21話 嘲笑う魔族
アデルとリーアは襲撃後、近くにあった洞窟に入り奥へと歩みを進めた。同じ頃セイゲルとトウヤはアデルを助けるために協力して策を練っている。
明くる日の朝。最悪の状況とは裏腹に天気は雲一つ無い快晴。思わぬ出来事がアース族に衝撃を与えていた。
「嘘だろ。結界が崩れていく。」レオはすぐにトウヤを起こし現状を見せた。
「刻印の方はどうなってる?」二人は走って様子を見に行った。あれ程禍々しいオーラを放っていた刻印は結界が壊れたことで更に異彩なオーラを周囲に撒き散らしていた。
「すぐにシーラを起こしてくれ。転換で中和しないと僕らも窒息しかねない。」ベルゼンは急いでシーラを起こしに行った。トウヤは刻印の解析に当たりながらセイゲルに連絡した。
「セイゲルさん。聞こえていたら返事をして下さい。」トウヤの呼びかけにセイゲルはすぐに反応した。
「どうした?何かあったのか?」トウヤは手短に説明する。
「現在内側から結界が壊れ始めました。中にあった魔素増幅らしき刻印を守っていた結界も崩れています。解析していますが、山の中にどうやら魔晶石を動力源とした刻印とのつながりがあるようです。。それともうひとつ、ディジェクラント西門近くで中枢の刻印の反応を確認しました。セイゲルさん確認できますか?」セイゲルは唖然とした。
「西門には合同演習の運営控えがある。」セイゲルは両手の親指を絡ませ、鳥の形を作り唱えた。
「手印法第40両翼」背中に緑の翼を生やし、その場にいた人全員に呼びかけた。
「わしは少しここを離れる。あとは頼むぞ。」するとセイゲルは飛び立ち、反対側にある正門へと向かった。
「トウヤ、アデルの居場所は分かったか?」セイゲルは切羽詰まった様子で聞く。
「薄っすらですが、真下の地下の魔晶石近くでリーア共に反応があります。」それを聞いてセイゲルはすぐに指示を出す。
「トウヤ、後はこちらでなんとかする。君たちはアデルとリーア嬢の救出に専念しておくれ。」セイゲルはスピードを上げて目的地へ向かった。
「了解です。みんな!2人を救いだしに行こう!」トウヤの掛け声でアース族のみんなは刻印から離れ走り出した。
西門合同演習運営控えには沢山の療養者の治療にディジェクラント王国のシスター、統括局の人員、有志者が多く携わっていた。無論原点者も安全のためこちら側に避難してきている。セイゲルが着地をするとラハンが近づいて来る。
「セイゲルさんどうしたんですか?」セイゲルは辺りを見回しそれらしき刻印を探す。
「ラハンよ。この辺りで禍々しい気配を感じんかったか?」ラハンは少し考えたが知らないような反応だった。
「感じませんね。何せ結界があるとはいえ魔素が立ち込めてますから。」セイゲルは千里眼でを使い目を凝らして確認した。するとやや違和感のある刻印を、正確に言えば術式に目が留まった。オーラ自体は神聖法そのものだが中身が魔法の使用になっている。その人物を見てセイゲルはすべてを理解した。
「なるほど最初から我々は騙されていたわけじゃな。」セイゲルは両手4本の指を交差させる。
「手印法第4束縛」セイゲルはその人物を縛り上げた。
「セイゲルさん?!なんで、なんでグンダス様を縛り上げるのですか?」そう、セイゲルが違和感を持ったのはグンダスが使っていた探知術式だった。
「本当によく化けておる。自分の目で確かめるまで半信半疑じゃったよ。見た目も、言動もオーラもすべて似せておるが、わしの目はだませんぞ。ゼパル、いや差し詰めグシオンの変化術か。」グンダスは否定した。
「何を言うんだセイゲル、僕は本物だ!ボケて頭でもおかしくなったか?」セイゲルは眉間にシワを寄せて言った。
「ではその首から提げてるロケットを破壊してみよ。」グンダスは首から提げてるロケットを見つめた。一方、その言葉を聞いたラハンは慌てた。
