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第二話

「ハッ?!」


 誠はベッドの上で目を覚ました。


(いつの間にか寝て……。あれ?えと……)


 寝起きでいまいち働かない頭を無理矢理働かせ考える。


「あ、そうだ……ぴ、ピエロ!」


 慌てて上半身だけ起こす。

 窓から日が差し込んでいることに気づいた。


「朝ってことか?」

「そだねぇ、お前さんは大体十八時間ほど寝てたかな?」

「うわぁ……恐ろしい寝坊だ…な……」


 誠はベッドの上で身体を右に向ける。


「はいおはよう。君の家ってなーんもないねえ。まさか今時の子は料理もできないのかなぁ?」


 人を小馬鹿にしたようなテノールボイス。

 真っ黒の燕尾服とそれが似合うやたらと高い身長。

 オールバックにして肩まで垂らしている銀色の長い髪。

 真っ白のドーランに毒々しい色の化粧を施した顔。


 誠が気を失う直前に見たピエロが立っていた。


「おおおまっ!おまっ!おまままっ……!」

「あーうるせえクソガキ。あーあ、こんなんでも後継者ってのが気に食わねえ」

「な、なんなんだよ!後継者ってなんだ!っていうかお前誰だって何回言わせるんだ!警察呼ぶぞ!」


 誠が叫んでいるが、ピエロは無視してその場に胡座をかいて座る。


「あーあーわかったよーだから黙って動くな(・・・・・・)


 その瞬間、誠は口を閉じて黙り、ピエロを指差しながらベッドで後退りをしている状態で固まった。


「そーだな、まずは自己紹介から……」


 そう言ってピエロはまた立ち上がる。


「初めましておはようございます。私の名前はエトゥウヌム・ソルムと申します。呼びにくければそうだなぁ……エトとかソルムでいいぜ。よろしゅうなぁ」


 そう言ってピエロ……エトゥウヌムは右手胸に当ててお辞儀した。


「さーて。えー俺様の正体だがその前に。君はこの本をどこで手に入れたのかなぁ?」


 そう言ってエトゥウヌムは、誠の机の上にあったはずの本を左手で持って、右手で指をさした。

 その質問に答えない誠。


「あ、わりーわりー」


 そう言ってエトゥウヌムは右手の指を鳴らした。


「っっ?!今何をした?!」


 誠はこたえなかったのではなく、答えられなかったのだ。


「うるさいから黙らせた」


 エトゥウヌムはそれがなにかと言いたげに告げる。


「なんなんだよ……」


 とつぶやいて目を見開く誠。

 軽く鼻を鳴らしてエトゥウヌムは続ける。


「さっきも聞いたんだけどさあ、この本はいつどこで手に入れたのか聞いてんの。理解できてますー?」


 また黙ったままの誠だが、エトゥウヌムが何かしたわけじゃない。

 恐怖で何も言えなくなってるだけだ。


「めんどくさいなあ……。じゃあこの本について話すから、それ聞いたらお前も話せよ?」



 *****



「この本は魔導書と言うものだ。役割は魔の操り方を後継者たる魂を持つものに伝授すること」

「……魔導書?」

「そ、魔導書。」


 そう言いながらエトゥウヌムは魔導書を机に置いて、またその場に胡座をかいて座る。


「ただ魔導書っつーのは読むものじゃあない。そもそも魔導書とは何か」


 エトゥウヌムは両手を上げた後、両手の親指で自分を指差した。


「魔導書とは私自身なのである。ドヤッ!」


 誠はエトