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『ダンジョン配信のトップ層、まともな奴が一人もいない件』 〜規格外のソロ配信者5人が集まったら、同接1億の伝説パーティになりました〜    作者: うちの猫
愛染 恋 編

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新・第23話『純愛の過剰負荷(ピュアラブロード)』【後編】:『誰も見てくれない絶望。その一言が少女を最強へ変えた』 

――ウゥゥゥゥゥンッ!!! ギィィィィィンッ!!! 




突如として、ダンジョンの下層全域に、過去三十年の歴史の中でも一度として鳴り響いたことのない、最大音量の『超非常事態警告エリア・カタストロフ』のサイレンが狂ったように激しく鳴り響いた。 




恋れんが驚いて足を止めたその瞬間、地の底から響く凄まじい地鳴りと共に、エリアの奥から数千、数万という異次元の数の魔物たちの眼光が一斉に真っ赤に染まり、狂暴な咆哮を上げて通路を埋め尽くした。




「グルゥゥゥアアオオオッ!!!」


「オオオオオオオッ!!!」




 三十年の歴史の中でも数回しか起きていない未曾有の大天災――『大氾濫スタンピード』の発生だった。


 地を割り、壁を砕きながら、津波のように押し寄せる無数の凶悪な魔物たち。目の前の空間に浮かび上がるコメント欄は、一瞬にして恐怖と大パニックの悲鳴で埋め尽くされていく。




『うわあああなんだこれ!? ス、スタンピードだろこれ!!』


『画面が魔物の数で真っ赤に染まってるぞ!!』


『下層のスタンピードとか絶望しかない!! 恋ちゃん逃げて!! 今すぐ上に逃げて!!』


『待て、通路が全部埋まってる!! 逃げ道なんてどこにもねえよ!!』


『いや恋ちゃんを見ろ! 構えてる!! 戦う気だ!!』




「みんな、大丈夫だからね……っ。れんが、みんなのこと、絶対に守るから……っ!」




 恋れんは襲い来る魔物の大群を真っ正面から見据え、自らの意思で固有スキル【純愛過剰負荷ピュアラブロード】を放おうと、両手を胸の前でぎゅっと握りしめて身構えた。ヒロくんへの愛と、リスナーへの信頼の愛を胸に、彼女の肉体へ漆黒の超重力オーラが今まさに集まろうとした、その刹那だった。




 ――ドゴォォォォォンッ!!!!! 地響きと共に迫った数万の魔物の先頭が、恋れんの目の前へと肉薄する。 恋れんは衝撃に備えて歯を食いしばった。しかし――鋭い牙も、引き裂く爪も、彼女の身体に触れることはなかった。




 凄まじい風圧と、吐き気がするような獣臭。 魔物たちは、恋れんの存在なんか完全に無視し、彼女をただの石ころか壁の破片であるかのように冷酷に見流しながら、彼女の身体の真横を、凄まじい速度で通り過ぎていったのだ。




「え……っ?」




恋れんの握りしめた手が、力が抜けたように緩む。 魔物たちの真っ赤に染まった瞳は、彼女を1ミリも見つめてなどいなかった。ただひたすらに、地上という名の別の獲物(モストたちのいる上層)だけを目指して、狂ったように彼女の横をすり抜け、上へと駆け上がっていく。




『……え?』


『通り過ぎて、いった……?』


『襲ってこない……? なんで!? 目の前に配信者がいるんだぞ!?』


『恋ちゃんを完全に無視して上に向かって走っていってる……!?』


『何だこれ、魔物の動きが異常すぎる!! 恋ちゃんのことなんか眼中にねえみたいだ!!』 




困惑するコメント欄のホログラム。その光の文字の向こう側で、恋れんの身体が、ガタガタと激しく震え始めた。 魔物の鋭い爪で切り裂かれるよりも、何十倍も、何百倍も恐ろしい絶望。


