表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/957

怠惰に過ごすために 3

 久しぶりの誰もいない時間。

 昨日の大工チームのおかげで道路に広がろうとする雑草や雪で折れそうな枝を切り落としてくれたおかげで随分と楽が出来た。勿論排水溝のゴミも拾い上げてくれて、免許もなく油圧シャベル、いわゆるユンボを駆使して綺麗にしてくれたのは感謝だ。

 ほらね。

 私有地だからね。

 公道に出て運転しなければ問題ないのさ!

 ありがたい事にこだわりさえなければネットで百万ほどで手に入れる事が出来る。ピンきりはあるけどゴミさらい程度ならそんな立派な物でなくて大丈夫。それにメンテナンスに関しては宮下のにーちゃんが面倒見てくれるので無償のレンタルと引き換えにお願いしているし!

 まあ、おばさんが一番活用してくれているので俺たちは口を塞ぐのだが。でもそれで道路沿いを綺麗にしてくれたり、雑木林に手を入れてくれて花を植えてメルヘンチックにしてみたり、なんか映える~とか言う他府県ナンバーの観光客が季節限定で来たりとかネットでちらほら聞くけど知らないふりをしておく。百万本の秋桜とかメルヘンティックなのを体感したい、でも二番煎じはいやと言う主張を聞いた気があったような気もしたがが実益のあるハーブにしたらどうです?なんて無責任なことを言った覚えはある。

 ハーブなんて大輪の薔薇に比べたら地味だから季節柄時々色とりどりの雑草が生えていると言うぐらいにしか俺は感じないが……

 絶対的感性の差だと言うことにしておいた。  

 つまり今俺はやることがないのだ。

 洗濯物も洗って干してしまったし、畑もさっきの手入れで十分だ。来客の予定はないし、食料も豊富に冷蔵庫で鎮座している。

 ふむ。

「たまには出かけるか」

 釣り道具を車に詰める。弁当とかは向かう先に弁当屋もないしと言う事でキャンプセットと適当に食材を持つ。保冷剤がわりの冷凍うどん、お一人様鍋のポーション、ソーセージとか缶詰とかその場で調理しなくても食べれる物を。水分は大切なので水筒に冷たい水とペットボトルを何本か積んで、ふらり……

 近くの川は冷たすぎてあまり魚がいないからたまには湖に行こうと山を降りるのだった。




 湖は良かった。

 程よく夏の暑さを満喫し、観光地という人混みで観光客みたいにソフトクリームを食べ、喫茶店でうちの横の川の下流が水源の水を謳い文句にしたコーヒー一杯に千円を払い、うちの洗濯の汚水とかだだ流しなんだけどって心の中で突っ込みながらこれがリサイクルと訳の分からない悲しみに明け暮れながら湖の辺りへと向かうのだった。

 時は夏休み。

 周囲を見ればリア充達で満ち溢れていた。

 何処にもお一人様なんていない。

 いたたまれないと人の少ない場所へと移動する。

 さっきのぼったくりコーヒー店で遊魚券を買って見えるように胸のメッシュのポケットに入れる。キャンプ地のギリギリ隅っこで薄暗いけど、初めてきた所なので冒険は危ないしするつもりもない。

 日差し避けのためのテントのタープをはり、焚き火台で薪に火をつけて持ってきたケトルでお湯を沸かす。その間に竿に餌をつけて糸を垂らす。

 宮下に教えてもらって始めた釣りだが軍手をすればミルワームやミミズだって触れるようになったぞ?

