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異世界No.1―アテナ―16

 今日もニーアの受難の日々は待っているのだった……とか言ってみる。



 あと、この話はご都合主義万歳です。




 あの後愛馬ネロでも一時間掛かる距離を僅か半分の30分に短縮させて帰ってきました。


 どうも、転生したら女から男になってました紅蓮コウレン改め只今ニーアです。グレンじゃないですよ。コウレンです。


 ま、それは置いといて。



 我が愛馬ネロが限界突破してレベルアップしたようです。素晴らしいですね。今でも強いし速いのにもっと強く速くなるらしいです。喜ばしいですね。


 そして祝う暇なく鞍から降りた私の背を押してさっさと私を玄関に誘導して自分は厩に帰って行きました。


 ………ちょっと待って、馬具取らないとダメでしょ!? っと、思った時期が私にもありました。


 お利口な我が愛馬ネロさんはご自分で全てを外して飼い葉を食みながら優雅に寛いでいらっしゃった。


 凄いなネロ。もしかして君、本当は中の人が居たりしない?


 玄関まで私を押して誘導し、馬具を外すために急いで厩に行った私が見たのは自分で全て外して寛いでいるネロ。驚かない方がスゴいよね?


 私が変じゃないよね? ね?



 ………ま、まぁ…私に害は無いし、馬にも色々とあるのだろう。うん。そうだよね。うん。



 頭も痛いので早々に寝ることにした。









        *******







 物音がした。


 私のアンドロイドとしての機能が優秀なのかそれが普通なのか、とても高性能な聴覚は小さな物音でも聞き逃さない。それは時に鬱陶しくも感じる。



《敷地内に侵入者を確認、該当者検索………メリル、ラルフ、ルシェ計3名と断定。》



 何も言わなくともクラウドが仕事をしてくれた。出来た奴だよホントに。



《3名は尚も接近中……あ、ルシェさんの手に庭にある林檎が……》



 アイツめ……家の林檎の木からまた取ったのか……今度は吊るすぞ。


 あ、そうそう。我が家の敷地には防犯用に監視カメラ代わりに至るところにアンテナを設置してます。バッチリ見えてます。犯行は直ぐに分かるのさ。


 とはいえ私はいつも見張っているわけでもない。通常はクラウドさんが見ている。そして訪問客や侵入者が来るとこうして教えてくれるだ。



《玄関まで後50秒……》

(起きるか……今何時?)

《只今の時刻、アテナ標準時AM10:29です。》



 クラウド言うアテナ標準時とはこの世界の標準時間のことだ。地球にもグリニッジ標準時間があっただろ? それの異世界バージョンです。本来はあまり使わない。普通にその場の時計を基準にするからね。ま、あまり時差が無いけど。何故かは謎だ。



 さて、起きるかな……あの後三時間弱しか寝てないのか。まだ少し頭痛がする。やれやれ……損傷は予想より激しいのか……


 客が来たので出迎えるため起きることにする。服は別にいいだろう……寝起きだけど服はキチンと着てます。服を全部脱いで真っ裸で寝る趣味はない。


「ハァ~~、何かあったから来たんだろうな……」



 備え付けた姿見で寝癖を直す……とは言っても寝癖がつかない質だから眠る前と全く同じだったりする。癖みたいなものだよこの行動は。



 髪を直して次いでに崩れた服装を正して準備完了。リビングも毎日丁寧に掃除している。人に見られて恥ずかしいものは元々無いし。



 そんな風に思いながらリビングに入るとノックの音がした。この家は玄関を開けると直ぐにリビングだ。そこを不便に感じたことは今のところ無い。食事はキッチンのテーブルで摂っている。客もルルト以外滅多に来ないし。不都合なんて無い。




「すいませーん。ニーアさん連日すいませーん」


「勝手口から入れば良いだろ」


「それは流石に……」

「泥棒じゃ無いんだが……」



 ドアノブに手を掛ける直前そんなやり取りが聞こえてきた……そうかそうか、お前は勝手口からばかり入ってきてたな……簀巻きにして木に吊るそうそうしよう。



「アイツはこの時間帯のんびりしてるか昼飯の用意をしている……が、今日は美味そうな匂いがしないから……キッチンに直通している勝手口側には居ないだろう」


 ほうほう、成る程。そうやって侵入してきてたのか。フフフ……今度罠でも仕掛けよう。



「それって泥棒……」

「ダメだろそれ」


「ふっ、だがバレても……」



 ルルトが言い終わる前にドアを勢いよく開けルルトにぶつけた。痛がる奴に一言……



「そうかそうか、バレる覚悟で来たんだな。よし、今までの事は簀巻きにして木に吊るす事でチャラにしよう。そうだな…林檎の木の隣に大きくて丈夫なクヌギの木があったな。人一人くらい平気で支えるだけの枝もあったし……さ、簀巻きにしようかな」


「いや、ちょっと待て。いつから」


「機械舐めるな、お前らの侵入はバレてる。さっきからここに居た。」


 それに耳も良いんだよ、と付け足すと「む、ではあの事もバレて……」と何やら慌てるルシェ。林檎を勝手に食ったことか?それとも庭の畑のトマトやらメロンやら苺なんかを無断で食べたことか?



