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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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生まれ変わりは皆さまとご一緒に 2

「それにしても結構量がありますね」

 山のような合板、石膏ボードやスタイロフォームが積まれていた。

「まだまだ足りなくて何度か往復しないといけないが。

 水曜日に茅を下ろしてすぐに屋根を貼る。ここは霧が深いから部屋が湿気る。上棟式はしないんだろ?だったらすぐに屋根を上げるだけだ」

 内田さんはそう言って作業重視だと言う。

 リフォームでも家相やなどを気にする人はするらしいが、あくまでも離れのゲストハウスとしての使用方法としか考えてないので生活重視の場でもないので省略させてもらう事にした。とは言っても茅を下ろすのに沢山の人が来てくれるのだ。その人達に振舞うお昼位は用意しようと飯田さんと話をして用意してもらう事にしたら小山さん達もやってくると言ってくれた。それに当り先週には烏骨鶏達を猟友会の人にお願いして……凍らせてもらった物もあるし鹿の肉も猪の肉も用意してもらった。

 飯田さんは準備の為にいつもより早く今夜には来ると言ってくれたがいつになるかはわからないけど。その時に肉を受け取って来るからと抜糸したとはいえ俺の体を気遣ってくれている。

 メニューも考えてきてくれるらしくすべてお任せだ。むしろどこか喜々として言ってくれたのが頼もしいと言うべきか悩んだものだが放っておくのが一番だろう。この件に関して俺は財布を持って待機をしていればいいだけの懸案なのであえて口を挟む危険は冒さなくていつもりだ。

「それはさて置き、お前ら荷物降ろすのを手伝ってこい。

 陸斗は怪我があるから先生とこっちでマンツーマンで勉強だ」

 言えば少し寂しげな顔で陸斗は従順に家の中に入って行くのを誰もが寂しげに背中を見送っていた。

 あばらと利き腕でないとは言え腕にひびが入っているのだ。重たい荷物を持つのは以ての外でいかに健康が素晴らしいかと判る瞬間でもあった。

「内田さん、社会勉強としてこいつらを使ってください!」

「ああ、じゃあ遠慮なくお借りしますよ」

 純粋に勉強から逃れられると喜んで山道のハイキングの疲れなんて無視をして俺は工具箱から軍手を持って来て洗面所からタオルもついでに持って来て全員に配って内田親子の手伝いを始めるのだった。

 まずは車から荷物を降ろす作業。浩太さんの指示で水野達三年が受け取って二年と一年に渡す。えっちらおっちらと小屋へと運び入れれば内田さんの指示に資材を置いて後はその繰り返し。車から降ろした後は三年三人を連れてまた資材を取りに行く。その間前回作りかけのトイレを直していた。新しいトイレは設置した物の扉がまだ外から出入りする状態だったので家の中に扉を作らなくてはいけない。既に家の中側の壁は取り外されているので柱を綺麗に電動サンダーで磨けば瞬く間に新品のように綺麗になり、艶やかな輝きに誰もが感嘆の悲鳴を上げていた。

「元の素材が良いから何度でも甦る。今時の家だと難しいがな」

 何処か寂しそうに、埃をブロワーで掃きだして外に続く扉を外し、同じように柱を綺麗に磨き上げていく。既にトイレの便器と床は綺麗に取り換えられていた。壁はまだ土壁のままだったが枠を作りスタイロフォームを張っていき石膏ボードを張って行く。もともとこの小屋のトイレは男性専用と和式トイレが二つあり、別々に扉も付いていたのだ。それを折角だからと新しくするのと同時に一つにしてトイレの間取り自体を大きくしたのだ。

 広いトイレと言うのもなんだがしっかりとトイレットペーパーの予備を置く場所も掃除道具を隠す場所も確保できたし、この寒冷地ならではの水道管からの水抜きをする場所も確保してある。冬になれば室内でも氷点下になる水道管を破裂させるわけにはいかない。一応寒冷地必須のヒーターはしっかりと通してもらってるが信用がないのが二メートルもの雪が積もる寒さの怖い所だ。

