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『ダンジョン配信のトップ層、まともな奴が一人もいない件』 〜規格外のソロ配信者5人が集まったら、同接1億の伝説パーティになりました〜    作者: うちの猫
愛染 恋 編

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新・第23話『血塗れの白雪』――骨を砕き、それでも人を守る聖女。

『【世界3位】白雪琴音のダンジョン人命救助パトロール【聖女】』 




――ピツ、と空間に清廉な白聖水のエフェクト光が走り、世界リアルタイム視聴者数第3位に君臨する不動のトップランカーの画面が静かに起動した。


 薄暗く、血生臭いダンジョン中層の広場。そこに佇んでいたのは、汚れ一つない純白のドレスを身に纏った、絶世の聖女の美貌を持つ少女――白雪琴音しらゆき ことねであった。




  彼女は浮遊するカメラドローンに向けて、一切の媚びも、大衆へ向けた嘘の営業スマイルも浮かべない。ただ最高位の名家出身の女性として、どこまでも凛とした、気高く優雅な所作でドレスの裾をそっと摘み、完璧な作法の一礼カーテシーを披露する。




「ご機嫌よう、皆様。本日も優雅に、破壊と再生の探索を始めましょう」 




丁寧すぎる敬語での挨拶を終え、白雪琴音はこれからの探索、および万が一にも出会うかもしれない「傷ついた人々」の迅速な救助に備え、自らの身体へ最高位の聖バフ魔法を多重展開した。 


――身体能力極限上昇、金剛筋力付与、聖魔力過剰充填。 




彼女の華奢な肉体に、世界を滅ぼしかねないほどの超絶的な魔力とバフの負荷が、一瞬にして限界を越えて充填されていく。 




白雪琴音は、配信開始の気合いを静かに入れるように、胸の前で軽く、小さなガッツポーズを作った。本当に、ただ戦う前に小さく手を握り込んだ、それだけだった。


 


――「バキィッ!!!!!!!!!」 




広場全体に、骨が綺麗に砕ける生々しい破壊音が響き渡った。


 彼女が自らにかけた過剰バフの出力があまりにも高すぎるせいで、ただ手を握りしめただけで、自らの指の骨がその超絶的な筋力と圧力に耐えきれず、勝手にバキバキに全骨折したのだ。


 だが、白雪琴音は美しく凛とした表情を一切崩さない。骨が折れた0.1秒後、固有スキル【自己超再生パーフェクト・ヒール】が完全自動で発動。光の速度で指の骨が内側からカチリと完治し、何事もなかったかのように彼女は再び優雅に佇む。




『ギャアアアアアア! 開幕のガッツポーズ骨折たすかるww』


『出たアアアア! 挨拶の後に手を握っただけで骨折る過剰バフの圧ww』


『自分でかけたバフの威力に自分の骨が耐えられてないのいつ見ても凄いな』


『お顔は世界一の聖女なのにやってることが人類最凶のパワータイプお嬢様なのよ』


『骨折った次の瞬間にはもう完全再生してて治るの早すぎwwスゲエww』


『スパチャ¥10,000:ガントレット姿が今日も最高に格好いいです、お嬢様!』




 目の前に浮かび上がるコメント欄のホログラムが、数十万人のリスナーの熱狂の弾幕で一瞬にして埋め尽くされていく。カメラの向こうの大衆がどれほど騒ごうとも、白雪琴音の凛とした眼差しは、ただ真っ直ぐに前方を見据えていた。


 彼女の目的は、モストと同じ、裏表のない純粋な「慈愛」。傷ついている人がいるかもしれないと、彼女は一瞬の躊躇もなくダンジョンの奥へとパトロールの歩みを進める。




 その時だった。 回廊の先、いくつかの大部屋を隔てた奥から、冒険者たちの悲痛な悲鳴と、中層の狂暴な魔物『アイアン・ゴーレム』の群れが鳴らす重低音の足音が、ドローンの高性能マイクを通じて微かに響いてきた。




「……! 誰かが、助けを求めていますわね」 




白雪琴音の瞳に、鋭い高潔な光が宿る。


 モストの守り方が「自らの肉体を盾にして、身を挺して庇って守る」ことであるならば、白雪琴音の守り方は――「大切な人を傷つけられる前に、迫り来る全ての脅威を、その拳で徹底的に打ち倒して守る」こと。


 誰かを、1秒でも早く助けなければいけない。 


そう決意した瞬間、白雪琴音は純白のドレスを激しく翻し、死に物狂いで地面を蹴り出した。




 ――「バキィッ!!!!!!! ドゴォォォンッ!!!!」




 阻めぬ衝撃波と共に、ダンジョンの頑丈な石畳がクレーター状に木っ端微塵に爆砕した。 


 一歩。ただ、救助のために死に物狂いで全力の踏み込みを行ったその瞬間、過剰なバフがかかった彼女の脚力と魔力の圧力に自身の肉体が耐えきれず、白雪琴音の両脚の骨が、一歩目で生々しくバキバキに叩き折れたのだ。 


だが、彼女の走勢は1ミリも衰えない。 


 脚の骨が折れたその刹那、0.1秒の超高速ヒール【自己超再生パーフェクト・ヒール】が作動。衣服を汚すこともなく、肉体の内側からカチリと一瞬で骨が繋ぎ直される。骨を折り、繋ぎ、地を割りながら、彼女は音速を超える速度で、光の弾丸となって被害者の元へと爆走していった。 




――ズ、ドォォォォォンッ!!!!! 