誰一人、恋れんを見ない。誰一人、彼女に牙を向けて(注目して)こない。ただの背景の一部のように、冷酷に置いていかれる。


 激しい足音と共に自分を通り過ぎていく凄まじい濁流を見つめた瞬間、恋れんの頭の中で、張り詰めていた糸がプツリと切れた。 




彼女の脳裏に鮮烈にフラッシュバックしたのは、ヒロくんが息絶え、冷たくなって、暗闇のなかで誰にも名前を呼ばれず、自分一人だけが取り残された、あの日の、あのスラム街の絶対的な絶望だった。




(……あ、まただ。また、れんを置いていっちゃうんだ)


(誰もれんを見てくれない。誰もれんを必要としてくれない。れんは、また一人ぼっちになっちゃうんだ――)




「嫌だ……嫌だぁっ……! 置いていかないで……っ!」 




 恋れんはその場に膝をつき、激しい恐怖トラウマから頭を抱えて泣き崩れた。 彼女の心にある「愛」が恐怖によって激しく揺らいだ瞬間――彼女の全身から力がすぅっと抜け、集まりかけていた超重力魔法のオーラは霧散し、ピクリとも使えなくなってしまった。




『れんたん!? どうしたの!? 安全なのに、なんで泣き崩れてるんだ!?』


『待て、スキルのオーラが消えた……!? 能力が使えなくなってるのか!?』


『誰も自分を見てくれないのが、恋ちゃんにとって一番の絶望なんだ……っ!!』


『ヤバい、後ろからさらにデカい魔物の第二波が来てるぞ!! このままだと足蹴にされて踏み潰される!!』




 目の前に浮かび上がるコメント欄が、一瞬でパニックの嵐に包まれる。誰の視線も届かない地の底で、恋れんは床にぽたぽたと涙を落とし、子供のように声を上げて泣きじゃくった。




「れんを一人にしないでぇぇぇえええッ!!! 誰も、誰もれんのこと見てくれないの……っ!? ヒロくん……ヒロくん、どこ……っ !?」




 愛が揺らぎ、無力な少女に戻ってしまった暗闇。 だが、その一人きりの地の底で、彼女を見つめるホログラムのコメント欄が、過去のどんな配信をも遥かに凌駕するほどの、爆発的な速度で白く、温かく輝き出した。世界中のみんなが、全力の言葉で彼女を現実へと繋ぎ止めようと叫んでいたのだ。




『れんたん!!! 俺たちがいる!!! 俺たちが、画面の向こうからずっと、君だけを見てる!!!』


『置いてなんか行かない! どこにも行くな! 狼もゴリラ見なくていい、俺たちの視線(愛)を全部君に投げるから!!!』


『魔物なんてどうでもいい!! 恋ちゃん!!! 今、世界中のみんなが、君のことだけをじっと見つめてるんだよおおおッ!!!』


『恋ちゃん!!! 君のその綺麗なピンクの髪も、その笑顔も、俺たちが一生、世界一可愛いって叫び続けてやるからあああッ!!!』


『スパチャ¥10,000:一人じゃない!!! 画面の向こうに何千万人も仲間がいるんだぞ!!!』




 何千、何万、何千万という、画面 の向こうのファンたちからの、命がけの全肯定の叫び。 誰も見てくれないと泣いていた彼女の全身を、リスナーたちの圧倒的な執着と本物の『信頼の愛』が、温かく、力強く包み込んでいく。その励ましの濁流によって、恋れんの心は落ち着きを取り戻し、頭の霧がすぅっと晴れていった。


