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異世界No.2―ノクターナル―5

 

 私がこの町――終わりの町・ノクターン――の町長(あだ名が村長)夫妻に引き取られて5年経った。こう言えば一瞬の出来事だが色々と怒濤の5年であった。



 例えば、ヒューム族の王さまによって勝手に森での狩りを禁止されたこと。私は噂で近々そうなると聞いて慌てて鍛冶屋に弟子入りしたのは未だに忘れない。手先が多少器用でよかった。

 案の定狩り禁止令は実行されて……端的に言おう、町は一時混乱に陥った。もっと詳しく話せば危うく壊滅しかけた。


 元々魔物が強いこの地方は定期的に狩らないと増えに増えて町や生態系が崩れるのだ。


 何を思ったかその当時一人の王子(何でも天才的な頭脳を持った神童とか言われてたらしい)の助言により税を払わないと森での狩りを禁止することにした王は無能だったか親バカだったかそれを真に受けて実施したとか……。


 で、各地で「そこまでして狩りに出るより畑仕事した方が家計には楽」だと言い出す人々が続々と出た。まぁ、危険を侵してまで森に入るのは魔物の素材が原則タダだからであって(装備諸々は揃えなければいけないのでタダとは言いがたいが、それ以上に儲けがある)金を払ってまで(これが結構な額。確か150G)狩るよりも大多数が堅実な畑仕事や他の商売に移ってしまった。


 国としても大損害だった。魔物を狩る人が極端に減ったのだ。


 魔物が町に押し寄せて……壊滅したのも10を下らない数あったらしい。しかし、先見の明があったのかじーじ(私が村長をこう呼んでいる)は自腹で町にいる狩人達の分のお金を出した。

 昔にも同じ様な事があって先祖たちは多大な被害を被ったそうだ。歴史は繰り返される。王が不作な時にはよくあること……だそうだ。


 ま、私はそこまでして狩りに出るより鍛冶屋の仕事に精を出したけどね。武器防具を自分で作れる方が後々楽だと気がついたのさ。結構バカにならない装備の維持費。素材だけでも高いのに修理費やらなんやらで結構な額を取られる……ま、まぁ、熱い鉄を毎日必死で打ってる鍛冶屋にとっては正当な額なんだけど……結構痛いんだよね……あの額は。


 だから安易だが鍛冶屋に弟子入りしたのだった。



 それに貯まったお金で税を払えば良いのだし……自分の食い扶持も払える。



 この町の鍛冶屋は手練れなのか町の外からも注文が殺到するほどの忙しい人で、兄弟子だけでは手が回らず私の弟子入りにも快く受けてくれた。ありがたやありがたや……ついつい拝んでしまうのも無理ないと思う。それによくおやつをくれるのだ親方と兄弟子は。


 始終お腹を減らしている私にとっては天国。


 しかし、貰ってばかりではいけないと細かな雑用をせっせとこなしつつ、親方と兄弟子の作業を盗み見している今日この頃……。



 この間ついに狩人達の手に負えない数の魔物が町に押し寄せて来たけれど……意外にも町の人々は強かった……なので何とか返り討ちにした。


 見張りや森に出ていた狩人の警告で早めに迎え撃つ準備が整っていたお陰だろう。



 いやぁ……村人強っ!? 中でも親方……あんたその筋の人だろう? 鉄槌を降り下ろす様は鍛冶屋じゃなくて戦士の間違いだろ?


 それと、村人ってこんなに強いものだっけ?



 まぁ、我が町のモットーが“町は自分達で守れ”だもんね。日頃からは想像も出来ないほど勇ましかったです。特に、日頃から奥さんの尻に敷かれるオジサン達が生き生きとして魔物を滅多打ちにしているのは……目を疑う光景だったね。日頃の鬱憤を魔物で晴らしたのね。



 こんな訳で傍迷惑な法律で何度も魔物に襲撃されることになった……が、どこぞの軍属ですかってばりに統率のとれた町の人々によって難は逃れてました。


 この5年で何個の村や町は潰れただろうか?