ダンジョン中層、若手冒険者パーティが完全に退路を断たれていた大部屋の石扉が、銀のガントレットの裏拳一撃によって文字通り跡形もなく粉砕された。 




 吹き荒れる瓦礫と土煙を割って、汚れ一つない純白のドレスを翻した白雪琴音が戦場へと割って入る。 


 部屋の中央では、数人の若者が床にへたり込み、絶望の涙を流していた。彼らの目の前には、硬強な鋼鉄の肉体を持つ中層の凶暴な魔物『アイアン・ゴーレム』が五体。


赤く光る眼光を宿した巨躯が、今まさに若者たちを踏み潰そうと、その巨大な鉄拳を振り下ろしたまさにその刹那だった。




「――そこまでです」 




――ドガァァァァァンッ!!!!




 重低音の衝撃波が部屋中に反響した。 


白雪琴音は、ゴーレムの振り下ろした鉄拳を、その右腕の銀のガントレットで真っ正面から受け止めて完全に静止させていた。


 だが、彼女は防御のバフを一切持たない。筋力増加と魔力充填という、攻撃・出力だけに極振りした歪な過剰バフしか持たない彼女は、敵の攻撃を受ける強度が皆無なのだ。金剛筋力の過剰バフと敵の打撃が衝突した瞬間、肉体の強度が耐えきれず、受け止めた彼女の右腕の骨がバキバキィッ!と生々しい音を立てて内側から砕け折れる。しかしその0.1秒後、固有スキル【自己超再生パーフェクト・ヒール】が内側から骨をカチリと繋ぎ直し、純白のドレスには汚れ一つついていない。


「ひっ……せ、聖女様……っ!?」


「世界3位の、白雪お嬢様だ…!!助かった……!!」


 


全滅を覚悟していた若者たちが、涙を流して自分たちを救った背中を見上げる。同時に、彼女を追尾してきたドローンの視界を埋め尽くすコメント欄は、あまりにもヤバすぎるその光景に、三者三様のリアルな声の濁流となって大暴走を始めた。




『お嬢様間に合った!! ガントレットのガード格好よすぎる!!』


『ってか今、受けるだけで腕の骨折れてなかったか……? 音エグかったぞ……』


『防御バフ持ってないからな。攻撃力だけバグってるから、敵の攻撃受けたら骨が耐えられないんだよ』『うわ、本当に一瞬でカチリって繋がった……。毎回これやってんの? ガチで引くわ……』


『骨を折りながら相手を粉砕するとか、美少女の皮を被った本物の化け物だろ(笑)』


『衣服を1ミリも汚さない超高速ヒール、いつ見ても芸術的だけど不気味すぎる』


『茶化すなよ! お嬢様は今、あの若者たちを助けるために命を削って戦ってくれてるんだぞ!!』


『頑張ってくださいお嬢様!! 負けないで!!』


『ゴーレム五体を一人で受ける気か!? 息が止まる……っ』




 白雪琴音は、自身を囲むようにじりじりと包囲を狭めてくる残り四体のアイアン・ゴーレムを見つめ、無言のまま、静かに銀のガントレットを構え直した。


 


白雪琴音は、誰かを守るためなら、自分が砕けることなど一瞬たりとも迷わない。




 その、あまりにも苛烈で、どこまでも丁寧で、圧倒的な破壊のインファイト。


 眼前のゴーレムが咆哮を上げた瞬間、彼女の脳裏に、自らをソロへと駆り立て、この極端な攻撃特化のバフを選ぶきっかけとなった、かつてまだ


「パーティを組んでいた頃の記憶」が、鮮烈にフラッシュバックした。


―――――――――――――――――――――――

あとがき

ひより「みんなー!今回も読んでくれてありがとう!」


琴音「ご機嫌よう。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。」


ひより「いやいや、お嬢様!最初のガッツポーズで骨折る人、初めて見たよ!?」


琴音「……過剰な強化を施しておりますので、あれくらいは日常ですわ。」


ひより「日常なの!? 普通の人は人生でそう何回も骨折しないからね!?」


琴音「ですが、私が壊れるだけで誰かが助かるのでしたら、それで十分です。」


ひより「……。」


琴音「私は治せますもの。」


ひより「そういうところなんだよなぁ。」


琴音「?」


ひより「モストさんも、自分が全部受ければいいって思ってる。」


琴音「……。」


ひより「琴音ちゃんは、自分が壊れればいいって思ってる。」


琴音「……ええ。」


ひより「この作品、強い人ほど自分を大事にしないんだね。」


琴音「それが私たちの役目ですから。」


ひより「……その考え方を変えてくれる誰かと、いつか出会えるといいね。」


琴音「ふふ……そうなれば、とても素敵ですわね。」


ひより「さて!次回からは、そんな白雪琴音の過去が少しずつ明らかになります!」


琴音「どうか最後まで見届けてくださいませ。」


二人「また次回、お会いしましょう!」

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