「あ、いや、その……すいませんでした、反省はしていない。」


「しろやボケ」


「ぐ、美味そうな匂いの物が落ちていたんだ……食べるのが常識だろ!」


「いいか、お前の常識は99%は非常識だ。人様の庭の物を勝手に食うなんて普通の常識人はしない。てか、拾い食いは危ないからするなって言ってるだろ。いつか食中毒で死ぬぞ。」


「ふ、旨いものならそれも本望……」


「俺の預かり知らぬ所で死ね。家の敷地内ではするなよ迷惑だから」


「安心しろ、解毒薬は常に持っている」


「その解毒薬の効能に食中毒とかあるのか?」


「…………どうだったかな?」


「ホントにお前死ぬぞ」


「あの、」



 ついつい話がデッドヒートしてしまった。メリルとヘタレラルフを置いてけぼりにしていた。


 いや、ごめんねこのバカのせいで。



「ま、どうせ何かあったんだろ? 先ずは入れよ。長話なら座って話そう」


「お邪魔します…」

「お邪魔します…まさか連日来ることになるなんてな…」


「む、今日はデザートは無しか?腹が減ったぞ」


「お前は遠慮しろ」







 リビングに備え付けられた椅子とテーブルに各自腰掛ける。私は客に出すお茶とお菓子を用意していた。今日はまだ何も作っていないので作り置きしていたマフィンとイチゴジャムを出した。


 全てルシェが一人占めしないように個別に分けて出した。案の定ルシェは至極不満そうであった。



「今日はさっきまで寝てて何も用意してなかったんだ。こんなもんしか無いけど遠慮せず食べてくれ。ルシェ、お前は遠慮しろ」


「ぐっ、我が考えを悟られていたかっ……無念!」


「あ、あはは……(この人本当に食いしん坊よね……)」

「これ、あんたの手作りか?(だとしたらメリルより料理の腕が上だよな……大半がメリルよりは上だけど)」




 メリルはルシェの様子に呆れ、ヘタレラルフは意外そうな様子で私に質問してきた……そんなに意外か?私が菓子を作るのが。


 何?この世界では男は料理しないものなのか?お前もメリルの様な毒料理を作るのか?


 だとしたらコイツらとは旅なんて到底出来ないな。だって私がいつも作ることになるし、ルシェは食べる専門だし……私はコックか!?



「俺が作ったけど?」


「……食えるよな?」

「ちょ、失礼でしょ!?」


「……まぁ、お前の気持ちも分からんでもないな。日頃から大変そうだもんな……」


「………ま~…な、」

「ちょっと何よそれ。」



 同情を込めてヘタレラルフを見ると目を泳がせながら肯定した。苦労してるなお前も。



「…む……ううん……ムグムグ……」


「呑み込んでから喋れや」


「むん……ムグムグ…」



 お約束の食いしん坊は頬袋に目一杯マフィンを詰め込んでモグモグしている。そんなに詰め込むと喉に詰まるぞ。


 ………あ、そうか。この泥棒に近いルシェに何処か懐かしさを覚えるの訳が漸く理解できた。似てるんだ……食べ方が藍苺ジンに。


 だから食べ物を集られても許してたのか……今気がついたよ。何てこった。



「(コイツと藍苺ジンを一緒の括りにしてたなんて……不覚だ)」


「あの、ニーアさん。この都度は父を助けてくださってありがとうございます。その、……とても言い辛いのですが……またお願いがあります!」

「俺からもお願いだ……何度も迷惑掛けることになるけど……頼れる人が他にいないんだ!」


「モグモグ……ゴックン……世界の破滅が近い。この速すぎる終末を止めるにも準備が間に合わなかったのだ……と長老も言ってたな。」



 うぇー……ん。白神の言ってた世界の破滅ってのが始まったのか……あれ?って事は……魔王さん(三十路独身)が倒されたのか? 物語の始まりって世界を支えていた魔王を誤って倒してしまったところから始まるんじゃなかったの?


 実質、主人公のメリルが退治しに行かなければ起こらなかったんじゃないの?なしてこんなに……



「定められた暦と違う?」


「知っていたか。流石は魔導人形。その頭に詰まっている知識は失われた超古代文明のモノだ。未来のことも記されているのだな。」


「え!そうなんですか?なら、」


「おい、ルシェ。お前が何処まで知ってるかは知らないが……俺に未来を先読みする力も、未来を示した知識も無いぞ。常識的な事と闘い方以外は真っ新な記憶だしな。役に立てないなそれは。」



 何でも頭に超を付けるのもどうかと思うぞルシェ。厨二的なファンタジーでも過ぎると変人だからな。私はしたくてしてる訳じゃないからノーカウントな。



『漸く動くぞ……その世界を勝手に塗り替えた神が動く……』

《データバンクに情報検索……検索結果、未来に関する該当なし……おや?》

(どうかした?)


「お父さんがニーアさんなら何か知ってると思うって言ってたから……ごめんなさい、知らないのに押し掛けてしまって」

「最後の頼みの綱が……」



 白神に聞けば多分仮想敵神が何かしたのだろうと答えが帰ってくるだろう。それにしても、どうにも皆さん私を買い被り過ぎる。私は単なるアンドロイドですけど?世界を救えるほど偉くもないし力もないよ。私は超人ではない。ましてや神でもない。


 世界を救うのは、何時だって人間だよ。機械に頼られても困るよ。



 ホントは精神は人だけどさ。


 それに、神が仕掛けるにしても直接手を下して世界を破滅に向かわせるのも人間だよ。


 この世界でも藍苺を残してきた世界で繰り広げられた神同士の賭けが始まるのか……さながら神々のチェスだな。此方のプレイヤーは白神、敵はこの世界の神。駒はクイーンにメリル、ビショップにルシェ、ナイトにラルフ……ならキングとルークは誰だ? 相手の駒は?





 どちらにしても迷惑この上ない事に違いなんてないな。




 それにしても、さっきのクラウドの反応が気になるのだが……



 ま、何も言わないのだ。良いだろう。うん。









 もしかするとニーアよりもネロの方がチートかもしれません。

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