居るところにいたらストレスで疲弊しそうだもん。特に王宮なんて胃に穴が空いても不思議じゃない。



 正直な話、会ったこともない人達のために一生を閉じ込められて暮らすのは嫌だ。けれど現状どうにか出来る事もない。

 今の私は言葉余り話せない、歩くのも下手、世間の常識も知らない、そんなないない尽くしで何が出来るのだろう。


だから今は大人しく知識と力をつけることに専念しようと思う。無闇に敵対しても多分ややこしくなるだけだし



 出来るだけ無知で疑いなんてこれっぽっちもないように振る舞おう。腹黒い人にはバレそうだけどね。



「ジュア様、昼食のお時間です」


「ん」



 だから極力喋らない様にしているが誰も咎めないので少々心苦しい気もするけど、そこは考えないようにしよう。あと、喋ると喉も引き攣って違和感が有るから無口でいる方が楽なんだよね。


私は居るだけでもこの国の土地を豊かにするのだ。多分我が儘放題でも咎められないだろうね。逆にそれで取り入ろうとするやつの方が多そう。

 良識ある人もなにも言わない辺り相当追い詰められている状況だったんだよね多分。


 その弱味に付け入るのだから私も酷い奴だよね。



 言葉が割りと直ぐに理解出来たのは良かったのだけども、からだの方は未だに鈍く、スプーンを持とうとしても三回程度失敗する。スープを掬えてもプルプルと上手く力が入らない為に溢してテーブルクロスを汚してしまうのは申し訳ない。洗濯係の人ごめんなさい。料理人の皆さんもすいません。速やかに綺麗に食べれるようにします。



「ジュア様、お辛いのなら私共が━━」


「いや」


「━━━承知しました」



 いつまでも食べさせてもらうのは精神的に辛い。早くどうにかしないと私の心が死ぬ。それと侍女さん達、明らかに落胆しないでくれます?赤ん坊状態だけど見た目は10代後半。絵面的にも辛いので勘弁してください。・・・そんなにテーブルクロス汚したくないのかなぁ?


 シワも染みも一つもない真っ白なテーブルクロスの敷かれたテーブルに曇り一つないカトラリー。何かの蔓で複雑に編まれたバスケットに山盛りに置かれた白いパン。そして私にとってのメインディッシュのスープ。今日のお昼はジャガイモの冷製スープだ。ちなみに山盛りに置かれたパンは一切食べることが出来ない。胃に負担がかかるので流動食しか今は食べれないのだ。

 専門医と名乗っていた人が暫くはスープかオートミールだけ出すように指示していたのを聞いた。


 なら出さなければいいのだけど、どうも昔からのしきたりで高貴な身分であるほど従わなければいけないらしい。目の毒なんで出されると少々癪に障るのだかいくら抗議しても覆りそうにないので見ないようにしているが、今のところ焼きたてのいい香りで全敗中だ。固形物も食べれら様になったら絶対に一つは食べてやる!




あ、ちなみにジュアってのは私の名前らしい。離宮に連れてこられて直ぐに王の遣いと名乗る立派なカール髭のナンチャラ大臣に「王から賜った大事な名を告げる」とか凄く仰々しく私に名前を告げていった。古代のこの国の言葉で太陽という意味だそうだ。

 侍女さん曰く正式な命名式は後日盛大にするらしい。


 太陽花から生まれた花人は代々太陽に因んだ名前をつける。しかもジュアという名前はこの国「タイファ」の花人が代々名乗る名前なので個人名ではなく、「タイファ」という国の太陽花から生まれた花人という意味で私個人の名前は無い。


 タイファという国について説明しよう。とは言っても私も勉強がまだ途中なんだけど。

 タイファは温暖な気候で主に穀物や野菜、生花などの生産で成り立っていた国だった。それがここ百年で土地が荒れて国は疲弊した。原因は太陽花の蕾が咲き花人が生まれなかったこと、これに尽きる。

 しかし咲かない原因は未だに不明で私が生まれ出でた場所は未だに調査隊が原因究明に奔走している。


今の調査では何らかの影響で咲けなかったのではないかと仮説をたてている。魔物が(やっぱりいるんだね)根を食い荒らす事で太陽花も弱ることはあるらしいが今回は根は無事な状態で蕾だけが異常状態になっていたそうだ。何らかの妨害で花弁を開けず弱っていた私が死ななくて本当に良かった。

 どうも花人は五歳程度の姿で生まれるのが普通で、私はかなり育ちすぎで生まれたのだそうだ。多分私も五歳程度の姿で生まれるはずだったのだろう。あの時眠ったりしなければ・・・あれ?



 もしかしてこの国が廃れたのって私の二度寝で寝坊のせいなの?


 せ、責任重大だわ



 もしかすると私はとんでもない事をしでかしたのかも知れない。





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