 だからと言って釣れるわけではないが、ぼんやりとした時間を有意義に過ごす。

 なんだか今月は色々ありすぎたからこうやってぼんやりと過ごす時間って大切だよな。リフレッシュするには賑やかすぎるが生活と全く関係のない所に足を向ける。これもこれでストレスというが楽しいストレスは程よい疲れとなり、充実した一日と認識することになる。

 たとえ魚が小さな稚魚しか釣れなくてもタープの下でコーヒーを飲み、薪木をくべながらステンレスのクッカーで水を沸かし冷凍うどんを投入。

 決して釣りが飽きたとかは言わない。

 ふと隣から子供のために苦労して新品のテントを張って火を焚べてバーベキューの準備をしている目がひたすら俺を見つめていた。

 それは手伝えという事だろうかと思うも赤の他人なのでスルーします。奥さんが作る昼間から胃もたれしそうな小洒落た料理よりもあっさりと、でも烏骨鶏の卵を落としたソーセージが浮かぶチゲ鍋スープのうどんを狙っているのなら見るが良いというように啜って見せた。つかれた胃袋のはキツかろうと黄身にうどんをくぐらせて、食す。

 うどんも食べ終わった所におにぎりを投入。

 お父さんの目が見開いたまま凝視する。

 そう、俺はクッカーをまた火にかけておにぎりをホロホロと崩し今度はとろけるチーズをパラリとかけて米がスープを吸い込み、チーズがとろけるのを待って……

 食す。

 いくらガン見してこようともこれは俺の飯だ。

 羨めおっさん。

 あんたには嫁と可愛い子供がいるじゃないか。

 朝早くここまで運転して疲れた体に鞭打って初めてのキャンプを楽しもうと盛り立てる家族と友人か?があるじゃないか。

 いくら今胃袋は俺の飯を求めていようがそれ以上のものを手に入れたんだろ?

 自分の嫁料理を大切にするが良いと完食。

 他人に羨まれながら食す飯はうまかった……

 だけどまだ少し足りない。朝五時の飯タイムでは昼過ぎのこの時間にはキツいくらいの空腹を訴えるのだ!

 仕方ないと焚き火台の薪と一緒に入れていたジャガイモを取り出す。

 アルミホイルに包んだジャガイモに箸を突き立てればすっと入っていった。

 これは十分と次に取り出したのはスキレット。

 昨日の残りの材料の牛の塊をじっくりと焼いていく。

 お隣の鳥肉とは違いあたりに漂う匂いは別格だ。

 肉厚なので遠火でじっくり焼かないと丸こげになると調節しながら焼く間におなじみ缶詰のおつまみシリーズより牡蠣のスモークのオイル漬けを温める。スモーキーな香りも広がる上にガーリックの匂いもまた格別。オイルがフツフツして来たところで薄くスライスしたフランスパンの上に乗せて食す。

 気がつけばお隣さんの奥さんまでガン見していた。

 ジャガイモにもバターを落として食す。

 ジャガバター最高!!!

 誰だよこんな無敵のコンビを見つけたやつわと今度はオイルにもちょんちょんとつけて食べる。

 もう至福でっす!!!

 余裕あるキャンパー上級者と言わんばかりに優雅に焚き火の傍に座ってペーパーブックを広げる。暑さなんて関係ない。この絵面だけが必要なんだよと我慢するのもおしゃれに求められるものだ。もちろん話しかけられにくいように洋書をチョイス。当然中身は別物で日本語のミステリー小説だ。

 小説を読み、トングで肉の焼き加減を見ながらひっくり返していればお隣さんのバーベキューはしっかりと焦げていた。子供は気にせず湖で他の大人達と一緒に大盛り上がりで遊んでいる。料理番の二人も大騒ぎだ。

 それを気にせず程よい焼き加減だろう肉をナイフで切り取りながら口へと運ぶ。

 サイコーでっす!

 飯田さん仕込みの焼き加減の感覚と塩加減は俺の食事を確かに豊かにしてくれた!

 綺麗なサシの入った牛肉は厚めに切ってもとろけそうに美味しく、でも表面のさくっとした食感はまた次につながる歯触りで、無限に繋がるコンボがここにあると、缶詰残ったオイルに付けてもまた美味しく食べれる食事をひたすら堪能するのだった。

 たとえ最後まで稚魚しか釣れなかったとしてもだ。

 

 満腹になり、釣り道具も片付けて夕方を迎える前に早々に退散した俺は暗くなる前に家にたどり着いて洗濯物を取り込み烏骨鶏達を小屋へと入れる、なんて事のないいつもの生活に戻るのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