2020年4月20日 『聴く』の日 一見、悪徳に見えてただ友だちになることを勧めているだけだけどやっぱり悪徳な西香
2020年4月20日
西香「どうぞここに座ってくださいまし」
あなたが街を歩いてた時の事だった。急にとても可愛い女の子に声をかけられ、近くのレストランに連れられたのだ。
西香「一緒に来てくださってありがとうございます。わたくしの名前は西香と申しますわ。ささ、何か飲まれますか?」
あなたは『じゃあコーヒーで』というと、その女の子、西香も「まぁ奇遇っ」と可愛らしく手を叩いて、アイスクリームの乗ったクリームメロンソーダを頼んで「同じ伸ばし棒が2つついた飲み物ですわね」と微笑んでいる。可愛いのだが、奇遇だったのかはピンとこない。
西香「それで、ですね……わたくしがあなたに声をかけたの、なんでだかわかります?」
あなたは首を横に振る。
西香「あなたね、とっても悩みが多そうに見えますの。どうですか?」
心当たりが無いわけではない。悩みなんてつきないものだ。それを読み取られたらしい。
西香「ですわよね? わたくしも日々大変ですから、とってもよくわかりますわ。でもあなた、しっかり毎日生きていて偉いですわね。そうやってちゃんと息もしてらして」
西香はかなりの美少女だ。美少女にこんなことを言われると正直照れくさい。でも他に褒めるところはなかったのだろうか。
西香「何か楽しいことを見つけて懸命に生きてらっしゃるんでしょうね。わかりますわよ。何かに熱中したり……で、もぉ……」
そこに一瞬の間が置かれ、あなたは少しだけ気を引き込まれた。それから西香は小声で、他の人に聞こえないようにこう言った。
西香「お手軽に、もっと楽しく、幸せになれてしまうことがあると言ったら……どう思いますか?」
ヒソヒソ。西香はあなたにそう言いながら、目の奥でニタリと笑みを浮かべているのを感じ取ったあなたは少し気持ちで距離をとった。
西香「これね、あなたの周りでもですね、やってる方、多分そこそこにいらっしゃいますわよ。なんと言ってもみんな知ってる事、小学生や幼稚園でもしてる子はしてるような事ですからね」
訝しむあなたの表情を見た西香は首を横に振りながら答えた。
西香「なんにも! なんにも怪しいことなんてありませんのよっ! これね、やるだけで人生が楽しくなって幸せになるって大抵の人が言いますの。それに初期投資もかかりませんし! ……それでしかもですけどこれ……」
西香は再び小声になり、今度は手を口に当てて、他の人から口の動きが見えないように、あなたに声が届くように壁を作って一言。
西香「完全に、合法なんですのよっ……」
それから続けて畳み掛けるように語り始める。
西香「そんな簡単に毎日が幸せに、楽しくなれてしまうことがありますの。あなたみたいに頑張ってる方にはね、ぜっっっっっったい!! 良いことですわよ。これは絶対ですわ絶対。なんと言ってもね、これをやった方は大抵言うんですの、やる前とやった後じゃ人生が全然違うものになるって……!」
怪しいものを勧められているのではないだろうか。相手はこんな美少女だ、裏を疑ってしまうものである。
西香「もちろん、多少はコストもかかります。でもですよ、それをすることで人生に彩りが出来ます。それに毎日のように美少女の横を歩けるかもしれません。街を歩いていて羨ましがられることも増えるますわ。わたくしね、あなただからこそ声をかけたのです。……どうです? 気になってきましたでしょう?」
一体何なのかと、あなたは核心をつく。そうすると西香はあなたの方へと身を乗り出してこう言った。
西香「……わたくしと、お友達になるんですの」
あなたは目を丸くして聞き返す。「友達?」西香はニコリとうなずいた。
西香「わたくしとお友達になればですわよ? それはもう一緒に街を歩いたり出来ますでしょう。それに毎日わたくしと遊べて楽しいですし、どこかへ二人で遊びに行ったり、ね、色々出来ますでしょう。わたくしの周りにもお友達を作ってる方とかいらっしゃるんですけどね、やっぱりお友達はいいな~、楽しいな~って言ってますの。どうです? あなたも人生変えてみませんか?」
それから小声で「いるかいないかで、人生大きく変わるそうですわよ、お友達」そう言った
じゃあ、最初から自分と友だちになりたかっただけなのかとあなたは尋ねた。するとうなずいた西香。あなたは彼女の事を知らないが、なんだか楽しそうな子だと思い、じゃあ友達になってもいいよとうなずく。
西香「まぁっ! よかった。でしたらこちらの……」
西香は脇においていたバッグを漁ると紙の束を取り出した。
西香「こちらのお友達誓約書の方にサインを下さいますか? 普通のコトしか書いてありませんので読まなくても良いのですけど、まぁ読んでくださっても大丈夫ですわよ」
あなたはこんなものなくても友達になるのに、と苦笑いしながら言うのだが、ちらっと見やった内容にその目を疑った。読み上げたあなたの言葉に西香は首を傾げながら答える。
西香「わたくしがお友達になって差し上げるのですから、わたくしのご機嫌伺いするのは当然でしょう? え? お土産? はい。わたくしに会うときはお土産持参は当たり前でしょう、だからさっき言ったじゃありませんか、コストは多少かかりますわよって。でも安心してくださいな。わたくしが隣を歩いて差し上げますから、こんなに美少女が隣を歩いてくれるなんて誇らしげな気持ちになりますでしょう?」
どれもおよそお友達、とは思えない内容ばかりであった。お友達料金が月額と合う日、時間ごとにも決められている。それにいつの間にか、ここでの支払いの伝票まであなたの脇に置かれている。お友達誓約書には「甲は乙の代わりに全ての交遊費を支払う」とある。あなたのコーヒーは150円、西香のクリームメロンソーダは400円する。
あなたは席を立ち、逃げるようにその場を立ち去るのだった。
西香「あぁちょっと!! お友達契約がまだ! 世界が変わるんですのよ!? というかわたくしの世界を変えて~~~!! ……チッ、またお友達候補を逃しましたか……何故誓約書を出した途端に、ってアァッ! わたくしのクリームメロンソーダの代金も払わず消えやがりましたわ!!」
今日は『聴く』の日。コーチングのプロが制定した『聴く』ことで応援しようという日だが、変な言葉は聴かないように注意しよう。




