2020年4月19日 自転車の日
2020年4月19日
衣玖「今日は自転車の日なんだけど……今日ほど制定の理由が謎な日はあまりないかも。どんな理由でしょうかっ」
留音「なんだ、突然のクイズ形式か?……普通に自転車が出来た日、とか……ではないってことだよな」
衣玖「ぶー。もちろん違うわよ。もっと変な理由ね」
西香「自転車を作った方の誕生日や命日ではないんですの? それか初めて自転車が売られた日、特許の制定ですとか」
衣玖「ありそうだけど、ぜんぜん違うのよ」
真凛「うーん。自転車の形をバラすと4と1と9で出来ているように見えるとか……」
衣玖「そんな記念日もあったわね。でも不正解よ。実は薬物が関係してるの」
留音「自転車の日に?」
衣玖「そう。かつてアルバート・ホフマンという博士がLSDという幻覚剤を飲んでぶっ飛びながら自転車に乗るという臨床実験を行って幸せ気分で帰宅したことから制定された記念日なのよ」
真凛「うわぁ~、神秘的~」
西香「神秘的ではないでしょう。それはまた随分な理由ですわね」
衣玖「長いこと記念日を見てきたけど、国際的に制定された記念日の中でも1位2位の変な制定理由で面白いわよね」
留音「しかしなんだって幻覚剤飲んで自転車乗って帰ろうと思ったんだ、その博士は」
衣玖「LSDを作ったのがこのホフマン博士なのよ。幻覚作用は精神薬理学の中で見つけたみたいでね、どれくらいの幻覚が見えるのか試しみたんだって。結果『視界が揺れすぎてて自転車に乗っても前に進んでないように感じた』って書き残してるの」
西香「それは自転車の日というより夢見るお薬の日ですわね」
衣玖「もちろん別に制定されてる自転車の記念日もあるんだけどね。そっちはちゃんと自転車に因んでるわよ」
留音「それにしても、自転車の爽やかなイメージとはちょっと離れた記念日だなぁ」
衣玖「愛好家は『本当の自転車記念日は自分が乗れた日や買ってもらった日、それぞれみんな違う』って素敵な事言ってたわ」
真凛「わー、かっこいいですねぇ」
西香「わたくし、いつ乗れるようになったんでしたっけ……パパに後ろから押されて、離さないでって言ってるのに離されたことだけは今でも忘れてないんですけど……」
留音「あるあるだよなぁその乗り方。……そういや衣玖、自転車に乗れるようになったの遅かったよな」
衣玖「……」
真凛「いつだったんですか?」
留音「小学4年だったっけ?」
西香「おっっっっそいですわねぇ!」
衣玖「それまではそんなに乗ろうと思う機会もなかったから……」
留音「でもなんかのアニメ見てからは結構頑張って練習してたよな。何日も練習してたような」
衣玖「3日くらいかかったわね……でも思ったの。すいすい漕げるようになって……多分、今を生きる人が最初に得る自由の感覚って自転車にあるんじゃないかなって」
真凛「あわかったぁ! だからLSDを飲んだことで自転車の日に繋がってるんですよぉ!」
西香「どういうことですの?」
真凛「薬物を飲んで思考が自由になっちゃうことと、自転車で自由を感じることの類似性です☆」
留音「自転車愛好家に怒られるからやめとこうな」
衣玖「でも自由の象徴だとは思うわね、自転車」
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ミニーズも自転車デ―
イリス「そういえば聖美がたまに乗ってるあれ、自転車っていうの。アンジーも乗ってくるけど……」
聖美「うん」
イリス「なかなかいい道具よね。魔力もいらないで乗れるし、そこそこスピードも出てて」
アンジー「魔法界にはないの?」
イリス「基本的に6歳位から箒に乗るからね。必要ないのよ、個人用で、しかも地上しか行き来できない道具は」
聖美「確かに……イリスちゃんも箒でスイスイ飛んじゃうもんね~」
イリス「まぁね。でもこっちで行動するようになって思ったのよ、あたしも自転車乗ってみたいなって。3人で移動するときはあたしが飛んでいってポータル設置して戻ってくれば済む話だけど、あたし1人でこの街を探索するときは自転車だと都合良さそうだし」
アンジー「あー。今って飛んで降りてってしてるもんねぇ」
イリス「というわけで、ちょっと聖美の自転車乗らしてもらっても良い?」
聖美「いいけど……初めてで乗れるかな?」
イリス「練習が必要なの? 簡単でしょ、箒だって簡単だったんだから」
というわけで公園へ。
イリス「わわわ、わわー!」
もちろん補助輪の無い自転車に初挑戦のイリス。横から転げ落ちそうになるのを、魔法でなんとかギリギリ体勢をキープして地面に足をついている。
アンジー「初めはねこうだよね~……。よしわかった、ボクが後ろから支えてあげるね」
イリス「は、離さないでよ!? 絶対離さないでよ!?」
聖美「(はぁー……あったなぁー……)」
何歳児かとパパにありがちな光景に聖美はほのぼのしている。
アンジー「スピードついてきたら離すから、漕いでバランス取るんだよ~」
イリス「やっ、まっ、まって!! やー!!」
イリスは地頭的に動いてしまうペダルに足をのせているがハンドルは細かく左右に振れている。アンジーは後ろから自転車を押し、走って加速させる。早いほうがバランスは取りやすいのだ。
アンジー「行くよー! 離すよー!」
イリス「ひぁー!!」
そして自転車を押し出し、アンジーは距離をとった。なかなかの加速である。イリスは叫びながら。
イリス「あぶなっあぶなっ! 転ぶー!」
そのまま自転車に魔法をかけて飛んでいってしまった。
アンジー「ETー!」




