異世界No.2―ノクターナル―9
のんびり鍛冶仕事の巻?
あの自称勇者騒動から数日後。私は今日も今日とて黙々とダガーを作り続けていた。兄弟子に「これも覚えておくと良いよ!」と教えてもらった錬金術(意外に簡単に覚えてしまった…)で鉄を銀に、銀を金にして上がった税の為に指輪やサークレットや首飾りを作ってコツコツとお金を貯めている。今年で15歳になるので私に掛かる税も跳ね上がるのだ。自分の分は自分で払わなければ……
この世界では金も銀もそれほど高価なものではない。確かにプラチナは高価だが金銀は装身具として一般的でそこまで高くもない。地球と違って産出量が圧倒的に多いからだと思う。先の錬金術で鉄を金銀に変えられるし、それよりも遥かに高価な金属が多くある所為でもあるだろう。
どこぞのチビと言われるとキレる錬金術師の世界とは違い金を作ることは別に禁止されてないせいだろう。あの聡明(笑)王子がまた禁止しなければ良いけど、そこまで周りもバカではないだろう。
宝石類も安い。これも天然物は高いが錬金術で作れるから安いのだ。とはいえ、上質なものを作り出せるのはごく一部の高位の錬金術師だけだろう。
私もまだ上質な物は一番簡単なアメジストやローズクォーツ等の水晶類だけだ。作れば作るほど腕が上がるが、魔力を糧にするのでかなり疲れる。一日5個までが今の限界だ。これでも上達した方なんだよ……これ私に向いてないかも。
「曇ってるなぁ……このアメジスト…」
綺麗な透き通った物を作るのはそれ相当の集中力と魔力が必要だ。ダガー1本作るのとは訳が違う。とは言ってもダガー作るのも難しいんだけどね。私の肉球が固くなってきた……ハンドクリームが欲しい。熊の油で作った軟膏は作業中には使えない……よく滑ってハンマーが手から抜けるんだ……狭い作業場でそんなことが起きれば一大事。
でも、鉄鉱石を銀鉱石や金鉱石に変えるよりも効率が良いんだよね……宝石類の方が高く売れるから。鉄鉱石をいくら銀鉱石や金鉱石に変えても一度溶鉱炉で溶かしてインゴットにするのって量が減るからね……それに少ない魔力を使うより宝石類に重きをおいた方が圧倒的に効率よくお金になるのよ……悪どい?守銭奴? そうですけど何か?
今度貯まったお金で親方から鉄鉱石を10個買い取って練習しないと…。インゴットでも良いや。指輪を作るにしても腕が上がるから無駄ではない。お金も稼げる。一石二鳥だ。
それにいい加減肉が食べたくなってきた。税に出す分を差し引いて余った数が狩猟税分有ったなら森で久しぶりに狩るのも良いだろう。
ここでカミングアウトすると、狩猟税が出来てから町に魔物が襲い掛かってくるとこの頃は皆喜ぶ……勿論鬱憤を晴らすためもある……が、みんなの目的は……その魔物の肉だ。それとその魔物から取れる素材も。
猪型の魔物が一番美味しかった。熊型の魔物は癖があって筋張っていたけど煮込めば美味しかった。鳥型の魔物も美味しいが……襲いかかってくる魔物はみんな少し小さいから食べた気がしない。勿論焼いて甘辛い味付けをして焼くと美味しいけどね。
みんなの士気が下がるのは食べられない(食べるのに適してない)魔物の時だ。特にスライムとか。あれのコアは高価だけど、直ぐに食べれるわけでもないのでみんな残念そうな顔で闘うのだ。
何だか言葉にするとうちの町の人々って逞しすぎるよね。まぁ、それで助かってるけどね。
「これはっ!親方、この鉱石どこで見付けたんですか?」
「馴染みの業者が置いてったんだ。他では加工できなかったってな」
「それ、オリハルコンの鉱石ですよ! 目玉が飛び出るレベルの鉱石ですよ!」
「オリハルコン?」
「そうだよノワール」
兄弟子のちょっと興奮した様子で説明して貰ったが……
オリハルコンとは、私らの感覚では世界で一番硬い金属ってイメージがあるが……別にそうでもない。確かに丈夫な鎧を作れるけど……作るのにコストが掛かるし、それよりも丈夫な物が魔物の素材で作れる。昔は――千年位前――魔物の素材を防具に加工する技術がなかった頃は重宝したけど、今は安く丈夫な防具を素材で作れるので今はすっかり下火だ。
だか、素材その物の価値は未だに高く、加工が出来る鍛冶屋もあまりいないので標本やマニアのコレクションには高値で取引されている。
それに千年以上も経つのに未だに現存している謎の鎧もこのオリハルコン製だったりする。大体千年以上も現存している防具や武器はオリハルコン製なのだが……不思議な力でも宿るのだろうか?
