異世界No.2―ノクターナル―10
と、まぁ……やって来ました久々の森!
鬱蒼と繁った木々の隙間から木漏れ日が差して……ないんだよね、この辺のエリアは。
もう少し比較的安全な入り口付近は暖かい寝心地のいい草むら(猫じゃらしの原っぱ)があったりして爽快何だけど…彼処私の絶好のお昼寝スポット!
――はっ!ヤベっ、話しズレた。
えーっと、鉱石調達と日頃の鬱憤発散……ではなく、狩猟税を払ったなら許される範囲狩ろうぜ……でもなくて、経験値稼ぎという体で来ております。別に敵と闘えば経験値が入るわけではないよ? 言葉のあやね。
――あ、でも、何故か攻撃受けると私の中の何かが上がっている気がする……怒りのボルテージかな? 決してM度が上がってるわけではないと思いたい。だって敵に対する闘争心ってヤツが沸々としてくるもの。
「……あの~ノワールさん? その枝から降りてきてもらえませんか?」
「嫌だ」
今何が起きてるのかと言いますと……
あの変な人――仲間に勧誘に来た人ね――が仲間を更に引き連れて…森に居たんですよ。
しかも今度は兄弟子も一緒に誘うもんだから大変で……構うのも疲れたので誰も上がって来れないだろうと思う巨木の枝に登ってしまいました。流石は猫の獣人。降りれるか心配だがあの変な人とは会いたくもないし話を聞きたくもない……目も合わせたくない。
兄弟子には悪いが関わりたくないのだ。
「さあ、君達は僕の仲間になるんだよ!」
「……(呆)」
「……(アホらしい)」
もうコイツどこの言葉で喋ってんだレベルに話しが通じない。貴様宇宙外生命体か!?
折角の憂さ晴らしが更に鬱憤が溜まった。
「あのさぁ……」
「なんだい?子猫ちゃん?」
「………(鳥肌+絶句)」
「………(脳内ショックにより真っ白中)」
絶句。絶句だよ!!
何だよ子猫ちゃんってのは! 私は今は男! オ・ト・コ・! ノーマル!……あ、いや…自分でもどっちか何て区別がつかないなぁとは思うけど、藍苺以外は論外! だからこれは変なことそうそうなんだ!!!
………ご免なさい混乱してました。
つまり、性別はこの際関係ないとして、藍苺以外に口説かれても(藍苺に口説かれても)なんとも思わない。むしろコイツにされると鳥肌が…。
「うちのバカが毎度すいません」
「あ、いえ……そうですね」
お世辞でも否定できない奴のウザさは尋常じゃないわ。
「おい、無礼だぞ」
「「「「「そうよそ「煩いバカ女共」………」」」」」
かしましかった増えに増えた五人の女性たちが一斉に静かになった。
バカ女と怒鳴った男の人はお付きのお供の二人の内の一人。一番寡黙そうな人だった。もう一人はもう一人で深刻そうな顔を……あ、此方の人の方が起こると怖そう……
眼光が鋭くてお嬢さん方には刺激が強すぎた見たいで黙り混んでしまっている。出来ればそのまま黙っててほしい。
「あの獣人が言ってた子?」
「あぁ、あのバカの目に留まっちまった哀れな奴だよ」
「どうする?私があのバカ、メイスで撲って大人しくさせる?」
「個人的には大賛成だな」
「雇い主だから一応……ダメだ。残念だが」
「もうっ!貴方たちが確りしてないから私達が駆り出される事になったのよ……それまでは婚儀も許されないし……」
「いったいこのバカのバカさ加減はいつ治るのかしら……」
「俺たちの婚儀はいつ出来るのやら…」
「「「「ハァ~っ……」」」」
………何と言うか……御愁傷様です。
増えたと思ったメンバーは護衛と言う名の子守り二人の婚約者の方らしい。このバカの所為で結婚を挙げられないみたい。
「そもそもお前たちに彼女たちは勿体ない!是非とも僕の側室に……」
「冗談は顔だけにしてください」
「貴方の言葉は聞くに耐えません……一生話しかけないでください」
「…………(涙)」
「こら、こんなんだが仮にも護衛対象だ。」
「敬えとは言わんが、仮にも護衛対象……面と向かっては言ってはいけない」
「分かってます」
「ついポロっと…ね」
「……orz」
「若様しっかり!」
「「「若様~!」」」
「おのれ無礼な…」
これはコントか?
「兄弟子……これは何の芝居だ?」
「俺に聞かないでよ……」
いつまで続くのかな……帰ってもいいかな?
「っ、……そんな事よりも!」
「私達には大事なことなんですけどね…このバカ若」
「アンジー…それ以上何を言っても無駄よ……バカだもの」
「お前たちの婚約者は顔は良いが口は最悪だな」
「いえ、貴方の頭ほど残念ではありませんので」
「そもそもあれほど口が悪くなったのはごく最近です」
「orz」
ホントに無視して帰ってもいいよね? 落ち込んでるし、気がつかないよね?
「兄弟子……帰ろう」
「そうだね」
「待ってくれ!」
「「げっ…気付きやがった」」
「君達は僕の仲間になる運命なんだ。どうして拒むんだい? まだ達成していない条件が有るってのか……?」
まだ言ってるよこのバカ……だから私も兄弟子もゲームのキャラじゃないって!
それからここは現実の世界だって……いつになったら気付くのだか。
「あ!いけない、帰るよ。親方が心配する時間だ」
「もう?」
いつも大切に持ち歩いている銀の懐中時計を見ながら兄弟子は少し焦って言った。親方って心配症だから探しに来そうだ……。
こんな奴の戯れ言に構ってる暇はもうない。
バカが喚き子守り二人が引き留めている間に兄弟子と私は走って森を出た……ここまで疲れるはめになるとは思わなかった。
それにしても兄弟子は懐中時計を持っているのが不思議でならない。あれは貴族でも持ってる人は少ない程高級品なのに……ま、兄弟子は兄弟子だから私は何でも構わないけどね。
―――本音を言えば時間が分かるって便利だし、追求して変に警戒されて時間が分からなくなるのが惜しい……からだったりする。
後ろから聞こえた煩い声を無視していると何やら悲鳴が聞こえて静かになった。




