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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第一章 学校編
23/38

23話 決戦

地下から抜け出しウォルゼンとの戦いを強いられるアデル。オーバードライブも使い切り、諦めかけた。しかし、間一髪でアース族が助けに来た。

森の中に爆音が響き渡っている。トウヤとウォルゼンは一進一退の攻防を繰り返していた。

「無心流爆炎」燃え盛る炎がトウヤの刀身を覆い、剣を振った先が、爆発した。

「ブラットボンバー」ウォルゼンは血飛沫を撒きながら付着した瞬間に爆発を繰り返し、トウヤを牽制している。遠方からの援護は立ち込める砂煙の影響で、手が出せない状況だ。

「ついこの前会った時に比べて随分迷いが無くなったじゃないか。蛮勇では俺には勝てんぞ。」ウォルゼンの皮肉にトウヤは余裕の笑みを浮かべた。

「蛮勇とか気持ちの変化じゃない。見切ったんだよ。その術式を!」トウヤは後ろへ下がり刀を鞘へ納める。

「無心流空跡斬!」直後、乱雑に空間が裂けてウォルゼンが傷を負った。

「ケボッ?!何をした。」空跡斬は空間属性のみ使用可能な武者が使える術式だ。刀を鞘から抜き出し、納めるまでにたどった道をもう一度再現する。無論それ以前に使用した術式の効果は付与されていない。しかし、勝負を開始してから今に至るまでの相手の斬劇を記憶することなど不可能だ。故に必中の術式としても有名だ。

「やっぱりか、そう簡単にやられないよな。」ウォルゼンは致命傷を負いながらも立ち続けていた。傷口にはゆっくりと血が昇り癒そうとしている。血操術式の最大の特徴は持続性だ。その上、自己回復まで付いているとなれば相当なアドバンテージだろう。トウヤは再び構えて攻めた。ウォルゼンは治癒をやめ傷口から直接刺々しい大剣を生成する。トウヤは姿勢を低くし加速し始めた。大剣を高く振り上げたウォルゼンは叫んだ。

「ここでー!葬ってやる!」ウォルゼンは大剣を思いっきり振り下ろした。空気が唸りを上げながらトウヤに迫る。トウヤは右半分の体に重心を掛けて刀を斜めに振り上げ、見事攻撃を受け流した。続いてその反動で回転したトウヤは大剣の上にのり上がりそのままウォルゼンの懐に入った。がら空きの腹部を一刀両断した。しかし、彼の腹は切られておらずむしろ先ほどの傷も無くなっていた。

「見誤ったな。治癒の程度があんなに低いわけないだろう。」気付いたらトウヤは腹を切り裂かれ、後方に吹き飛ばされていた。

「クロウ!」苦し混じりのトウヤの叫びにずっとピトの虚影に隠れ続けていたクロウは動き出した。彼は全身の神経に神聖力を巡らせる。


ウォルゼンはクロウに向かって大剣を振るが、彼の身体に触れた瞬間に吹き飛ばされてた。ウォルゼンは動揺を隠せなかった。

「弾くか。それだけのオーラは君の年齢で出せるとは驚きだ。」事実、元からの神聖力量で言えばアース族トップと言っていいほどクロウは多い。しかし、アデルやシーラは起死回生や転換によるスキルによって大量の神聖力を回復できることでクロウよりも扱える総量が多くなっている。

「はっ!この状態で俺に傷を付けられるやつなんか誰もいやしねぇよ!」クロウは真っ直ぐウォルゼンのもとへ飛び込んだ。

「ブラットレイ!」血の光線が飛んでいくがすべて弾かれた。クロウは右腕を引き彼の手前まで迫る。

「これでもくらっとけ!」右のストレートは腹部に直撃し、肋骨の軋む音が聞こえた。ウォルゼンはそのまま後方に吹き飛ばされ、クロウはそれを追った。ウォルゼンは治癒を試みているようだが、うまく行かないようだ。

「やっぱり骨ばかりは血操術式でも回復はできなさそうだ。クロウはそのまま攻めて、ロキとレオは合流してきてくれ。ピトは引き続き援護を頼む。ごめん僕は少し動けそうにない。腹が切れて出血が止まらないんだ。」トウヤは木に背中を預けながら、念話にてみんなに指示を出し続けていた。止血を続け応急処置をしていたが、戦闘不能状態に陥っている。すると背後から優しい囁き声が聞こえた。

「無理しないで、すぐに仲間が来るから。」声の主は白い光を放つ蝶々だった。その姿を見たトウヤはとうとう幻聴が聞こえるところまで来たかと思った。蝶々はトウヤの周りをしばらく回ると、どこかへ飛んで行ってしまった。