ここで防具や武器に使う素材について説明でもしよう。
種類として一般的なのは、皮、革、鉄、鋼鉄、鋼、黒檀(木ではない謎の鉱石)、悪魔装備……最後のは決して中二でもなんでもない。本当に悪魔の心臓で冷したとかなんとか……そんな装備が本当にあったから驚きだ。人間に狩られる悪魔って……
さて、一番ポピュラーで冒険者は序盤お世話になる皮装備から。皮は最も手入りしやすく加工もしやすく、値段も手軽。初心者冒険者の標準装備。武器としては加工できないが、それなりに守ってはくれる……が、直ぐに傷みやすい。
皮よりも硬い魔物の革を使った革装備は皮装備よりも値は張るが頑丈。特別な加工をすると鉄よりも強いことがある。打撃に強い傾向があるが、斬撃には弱い。慣れてきた初心者向け。
鉄装備は中級から下級の冒険者に広く愛用されている。打撃には多少強いがへこんでしまうこともある。斬撃には滅法強いが、鉄よりも硬い金属では弱い部類。初心者向けの装備では動くと音がたつのが難点以外に比較的入手しやすい。軽装備と重装備の両方がある。
鋼鉄は完全な重装備の防具で、中級の冒険者に愛されている。鉄よりも硬いが重い。それなりの筋力がいる。色々な種類の武器にも鉄と共に作られ最もある武具。無茶さえしなければこれで中級はやっていける。
重装備の中では最も重い内に入る鋼製の鎧はフルプレート……見た目中世の甲冑そのまま。重い、動きが制限される、音がすごい……と隠密には向かないレベル。主に城や貴族の屋敷を警備する兵士に多く使われる。冒険者向きではない。
鋼は鋼鉄よりも硬いが打撃にもある程度強い。フルプレートの鎧も作られるが、専ら胴体(心臓部分)を守る部分として軽装備の素材になっている。実は鋼鉄よりも重くてとてもじゃないがフルプレートなど着て動けないから……らしい。
イマイチ私には鋼鉄と鋼の違いがわからない。
その他は謎に包まれた装備で親方も兄弟子も教えてはくれなかった。まぁ、私の腕では作れるはずもない。いつかでも良いだろう。
あと、魔物で作られた装備はその魔物の数だけあるので割愛する。説明としてはその魔物の特徴やスキル、属性耐性など様々……見た目で選ぶ冒険者も要るが、腕や胴、頭の装備を違うものにしてコーディネートしているお洒落な冒険者もいるとか。
ちなみに私の今の装備は革製の軽装備。そして何故か白神にグレードアップされてた弓――狩猟の弓・弐――と大きさを成長した体に直された矢筒と鋼鉄のダガー、これが今の私の装備だ。
あぁ、あと首飾りと指輪にエンチャントして装備している。スキルは弓ダメージ増加と暗視補正……夜目が利く猫系にも関わらず暗視補正が全くないのだからスキルで補っている。
それと、猫系や犬系など尻尾のある種族は尻尾にも装備できる……今のところ私は環を尻尾の先につけてます。根元に付けるタイプもあるのだけど……何かいずかった……。ちなみにスキル千里眼+2。半径10メートル以内なら何となく動くものや敵を察知出来るスゴいスキルだ。付呪してくれたのは親方の奥さんだ。私にはまだこれ程スゴいエンチャントは出来ない。腕を磨かないと。
親方の奥さんは凄腕の付呪師だった。
革防具にはまだ付呪していない。無くても事足りるし、現在魔力は錬金術につぎ込んでいるから…ってのもある。そこまで深く森にも入らないので今のところ不要だったりする。
兄弟子がキラキラした目でオリハルコンの鉱石を眺めていると親方は欲しいなら持っとけと気前よくあげるのだった。兄弟子の嬉しそうな顔ったらない。しかし、このところ兄弟子はイメチェンなのかフードを深く被り目元が全く見えない……。口許で笑っているかどうなのかは判断できるが、目が見えないというのも……何とも表情が掴めないものだ。
何か誰かに見つかりたくないのか?
ぶっちゃけると暗殺者だよ?
「見てみろノワール!この不思議な揺らめく銀色の鉱石……光の加減で如何様にも姿を変えて……」
「自分の世界に入ってるのかいないのか……独り言なら一人でしてほしい」
「仕事になんねぇな今日は……仕事終わりに見せりゃ良かったぜ…」
そんなこと言って親方も兄弟子に早く見せたかったんでしょうに。可愛がってんのに変に維持張ってる所があるんだから……それで奥さんに指摘されて照れ点の……それが可愛いって奥さんにからかわれるんだよ……気付いてなよね~。
あ、そうだ。今日はピッケルを作るんだった!