 俺はビデオを構えて高校生達が手伝う中流れ作業のように指示を出して休む事無くビスを止めて行く内田さんを写していた。カメラなんて気にせずに補強をしながら壁を作って行く。勿論トイレにも断熱材をしっかりと入れて明り取りの窓を付ける。当然換気扇も。窓を開けれる季節は限りあるからね。

 瞬く間に作り上げる様子を手品でも見るかのような高校生達は手伝いながら食い入るように見て居た。そして俺は……

 ビデオカメラを呼び寄せた陸斗に持たせて取り方を教えていた。

 先生は仕方がないと言う様に苦笑しながら自分の手でお茶を淹れて一人啜っていたその隣に俺も座って

「何で俺達はトイレを見つめてるんだか」

 苦笑が止まらない。だけど

「こうやってトイレが作られるところを見れば綺麗に使おうって言うもんよ。

 案外早く作れる物ね。先生の家のトイレも大小なんて必用ないから一つにまとめて貰ってもらおうかな?」

「掃除も楽だしな」

「そう!そこなんだよな!」

 二つのトイレの掃除は想像以上に手間だ。一つで済むならそれに越した事がないし、一人暮らしで誰に気遣うと言うのも一番声に出して言いたい所なのだ。もっともそう言う所に気を付ける事が大切なのだろうが生憎そこまで自分の住処に手間暇をかけようと言う気はない。使い捨てのウェットシートで床をささっと拭いて完了。勿論タオルも替えるぞ?

 いいか男共よ。

 トイレ掃除をさぼりたくば小も座ってしろ。

 それだけでトイレは格段に綺麗に扱う事が出来るのだ。

 自分の物に抵抗がありトイレ掃除をさぼりたくばそれぐらいの意識改革をしろ。

 俺は母屋のトイレが新しくなり、バアちゃんが他界して正面から向き合う事になったこの問題にもっさりと積もった綿雪のような埃を見て秒で受け入れたぞ。

 男のプライド?

 スウェットとジャージ、時々ジーンズが基本の俺に皺になって困るズボンはどこにもない。まぁ、来客は仕方ないと思うもそれでも日々の掃除がそれでひとつ楽になるのだ。そんな#物__プライド__#掃いて捨ててやると一人暮らしを始めた後輩に相談された時にぽろっと話してみたら即採用された為に間違いはないと信じてる。えー?と思う奴らは実家暮らしかまだこの発想に辿り着いてない者達だと俺の中では完結している。

「先生の家もトイレ変えようかな?」

「先生のとこだと配管工事に壁も床も全部手が入るから総額六十万コースだな」

「先生のボーナスでも足りないじゃん。世の中金次第何て」

「とは言っても先生んところは下水通ってたはずだろ?ここに比べたら断然ましだぜ」

「そこは街中でありがたいと思うわよ?」

「冬が来る前に汲み取り頼まないとな」

 一人暮らしなので冬の前と終わりの年二回頼む事にしている。

 そんなトイレ談義をしている間にトイレはあっという間に壁が出来てしまった。

 クロスや電気系統はまだ何もできてないがそれでも着実に今の時代のトイレへと生まれ変わって行く。

 先に敷き詰められた真新しいクッションフロアは既に埃まるけだがそんな物ウェットシートで幾らでも綺麗になるし受け渡しの時このままであるわけがない。

「どっちにしてもトイレが新しくてきれいだって言うのは嬉しいな」

 たとえ自分が使わなくてもだ。

 やがて遠くから車の音が聞こえて外を覗きに行けば新たなスタイロフォームと石膏ボードを積み込んでやって来た浩太さんがいた。トラックには三年ズも乗り込んで降りた時は何やら既に全身埃まるけだった。こき使われてるなと思うも既に慣れた様に荷物を下ろしてまた資材を取りに行く。

「あいつら元気だな~」

「ここに勉強しに来たの忘れちゃねーだろうな。

 まぁ、夜はたっぷり時間があるから。体育の時間だと思って体を好きなだけ動かさせてやる」

 ふふふ……と、どこか疲れた様に見守る先生はどうせこうなると思ったと呟いているがそそのかしたのは先生だぞと盛大に心の中で突っ込んでおいた。 

 




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