異世界No.2―ノクターナル―4
日本に牛蛙は本来居なかったらしい。人間が食用目的に連れてきたのが逃げ出したか、放したかで爆発的に増えたのが野生化したと聞いた。
つまり~……牛蛙は大きいし、味も食用に適している、と言うことなんです。
実際、結構美味しいです。臭みがあるけど……空腹は最高の調味料。皮を剥いで腹をさばいて……食べやすいサイズに切って洗った丈夫そうな枝に刺して焚き火で焼く。少し固かったが、気にしない。今は動物性タンパク質にかぶり付くことしか頭になかった。
久々のお肉に涙が出そうになったが、そこで塩が欲しいと思った私は完全に枯れている気がする。
全てを食べても良かったのだが……一人で食べるのもなんだと思ったので残りはジジババに持っていこうと思う。
……正直焼いただけじゃなく、煮込みとかもっと美味しく食べたいと思っただけです。ごめんジジババ……私は完全に自分本意だったわ。
で、持ち帰ったら……
「( ゜Д゜)」
「(゜ロ゜)」
「(・・;)」
驚いて固まってしまってます。何々?獲ったらいけなかったカエルだったの?不味かったの?
「お、お、お、」
「の、の、ノワールや……」
「ダメだった?」
今の私は二人のリアクションに耳はぺたんと尻尾はだらーんと気落ちしてますって分かるような状態だ。ホントに不味かったかも、最悪追放とか?
どうしよ……
「いや、不味かったなんてとんでもない!」
「スゴいじゃないかノワール!こいつを捕らえるのは至難の技だぞ!一年で一回食べれれば良い方な代物だぞ!」
「よく獲れたわねぇ」
「え?」
追いかけても中々逃げなくてそこらで拾った棒切れで殴ったら……仕留められたけど?
「あぁノワールは獣人族だものね。狩人としては素質が生まれつき備わってるもの……本能なのかしらねぇ?」
「どちらにしても今日はお祝いじゃのぉ婆さんや」
「えぇ、爺さんや、腕によりをかけて煮込みますよ」
ばーばの手でカエルは美味しい煮込みになったとさ。美味しくいただきました。
この件によって私の食べる量が足りないことも露呈したがな。謝られちゃったよ……
そして正式に森での狩猟を認められました。何でも、この町では獲物を捕まえたら一人前として一応認められるらしい。ま、本当に認められるにはもう少し大物を捕まえないとダメだけどね。
そんなわけで、山に入って色々な薬草や木の実を摘んだり、ウサギ――宣告通り縄を使ったトラップで捕まえた――や狐(内心複雑)を捕ったりして町で雑貨屋をしているおばさんに売る日々を過ごしています。
その物を食べるよりも一度換金した方が沢山食べれるって……感覚としては不思議で仕方ない。
ベリー類だって子供の掌一杯分で500Gって可笑しいでしょ……? それとも私の感覚が可笑しいの?
ちなみにこの世界では通貨は全てG―ゴールド―で統一されている。全て金貨だ。1G=500円程で、この町では1Gあれば一食食べれる。つまり・・・・・
1回森に入って色々収穫するだけで一般的な年収を軽く越えてますけど?
※この町の一般的な年収はおよそ400Gと言われている。村長夫人調べ
何でしょうこの破格っプリは。某ゾンビゲーのフルCG映画のオマケを思い出したよ。
『ほう、あれか?「俺のギャラは破格だ」というやつか?』
(うん、そうそうそれ……ってオイ。急に出てこないでよ、ビビるわ!)
何でも理由としてはこの森の周囲は不思議な力で直ぐに実をつけ、味良し、栄養良し、魔力回復にも効果抜群で高値で売れるらしい。主に都会で。
あ、当たり前に魔法があったのね。
それにしても季節も無視して実が生りっぱなしなのには驚いた。家――紅蓮の実家「季節の箱庭」のこと――の周りと似たような現象だよね。まぁ、家の方は四季がエリアごとに分かれてて常夏、常春云々あるだけで年中同じ木が枯れることなく実をつけるなんてなかった気もするけど……どうなってるのか気になりはするが、今のところ悩んでも仕方ない。
ま、そんな訳で収穫物は高値で売れるので食費は心配要らなくなった。
あ、高く売れるのにみんな森に入らないわけは危険だから。猪一頭でもやたら巨大だからひとたまりも無い。みんな怖くて入らない。
特に隠密に長けてる種族の私だから隠れながら採取できるのだけど……殆んどヒューム族しかこの町には居ないからね……ちなみに私を含めて獣人族は7人しか居ない。私を抜いてその内二人は子供ね。
凄腕狩人は実はヒューム族なんだよね。
私のように猫系の獣人ではないから狩りには向いてないとか……ちなみに羊系の家族と鳥系(燕)の家族の二家族。主に鳥系は見張りの仕事をしていて、羊系は畑仕事をして生計を立ててるんだってさ。どちらも狩りには向いてないね。草食動物だし、燕も猛禽類程ではないからね。
だからといって向いてる向いてないに関わらず仕事をしている人もいるんだってさ。人間だもんね。向き不向きは人種だけじゃないもん。
私も暗闇に目が慣れにくいからね。猫系の獣人は得意なはずなのに……これは人間の記憶が知らぬ間に邪魔してるからだって白神は言ってるけど、それと同じなんじゃない? それに、どんなに運動神経がチートじみていても私暗算出来ないからね。体が代わってもこれだけは直らないんだよね。
話がずれたわ。
なんの話だっけ?………あぁ、そうそう。獣人族が町に私抜いて6人しか居ないって話だったね。
ちなみにこの町にさっき話した二家族と私以外は全員がヒューム族です。だからと言ってなかが悪いとかは無い。
私の偏見で“田舎って差別とか酷そう”と思ってたし。実際ベル時代田舎に住んでたけど色々と言われたもの……色が違うだけで。
確かにみんながみんな仲好しって訳でもないけど、助けるときは助けるって感じ。
これがいつまでも続けば良いと思っているんだけど……そうもいかなかったみたい。
その何年か後に色々と問題が起きるんだよね……ある一人の余所者によって。
言い訳程度に言うけど、私ではないよ。




