第三話【楽屋裏トーク】
――ピツ、と空間のノイズが消え、配信ドローンがオフになった直後のギルド控室。
モスト:「ハロー、画面の向こうで私の物語をスクロールしてくれている君。」
いつもなら開幕からマッスルポーズを決める男は、今日は静かに椅子へ腰掛け、プロテインシェイカーをゆっくりと振っていた。
モスト:「今日は少々、筋肉の奥にしまっていた話をしてしまったな。……少しだけ、君たちを心配させてしまったかもしれない。」
その時だった。
コンコン――
控室の扉が静かに叩かれる。
受付嬢ひより:「失礼します。」
ひよりは温かい湯気の立つマグカップを両手で持ちながら入ってきた。
受付嬢ひより:「今日は……プロテインじゃなくて、こっちです。」
モスト:「おや?」
受付嬢ひより:「温かいココアです。」
モストは少し驚いたように目を丸くする。
受付嬢ひより:「今日は……プロテインより、こっちのほうがいい気がしました。」
少し照れ臭そうに笑うひより。
モストはマグカップを受け取り、優しく笑った。
モスト:「ありがとう、ひより嬢。」
少しだけ沈黙が流れる。
受付嬢ひより:「……モストさん。」
モスト:「うむ?」
受付嬢ひより:「一人で強くなろうとしなくてもいいんですよ。」
モストは黙ってココアを一口飲む。
受付嬢ひより:「世界中の誰もモストさんを守れなくても……帰ってくる場所くらいは、ギルドのみんなで守りますから。」
静かな控室。
少しだけモストの目元が緩む。
モスト:「……はーはっはっはっ!」
突然いつもの豪快な笑い声が部屋いっぱいに響いた。
モスト:「それはいかんな!私まで守られてしまったら、盾として失格ではないか!」
受付嬢ひより:「もう……そういうところですよ。」
ひよりは呆れながらも、小さく笑う。
モストは読者へ向き直り、いつもの太陽のような笑顔を見せた。
モスト:「ガイズ!人生とは筋肉だけを鍛えるものではない。時には心を鍛え、時には誰かの優しさを受け取ることも、大切なワークアウトなのだ。」
ひよりは少し驚いてモストを見る。
受付嬢ひより:「……その言葉。モストさんが言うと、すごく説得力がありますね。」
モスト:「はーはっはっはっ!もちろんだとも!」
そう言うと、彼はマグカップを机へ置き、ゆっくり立ち上がった。
モスト:「ガイズ!もし今日の物語が君の心に少しでも届いたなら、画面下にあるという名の『評価・ブックマーク』を、この私に叩き込んでくれ!君たちの応援は、私の筋肉だけではなく――心の支えにもなっているのだからな!」
受付嬢ひより:「……あ、それ本音ですね?」
モスト:「もちろんだとも!」
受付嬢ひより:「ふふっ。」
モスト:「それではガイズ!
次回の本編配信――
新・第4話『支えようとした少女を、この身体は傷つけた』 ――優しさを拒絶する絶対筋肉障壁――筋肉を鍛えて、待っていてくれ!!」
──バシィィィンッ!!
最後は控えめなマッスルポーズ。
……だったはずなのだが。
受付嬢ひより:「ああああっ!!
またカメラレンズにヒビが入りましたぁぁぁぁ!!」
モスト:「おや?」
受付嬢ひより:「おや?じゃありません!!」
ギルド控室に、いつもの笑い声が響いた。