「セイゲルさんそれは、」セイゲルは手で彼を制止する。
「いいぜ、それで証明になるってんなら壊してやるよ。」その瞬間その場にいた統括局全員が彼が偽物だと分かり、彼を見る目が変わった。
「その決断が違うのじゃよ。グンダスはずっと寡黙で、愛想もちっともないやつじゃった。じゃが彼が唯一感情を表に出す瞬間があるのは、そのロケットの中にはいっている妻子の話じゃ。やつは言っておったよ。」セイゲルは一呼吸置く。
「僕はこの世から去るまで、去った後でもこれだけは永遠に手放したくはないとな。」グンダスは目線を地面に落とし、深くそして不気味に笑った。
「カッカッカッ、どうやら言い訳できない失言をしてしまったらしい。なぜゼパルの名前を最初に口にした、計画について知っておるのか?」セイゲルは少し戸惑ったが、トウヤの事は伏せる言い回しをした。
「この星に派遣されている君たちのような強者の魔族集団、ソロモン会はとても有名だよ。二人の他に名を挙げるとすればヴァサゴだったかのう?」相手の魔族は少し驚いていたが、すぐに笑みを浮かべた。
「そこまで知っているとは流石。長生きするもんだな、セイゲル・メラータ。情報を持っているのは魔族も人間族も一緒か。」セイゲルは険しい顔をした。そんな中、原点者が会話に割って入った。
「全くいつまでも喋っとる。さっさと始末せんか。そうでないと、」大地が怒るように揺れ、偽グンダスの襟元に鋭い岩石が押し当てられた。
「私のために怒り狂った大地を押さえられるか不安でな。」少し離れた野営テントのなかで原点者は扇を煽りながら言い放った。
「これだけ囲まれていては、倒しきれる気がしないな。」偽グンダスの言葉に全員が武器を構える。
「バーストテフェロディア」その瞬間グンダスの体が光輝いた。その場にいた全員が一瞬で悟った。
自爆
「手印法第5プロテクト。みな自分の身と原点者を守れー!」白い閃光がその空間を覆い、衝撃が微かに体を揺らした。
「ハッハッハあれを防ぐか、まぁいいあばよセイゲル。次は、戦争で会おうぜ。」土煙が晴れてきてグンダスの周りにセイゲルのプロテクトが発動し、爆発範囲を。完全には防ぎきれなかったが、負傷者が出なかったのは喜ばしいことだ。原点者の付近は大地が盛り上がり、野営テントごと囲んでいた。あれならば心配はないとセイゲルは安堵した。
「セイゲル!」背後から聞き馴染みのある野太い声が聞こえた。ガイアスだ。
「何があった。これは一体。原点者様は無事だろうな?」ガイアスは焦った様子でいた。
「安心しろこの場にいた全員無傷じゃよ。」その言葉を聞いたガイアスは安堵した。
「先ほど報告があって、結界の外部干渉が緩んだみたいだ。セイゲル、統括も生徒救出に動いてほしい。」ガイアスは頭を下げる。
「もちろんじゃ。じゃがわしは弟子を助けるゆえ、その話はそこにいるラハンに頼んどくれ。」ガイアスは驚いた。
「統括局の仕事はどうする?君が指揮をとらなければならないだろう?」セイゲルは視線をずらす。
「弟子を、アデルを助けなければあいつらに死後顔向けできんよ。」ガイアスは何か悟った。
「おい、それってまさかあの少年は、いや今は聞くまい。事情は分かった。こっちのことは任せておけ。」セイゲルは頭を下げる。
「感謝する。」セイゲルは両手の親指を絡ませ、鳥の形を作り唱えた。
「手印法第40両翼」セイゲルはアデルの元へ飛び立った。
21話読んでいただきありがとうございます。予定していた死闘は文字数が大変長くなったため次回へと移動し、今回の投稿内容としました。
事前に告知していた作品が作れず申し訳ありません。重ねて前作にタイトルがなかった件本当にご迷惑をおかけしました。




