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42話 村は平和です

 事件が解決し、すっかり村は元通りである。


 私は相変わらず、転移者保護の仕事と「猫の手」を掛け持ちしていた。なんとソニアからも「猫の手」の依頼が入り、創作中の先品をひたすら褒めるという仕事内容だった。まだソニアの仕事には行っていないが、どうやって彼女に喜んで貰おうと頭を悩ませているところだった。


 せっかくできたマークの店は早々と潰れ商店街は再び寂しくなった。


 とはいえ、デレクのカフェも着々と出来上がってきているし、悲しい事ばかりではない。


 私がジミーの仕事の帰りに、もうオープン間近のデレクの店を見て、少し希望を持つ。デレクによるとこの土地でとれら野菜や乳製品を使った地産地消カフェのようで、杏奈先生のカフェとは全く違うコンセプトの店で楽しみである。


 その後、私がミッキーの店に行く。店のレウアウトは少し変わっていた。レジの近くにはチルドケースがあり、田舎パンのサンドイッチやフルーツサンドなどの新製品が置かれていた。


「ミッキー、こんにちは」

「おぉ、いらっしゃった。ちょっと店をリニューアルしたんだ」

「事件調査でなかなかここに行けなかったから気づかなかったわ」


 私は苦笑してチルドケースの中のフルーツサンドを見る。中身はこの土地特有の木苺を使っているようで、日本で売っていたものよりは地味だ。しかし、ろくにスイーツが無いこの世界にもおいては十分華やかに見えた。それに値段もリーズナブルだ。たぶん、アビーとジーンの小遣いでも買える。杏奈先生のカフェやマークにパン屋はぼったくり価格だったので、かなり良心的に見える。


「美味しそう、フルーツサンド!」

「ああ、ネルのレシピで作ったんだが、意外とこの村で好評でな。ジャスミンなんかが糖分が気になるみたいだから、甘さはちょっと控えめにしてる」

「私も食べたいわ。あと田舎パンと一つ注文できる?」


 ミックキーのパン屋の中は、事件があった事など嘘のように平和そのものだった。一時はマークのパン屋に出現は気を揉んだが、結果的には新メニューも出来上がり良かったかもしれない。ちなみに私が色々アドバイスをしたシチューパン、ジャムパンなどの日本風のパンは試験的に一定期間発売されたが賛否両論。新しいもの好きな村の女性たちもだんだん飽きてきて売れなくなってしまったようで、もうそれらのパンを売る予定は無いという。


 私は美味しく感じたが、やはり日本のものをよその土地っで売るのは難しいだろう。杏奈先生もカフェもおそらく経営は行き詰まっていたと思う。


 私はミッキーにお金を渡し、パンを受け取った。


「ありがとう、ミッキー」

「いや、今回は俺も事件にあんまり協力できなかったしな」

「良いのよ」

「リリーは子供達にすっかり好かれているらしいな。今日もお絵描き教室やっているらしいよ。俺もパン教室でもやってみようかね?」


 リリーの雑貨屋にアビーとジーンは毎日のように通い、絵はもちろん、手芸やペーパークラフトなども習っているようだ。おかげですっかりリリーに懐いてしまい、「マスミにママになって欲しい」という事もなくなった。少し寂しいが、ケイトについてもすっかり忘れてしまったようである。


 相変わらずゲジゲジ虫を使ったイタズラをする事もあるが、毒きのこを使うようなたちの悪いイタズラは今のところやっていないようである。これはプラムのお仕置きが効果があったのだろうが、やっぱり牢屋にいれて置くちょっぴり心が痛むので、アビーとジーンにはもう少し大人しくなって欲しいとも思う。まあ、ケイトの逮捕が彼らのメンタルに打撃を与えなかった事は不幸中の幸いかもしれない。


「パン教室? いいじゃない?」

「まあ、子供たちが希望してたらやってみてのいいな」

「そうね。やっぱり子供達には色々挑戦させたいね」


 この村人は色々と決定もあるが、こうして村ぐるみで子供をみ見守るのは悪くないかも知れない。きっと昭和以前の日本でもそんな感じだっだろうが、いつの間にか廃れてしまったようである。


「そういえば、牧師さんもこのフルーツサンドが好きだと言ってたぞ。マスミもこれを出汁にしてみたらどうだ?」


 ミッキーは揶揄うようにニヤリと笑うどうやらミッキーにも自分の気持ちはバレバレのようだが。気づいていないのは、当の本人だけかも知れない。


「そんな、恥ずかしいわ」

「いいじゃんか。応援してるぞ」

「まあ、他人事だと思って」


 私は苦笑しながらミッキーのパン屋を後にした。何はともあれ、とりあえず今はこのフルーツサンドの味が楽しみである。


 ミッキーのパン屋を後にする。今日はもう仕事の予定がないし、眺めに良い湖でフルーツサンドを食べてもいいだろう。


 途中、アナのジュース屋により青汁風の野菜ジュースを買う。


 アナはしょんぼりと落ち込んでいた。今回の事件ではアナの黒い面も見てしまったが、売り物のジュースは健康に良いし、恨むような気持ちは持てない。


「アナ、元気?」

「そうでも無いわね…。今回は牧師さんにも迷惑かけたし、賭け事をみんなでやってた事はプラムにこっぴどく叱られたわ」


 アナやローラたちは事件をネタに誰が犯人かと賭け事もしていた。特に不正を嫌うプラムは大激怒。詳しくは知らないが、本人曰くちょっとしたお仕置きをしたらしい。プラムのするお仕置きなんて怖すぎるにで、私は詳細は聞いていなかった。


「でみ犯人は捕まって良かったわ。マークはあなたを狙っていたみたいだし、事件が解決してよかったわ」

「そうね。もしマークと不倫するような関係になってたらと思うとゾッとする」


 アナは顔色を悪くし、プルっと震える仕草を見せた。


「でも、よくケイトを白状させたわね。結構すごいわよ、マスミ」

「そうかねぁ。今回も私の無能さが、犯人の逮捕にキッカケを作ったようなものな感じだけど…」


 結果的に自分が囮のような存在になり、ケイトを逮捕できたようなものである。かなり危険な橋を渡った捜査だったと思い、正直なところもう事件調査は休みたかった。


「まあ、いいじゃない。結果的に良かったんだから。牧師さんの疑惑も晴れたしね。こんな調査してくれたんだもの。牧師さんはマスミに惚れるかもよ〜」

「そんな、嘘言わないで。ありえないって」


 どうもこのアナからも自分と牧師さんをくっつけたい圧を感じる。おそらくジェイクの恋のライバルを一人でみ減らしたいんだろうが、ラスボスのソニアが鎮座している。アナの恋に行方み前途多難だろうが。


「じゃあね、アナ」

「うん。またね」


 村はいつものように平和そのものだった。


 事件を解決した安堵を噛み締めながら、私はアナから青汁風のジュースを買い、湖の方に向かった。


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