「トウヤさん!」木の裏からシーラが駆け寄ってきた。

「ひっ・・・ひどいすぐに治療しますね!」シーラは荷物をおろさずにヒールをかけた。

「どうして・・・アデルたちは?」トウヤは視界がぼやけながら聞いた。

「二人とも治癒し終わりました。そうでなくてもあなた方が重傷ですよ。」シーラは懸命に治療を続けた。

「リーアはまだ気絶したままです。アデルは治ったあとすぐに動き出そうとしたのでトウヤさんに判断を委ねようと思います。」トウヤは体を起こして念話で答える。

「アデル、死なないようにな。時間稼ぎでいいから。」すると赤黒いオーラのアデルが目の前に現れた。泣きそうな顔を見せながらもトウヤの頭を撫でる

「安心しろ、怪我すらしないで帰ってくるわ。」それだけ言い残してあっという間にいなくなった。

「それは禁句だろアデル。」シーラにすら聞こえないか細い声で呟いたトウヤは視界が暗くなった。


 アデルが山を下った先で、まだクロウとウォルゼンが戦っていた。というより一方的にクロウが殴っているような感じだ。

「おらおら!どうした敵さんよー!」体中を殴り続けてウォルゼンもよろけている。

「手印法第8手腕硬化。」アデルは一気に坂をかけ下りる。右からレオとロキが合流した。

「アデル!クロウ!」レオの大声が響き渡る。

「そこから離れろー!」アデルはすぐに下がり千里眼で辺りを見た。辺りに漂っているのとは違う不規則な魔力の流れが見えた。

「愚かな人間共、俺ら亜種族の恨みを知るがいい!」魔力が一気にウォルゼンへ収束していく。

「ピト!クロウを引き上げて!」ピトは虚手ですぐにクロウを引き上げた。地面が揺れ、ウォルゼンは紫色に光輝いた。すると血によって骨格が生え始め、更に皮膚と鱗を生成していく。

「大地に眠りしスイレンよ!我にその憎しみを与えたまえ!」ウォルゼンは人間の数十倍の大きさまで巨大化し、赤竜と化けた。

「おいおい、でかすぎだろ。」レオから力の抜けた声が漏れた。赤竜は雄叫びを上げると歩き始め、ディジェクラント王国へ向かった。

「凝血!」赤竜のまわりに血剣が無数に生成された。

「マズい!手印法第4束縛」アデルは即座にピト、クロウ、ロキ、レオを縛りあげると自分の方へ引き寄せた。

「死ね!!!」血剣が雨の如く辺り一面に降り注ぐ。

「あぶねぇ。」みんなを引き寄せた後にアデルはプロテクトでみんなを守った。赤竜はまた歩み始めた。

「あの規模まででかくなりすぎたら太刀打ち出来ないよ。」ピトは弱音をはいた。

「元から太刀打ちなんてできやしなかったよ。あくまで足止めだ、俺らの任務は。で、どうする?」レオはぴしゃりと言った。幸いにも足は遅いようだ。それに羽もまだうまく動かせないように見える。

「僕に考えがある。」アデルは手を挙げた。


 赤竜は着々と前に進んでいる。目線にはディジェクラント王国がはっきりと見えていた。あれを崩せば亜種族の悲願が叶う。ウォルゼンがそう考えていると不意に何かに引っ張られた。両翼と両足それぞれに鎖が絡まっていた。

「今だクロウ!」足元に強い衝撃が走りバランスを崩す。どうやら右足を砕かれたようだ。修復しようとした矢先。

「ロキ、レオ頼む。」左翼にシャウターアローと風貫の集中砲火を食らった。翼がとれ見事に立てなくなった。

「まだ負けるわけにはいかない。まだ諦めるわけには!」鎖を引きちぎり、前足で体を引きずりながら前進した。それでも周りを岩壁が生成され封じ込められた。

「ブラットボンバー!」岩壁をぶち破り、前へと進む。

「まずいな足止めできないぞ。」刻々と進む赤竜を止めようとするが一歩も止められない。

「凍結」赤竜の足元から氷柱が突き抜けた。振り返るとそこにはリーアの姿があった。

「リーア!」

「そのままもう一度岩壁で囲って!今度こそ食い止める。」僕は地面に手をつく。

「手印法第16アースクエイク。」地面が大きく上がり、四方を囲んだ。抵抗しようとウォルゼンはもがくが氷のせいで動けない。

「一斉攻撃!」各自がそれぞれ最大の技をぶつける。それでも鱗の部分が半分削れた程度だった。

「硬すぎる。僕らじゃ足止めで手一杯だよ。」

「もう大丈夫だよ。援軍が来た。」トウヤと念話が繋がり、その言葉を聞いた瞬間。紅色の光線が岩壁すらも貫通して赤竜に大穴を開けた。

「手印法第11インフェルノ。」空を見上げると、セイゲルの姿がそこにあった。

23話ご覧いただきありがとうございました。

是非感想、レビューをよろしくお願いします。

またX(旧Twitter)で投稿の告知をしています。フォローといいねお願いします。#イニシエで探して見てください。

次回は「新たな始まり」です。お楽しみに

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