 こんな有り様になっても王は取り下げなかった。何でもまた件の神童王子の助言で色々とやっているらしい。王都の方はそれはそれは潤っているそうだ。どうも王族の皆様(政治に携わってる人たち)は王都以外のことは見えないらしい。それか、王都以外はどうでも良いのだろう。


 暴徒とかした反乱軍が出来上がるのも時間の問題だね。



 確かに母さん(紅蓮の母親・麗春)は自分の領地での狩りおよび侵入を禁じたけど、それはその場所がとてもじゃないけど人間には手に負えない魔物や環境(取り込みすぎると発狂その他諸々する危険)があるからであって、人も住んで居ない魔物達の楽園をそこまで管理することもないのでしていないだけなのだ。


 あの大森林の中だけで生態系はちゃんと確立しているので余程の事がない限り(大量発生とか)母さんが手を出すことがない。母さん曰く“人が住んでいる土地を管理するよりも力さえあれば管理できるこの土地の方が楽だわ”だそうです。



 領民と領主の間にはいざこざは絶えないからね。気が楽って意味では私も異論ないかな。


 紅蓮の家(うち)の近くには母さんの眷属の皆さんが大勢住んでいたけど、眷属だからね……基本的に反乱は無いから安心っちゃ安心なんだよね。母さんも無茶な命令はしないし。



 閑話休題




 そんな訳で私は今、鉄鉱石を溶鉱炉で溶かすために石炭を運んでいるところです。この袋が結構重いんだわ。着てる服が黒くなるので作業用の服を着ているので少し寒い……猫はね…寒いのが嫌いなのよ。人間でも私は嫌いだけど、耐えられない……耐えてるけど。自前の毛皮だけでは耐えられない。


 なのにヒュームの皆さんは元気です。先祖代々住んでいると適応するもんなんですね……あぁ寒い。だが、サボればもっと寒くなる。動かさないと凍える……奥歯を食い縛って運んでいる。



 あ、親方と兄弟子は「そんな重いもん持って大丈夫なのかよ?」とか「だ、大丈夫なのか?」と始終心配して仕事が進んでない……仕事しろ。


 そんなんじゃ弟子は育たないぞ。私でなかったなら舐めきったバカ弟子になってしまうぞ……あ、でも飴くらいなら受け取るんでたまに下さい。




「聴いたかい?また王さまは子供の提案を飲んだらしいぞ……」


「本当かい!? 今度はどんなバカな案なんだい……最近では未開の森を開拓した者に貴族の地位を与えるとか御触れを出して更に私らを窮地に立たせたってのに……今度は……またバカな案なんだろ?」


「正しくな。今度は田舎町の税を上げるんだと……王都よりも明らかに安い税が聡明な王子には理解できんのだろう……皆平等に――らしいぞ」


「森に入れないようにして今度は税を上げる。一体この山の幸以外になんの取り柄もないこの町にどうしろってんだろうねぇ……雲の上に住んでるようなお人にはワシらの暮らしなぞ分からんのだろうねぇ……」


「どうもここ数代前から王が不作で困るのぉ……」




 親方に注文をしに来た業者と親方の奥さんと親方のお父さんが世間話という名の情報交換をしていた。私も前の身体ほど集音性は良くないが、ヒューム族よりはいいけど……ま、そんな良い耳で聞き耳を立てながら今度は仕上がった短剣を布で磨いて鞘に納める作業をしていた。


 また王さまは王子の話を鵜呑みにしたか。最近はその王子が転生者ではないかと思っている。となると、奴がこの世界を狂わす要因か?




 そしてもう一つ気掛かりなのが……





 白神達と全く連絡が取れなくなったのだ。




 私はこの世界でも初めての孤独な闘いを挑まなければならないらしい。





 ま、こんな時こそ気楽にいこうか。








 結構気楽に過ごしていますが内心不安かもしれない。



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