ピッケルは某何とかク〇フトのピッケルとは違って石とか金やダイヤでは作れない……当たり前だけどね。
ちなみにどこかのバカな貴族が“金に輝く鎧がほしい”とかほざいて金装備なるものも作られたけれど……防具としての役目は果たせるようなものではなかった。金は柔らかいからね。
銀は魔除けの武器として片手剣(大剣・両手剣は除く)や短剣、とかに使われることがたまにある。アンデットや一部の魔物にかなりの効果が有るらしい。
他にも防具に適さない鉱石も多くあるのだけど…多すぎるからまた今度の機会に。
さて、ピッケルだが……これが難しい。
何故ピッケルを作ることになったのかと言うと、森に入った時に鉱石が掘り出せる様なポイントを見つけたのだ。だから忙しい親方ではなく兄弟子に見てもらおうとしたら―――
「―――ってな訳で、森に一緒に入ってほしいんですが?」
「うん、別に構わないけど……俺はピッケル持ってないよ?」
「親方……ピッケル在庫に有りませんか?あったら買い取らせてください」
「あぁ?――ピッケルは切らしてるなぁ…よし!作り方を伝授してやる!」
―――とまぁこんな具合でピッケル作りを伝授されることになったのだ。
使う金属は鋼鉄。鉄より加工し辛い金属なので初めは失敗した。基より失敗は予想の範疇。何がいけなかったのかを踏まえて……何て高度な技術なんて持ち合わせてない。体で覚える方が性に合ってる……私は脳筋の気があるのかもしれない。こういう作業は頭では余り考えないのだ。
「もっと強く打て! 何度も打てば粘りと強さが出るんだ……冷えてきたらもう一度鈩に――」
「ノワールは考えるより体で覚えるタイプだね……俺とは正反対か…」
親方の横で漸く遥か彼方の自分の世界から帰ってきた兄弟子が私の作業を見ながら意見を述べた。
そうか、兄弟子は頭で考える方か……覚えるタイプとしては効率がよさそう……私の様な体で覚えるタイプは練習有るのみ、完全に修得するまで時間がかかる。
しかし、親方はこう言う……“体で覚える方が何時までも覚えていられる。頭で考える方は効率が良いがコツを忘れてしまえばそれで終いだ”らしい。
頭で考えるタイプは体でもある程度覚えていると思うのだけど……ま、鉄は何度でも溶かして再利用出来るから良いのだけど。他の特殊な金属は物質の配合とか何とか有るので替えがきかない。私の様なタイプはそのところは損だ。
守銭奴と自負する私には耐え難い……粗悪品は売ることも出来ない。
焦らず、でも数をこなして早いとこ腕を上げないと……焦るな焦るな……。
「その調子で頑張れよ」
「筋が良いなぁノワールは……羨ましいよ」
私は何でもソツなくこなす兄弟子の方が羨ましいよ。あと、この頃腕が上がらないのは別用で何処かに出掛けてるからじゃないの? 誰かに会ってるようだけど……女性ではないね。どちらかと言えばフルプレートの手入れに使う上質な油の臭いがする。この町にフルプレートを付ける者はいないはずだ。すると外からの……いや、変なことには首を突っ込まない。今は首が飛んだら即お陀仏なんだから……下手に死亡フラグ立たせたくない。
あ、そうそう。ちなみにね、鎧の手入れに使う油ってのは普通の油とは違う物だよ。普通の油使ったら余計に錆びるハズだよ……油で錆びるっておかしな話に聞こえるよね?
こうして私はピッケルを作れるようになったとさ。多分数日後にでも鉱石が取れそうなポイントに兄弟子を引っ張って見に行こうと思う。
兄弟子はこの頃気も漫ろで仕事に身が入ってないと親方に注意されていることだし、気分転換に連れていけと親方に許可も貰った。
だがぶっちゃけると……大して隠密スキルが無い兄弟子がいると敵とのエンカウントが増える…。
私にとってはいい経験値稼ぎになるだろう。
だがもう少し本音を漏らすなら……折角払った狩猟税を無駄にしたくないからだったりする。
ここのところ鍛冶仕事に精を出しすぎて余り森に入れなかったからだ……勿体なさすぎる!!
守銭奴レベルも日に日に上がっていく私であった。
どうも、雲猫’でございます。
まず、長らく更新せず吸いませんでしたm(__)m
画面の見すぎが原因か頭痛が酷く……、が、段々と和らいできたので再開したいと思います。
ま、これを読んでいる方がどれ程居るのか……
今回の話は短め、多少の防具の種類の説明を入れてみました。設定は適当です。
次回はまた厄介な人が出てくる予感。
ではまた。




