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異世界No.2―ノクターナル―8

 いやぁ……ビビったわぁ。久しぶりに心の底からビビったわ。



 あ、どうも独り孤高奮闘してます。え?そんなに奮闘してないだろ? 失敬な、ちゃんと鍛冶の腕は上がってますよ。どうも猫系獣人、闇に愛されてますノワールです。


 唐突だけど獣人の毛皮って偉大だね、鉄を打つとき火花が飛び散っても熱くないのよ!スゴいね!?



 ………おっほん……本題、本題……



 何に対してビックリしたのかって話だけど……はい。また来たんです……あの自称勇者。


 しかも仲間を連れて……数はざっと7人。それほど広くもないが狭くもない店内に7人も入られたら暑苦しい。それにしても全員が男って訳でもないのね……二人ほど男だ。しかもしかめっ面してます。機嫌が心底悪い様です。


 ちなみに私は親方の宣言通り裏方に回ってます。さっきまでダガー作りに集中してました……が、休憩時間にあの自称勇者が来てしまったので集中出来なくなりました……邪魔で仕方ない。



「彼を出してくれませんか」


「はて、誰ですか?貴方は」


「勇者です」



 敬語だが最早疑問系ではない、あれは命令形だ。仲間の男二人の眉間にシワがよった……こ、コワッ!



「お客様……当店は人物の指名など等サービスは行っておりません。冷やかしならとっととお引き取りしやがりませ」


「……っ、お、俺は彼が出てくるまでは出ていかない!」


「おい、もうやめろ」


「お前の収集癖は最早公害だな」


「な、何て事を言うんだ!」


「「ホントの事だろ」」



 あ、何となくあの男二人の立ち位置把握した。お守り役なのね…ご愁傷さまです。



「美しいものは皆総じて俺の傍に居ないとダメなんだ!!」



 私は思う。お前の頭の中身がダメなんだ…と。


 アホか。



「彼は獣人族の中でも極めて美しい……性別なんて関係無い! 俺は彼が欲しいんだ!!」


「「………」」




 子守りの男二人は蔑むような目で見ていた。空気になっていた四人の女性達は嫉妬の眼差して見ていた。多分私が居たら視線と殺気がグサグサと突き刺さってきたことだろう。良かった、作業場にいて……。



「うちの子は商品ではないんです……とっとと出ていけこの野郎です。」



 最早奥さん言葉使いとキャラが崩壊してます。落ち着いて、ね?落ち着いて下さい。



「勿論君たちも皆違った美しさがあるよ」



 おいおい、女ども……公然と平等宣言してるのに頬を赤らめるな、照れてんじゃねーよ。お前ら良いように言いくるめられんじゃありません。現実を見なさい。


 それにしても、この自称勇者……ここが現実だとちゃんと理解してますか? 現実でハーレム何て作ると地獄を見るよ……しかも今はそれでも良いかもしれないけど、良い女ってのはそんなだらしない男にゃ惚れんのだよ。


 それにその子たちは恋に恋してるお年頃だからね……あんたが思ってるほどには心底惚れてない気がする。多分誰かと男を取り合う自分に酔ってるんじゃないの? で、ふと気が付くと冷めるんだよ……10代って多感なお年頃だからね……真実の愛何か分かってもないんだよ。


 自称勇者よ、今だけが華だぜ。もう少し年食ったら誰にも見向きもされなくなるぞ。お情けで結婚してやるほど女は甘くないんだ。地に脚ついてるフツメンの方が圧倒的に有利だぞ。


 美貌なんて直ぐに陰る。外見が重視されるのは高々20代後半まで。見向きもされなくなるぞ。




 っと、紅蓮時代に見てきたドロドロ事情をついつい愚痴ってしまった。白神達が居れば今頃ツッコミやら感想やらを言ってくれたことだろう……寂しいなぁ…。




「何でぇ……あのスカポンタンは」


「親方……全面的に賛成ですその言葉」


「集中して作業できない……」


「「………」」(ガタッ!)



 おぉうっ、何々? 親方も兄弟子も私の「集中して作業できない」って言葉に突然席を立った。そして真っ直ぐに自称勇者達が居座ってるカウンターの方に歩いてった………



 そして暫くの静寂の後、何事もなく戻ってきて一言



「もう作業に集中できるぞ」


「大丈夫、問題は排除した」



 と一言残して作業に戻っていった……その後その自称勇者が鍛冶屋に顔を見せることは二度となかった……が、どこで知ったか村長の家に押し掛けてきたのは……もう少し後のこと。



 私は誓った。親方も兄弟子も怒らせたらヤバイ、絶対に怒らせるな……と。


 何事もなく戻ってきたのがほんとに怖かった。今日一番のビックリは自称勇者の頭の残念さだけど一番怖かったのは親方と兄弟子だった。




 あぁ……夢に出そうだわ……








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