「みんな……。画面の向こうのみんなが……れんのこと、“だけ”を、じっと見ててくれる……?」 




恋れんが涙を拭い、ゆっくりと視線を上げた、その瞬間だった。 大津波のようにスクロールしていく無数のコメントのなかに


――偶然か、あるいは世界(因果律)の起こした奇跡か、一つの『名前』と『言葉』が、恋れんの瞳に飛び込んできた。




アカウント名:【ヒロ】

コメント:『何泣いてんだよ、恋れんは、笑顔が一番可愛いんだから笑ってよ』



恋れんの時間が、止まった。


スクロールし続けるコメント欄の中で、その一行だけが、まるで世界そのものに選ばれた言葉のように、いつまでも彼女の瞳に焼き付いて離れなかった。




 ピキィィィンッ!!! と、彼女の精神のいちばん深い場所が、眩い光を放って共鳴した。 あの日、暗闇の路地裏で一人きりだった少女は、もう一人じゃない。天国のヒロくんだけでなく、今、画面の向こうにいる何千万人ものファン(みんな)が、自分を「可愛い」と全肯定して見つめてくれている。




「――うん!! みんなが、ヒロくんが、れんのこと“だけ”をじっと見ててくれるなら……れん、もう絶対に、寂しくないもんッ!!」




 恋れんは力強くその場に立ち上がった。 ヒロくんへの不滅の純愛と、リスナーたちへの絶対的な信頼の愛。二つの愛が完全に1つに重なり合った瞬間、彼女の両目の奥のハートマークが、世界を絶望から救うための神聖な光となって完全覚醒を遂げた。




 彼女の固有スキル【純愛過剰負荷】は、過剰な負荷(悲劇の重力)を超えた、真実の愛を体現する最高位の能力へと進化を遂げる。



恋れんが涙を拭き、


ほんの少しだけ口元を緩める。


あの日ヒロくんへ向けた笑顔と、


今、画面の向こうのみんなへ向ける笑顔が、


初めて一つになった。




「――輝け、れんの……【真愛無敵道ピュアラブ・ロード】ッ!!!!」




 ――ズ、ズガガガガガガガガァァァァァンッ!!!!!




 ダンジョン下層エリア全体の空間が、一瞬にして自重に耐えかねて爆発するように陥没した。 地上へ向かって駆け上がろうとしていた数十万の魔物の足元がメキメキと一瞬で粉砕され、過去最大最高の、世界の法則すら書き換えるような美しいサクラ色の超重力光が魔物の津波へとズドンと圧し掛かる。魔物たちは悲鳴を上げる間もなく地面へとペシャンコに押し潰され、その足を完全にその場に縫い付けられた。 




仮面を捨て、本当の自分になった少女が、大切なみんなを守るためにその無敵の重力を解放する。 


恋れんはピンクのツインテールを誇らしく揺らし、最高の、本物の、世界で一番可愛い笑顔をカメラに向けて叫んだ。




「みんな、ちゃんとれんのことだけ見ててね! れんの愛の重さ(重力)で――この悪い魔物さんたち、みんなミンチにしちゃうんだからぁぁあッ⭐︎」


その笑顔は、もう誰かに認めてもらうための笑顔ではない。


愛する人と、愛してくれるみんなへ向けた、本当の恋れんの笑顔だった。




『うおおおおおおお!! 覚醒キタアアアアア!!!』『ピュアラブ・ロードの漢字が「真愛無敵道」に変わってるぞおおおッ!!!』


『重力の色がピンクの桜色になってる! めちゃくちゃ綺麗だ……っ!!』


『恋ちゃん世界一可愛いよおおおおお!!!』


『グッドバイ魔物ども! これが世界2位の真実の愛だあああッ!!!』 




交わるはずのなかった画面。 地上で立ち上がるモストの画面の裏側で、世界2位の少女・恋れんもまた、大切なみんなを守るために、自らの意思でその無敵の道を爆発させたのだった。

「続きを読みたい!」と思ってくれたあなた!


その気持ち、ブックマークで私に届けてくれると嬉しいな♡


「面白かった!」

「続きが気になる!」


そう思ってくれたら、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてね!


あなたの一票が、私の物語をもっともっと強くしてくれるの!


感想も大歓迎だよ!

みんなの言葉、ちゃんと私に届いてるからね♡


それじゃあ――


次の物語でも、また会おうね♪


「ねえ……私のこと、忘れないでね?」


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