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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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生まれ変わりは皆さまとご一緒に 1

 学校以上の勉強漬けの合宿を一日体験した一年生は二日目の早起きに苦戦したものの直ぐにこの環境に慣れた様に朝から上島兄弟に連れられて畑に収穫に出かけていた。いや、まだ寝ぼけているようだから朝日と言うか早朝の冷たい空気に当てて目を覚まさせている。

 昨日は夜遅くまで大騒ぎしていたようでばたばたと家の間取りでは決して移動できないような距離の足音が響いていたが、怪我がなければ放っておくし、屋根から落ちたら自業自得だとお帰りしてもらうしかない。とは言え一人朝ぶろに入ってさっぱりしているおっさんもとい先生は野沢菜とワサビでお茶漬けにしてさらさらと食べて既に食事を終えていた。普段家で食べて居るメニューと変わらない食事を続けるあたりマイペースだった事を疑わずにはいられない。目の前の高校生達と言うか水野は朝から豚汁をみて

「冷凍うどん貰っていいですか?!」

「セルフでどーぞ」

 朝ごはんは俺が作っているので安心して食べるがよい。

 水野の料理の出来はギャンブルなのにこう言った事はいち早く頭が回る。その様子を見て植田、上島の三年チームはどんぶりを持ち出して来て他にも食べるか聞いている。この様子じゃ全員強制だなと全部食べてくれるなら構わないと朝からヘビーなメニューを作っていた。勿論こんなにも食べれないと陸斗や同じ一年の下田辺りも顔を引き攣らせているものの周囲の雰囲気で気が付けば完食していた。もっともお替りする猛者もいたが残念な事にうどんの玉は数があるのだよ。物足りなさそうな顔なんて無視をして俺はいつもの通りご飯を豚汁でさらっと頂き、山のようなキュウリやトマトを切っただけのサラダも食べて行く。高校生たちの食事風景を見てよく朝から食べれるなと感心すれば先生は散歩に行ってくると言って生徒を連れて坂の下の宮下商店まで往復すると言う。それを聞いて宮下に連絡を入れて着いたらお水を飲ましてくれとお願いだけはして置いた。

 そして散歩に出かけた隙に掃除と洗濯を始め、終わった頃に帰ってきた一行の手にはビニール袋がぶら下がっていた。

「なんだそれ?」

 聞けば

「向かう途中連絡が入って花畑のお花を摘んできてくれって言われて皆で株元から千切ってもってったらお駄賃ってもらいました」

 みんなの片手にはペットボトルと駄菓子が幾つか。

「道路沿いの花が入用だったんだと」

 先生もきゅっとペットボトルのお茶を飲む。

「ああ、お盆近いからね」

「って言うかそれでいいんですか?」

 葉山の言葉に誰もが確かにと思うも

「一応うちの土地だが手入れは宮下のおばさんがしているし。耕して種をまいて肥料をやって山水の水路を上手く入れ込んだのもおばさんだし」

「宮下のおふくろさんやるなぁ」

 水やりは一切せずで問題ない畑を作り上げていた。

「この近所だとどの家もみんな庭で仏壇用の花を育ててるかもしれないけど墓参りの花なんてもう少し先に用意するつもりだったんだろうけど、お盆のシーズンみんな旅行に出かけるから一足早くってなると時期が読めないってぼやいてたからな」

「仕入れはギャンブルだからな。用意して全部売れないっていう時もあるから。それなら自分で育てて用意すればいいって言う根性宮下に学んでほしかった」

「宮下はあれでいいんだよ。

 邪魔な葉っぱを外して色んな種類の花を合わせて束にして立派な売り物っぽく見せるセンスはおばさんにない」

「まぁ、かなり残念なセンスだからな」

 何で年に一度のお盆で榊と菊の花、しかも黄色だけしか用意しないとツッコミを入れたいのは山々だが、この近辺の人はそのセンスをずっと伝える事が出来ずにウン十年過ごしてきた。

 もっとも俺が他の色の菊を入れないの?と聞けばこの時期持ちが悪いからねぇと消極的な返答。

 なので最高気温三十度の山で宮下に育てさせればすぐにおばさんが仕事を取り上げていた。それはそれは楽しそうに色とりどりの花を植えるも残念な花束を作り上げるセンスに宮下に任せる事にした。勿論好評で帰郷してきた人達が買ってくれたり、普通にお土産としてお買いいただけるアイテムとなっている。

 宮下家の庭は駐車場にして潰しちゃったからね。余分な土地はジイちゃんが買い上げたからね。花を作る庭ないからね。ご近所がかなり遠くても人の目の多い店だからおおっぴらに作ること出来ないからね。

 そんなわけで道沿いの草刈りの手間を省く代わりに花壇となり、吉野さんの家の曲がり角どこかしら?という質問にはあそこの蕎麦畑とお花畑を通った先だよと言ってもらえるようになりました。

 年々拡張されているような気はするけど対雑草とおばさんの生きがいとなってるならいいかとビニール袋の底には手作りの漬物があり、ありがたくお昼に頂く事にしよう。

 帰って来てやっと勉強が始まる頃内田さんがやって来た。

 トラックには沢山の資材を積んで

「おはようございます。皆さんもう勉強の時間ですか」

 妙にやつれた顔の浩太さんが無理やりと言う様に笑顔を作って挨拶をしてくれた。昨日の話しを俺から聞いた先生はのんびりとした顔で

「さっき食後の運動で宮下商店まで行って帰って来た所なんですよ。

 足もくたくただろうし大人しく座らせるには一番ですので」

 意外な事に先生はけろりとした顔で笑ってへばっている奴らを見て笑う。夜は自堕落な生活をしているが意外な事に一人山歩きを楽しんだりしている先生を俺はこの人って一体なんだと何度頭を悩ました事か。先生にはこの山の散歩道があるらしくどういうルートか知らないけど途中の岩場で休憩して弁当を食べて帰ってくるのが散歩コースらしい。当人曰く

「街中じゃ運動らしい運動なんて出来ないからな」

 そう言って熊の居る山の中を散歩するのはどうなんだろうかと思うも一応小さな斧と鉈は持ち歩いていると言う心強いのか不安しかない言葉を信じる事にする。裏山を歩くと顔に当りそうな枝が落した後があったり密集して生えそうな若木が切られていたり、落葉樹でもない木の下に落ち葉が敷いてあったりとどこか歩きやすいので山の手入れをしてくれているのかと少し有り難く思ったりしている。

 決して松茸の群生地を探しているとは思ってない。

 同じ村の人達にも秘密にしていると言うか木を見ればばれるかもしれないが我が家の山のどこかに確かにあるが、生憎裏山から行ける場所ではないし今はまだシーズンでもない。俺は一応場所を知っているがあまり行きたいと思わない場所なので年に何度か手入れに行く程度に留めている。先生には見つけたら食べていいよと言った覚えがあるが、まさか今も探しているとは考えないようにしている。






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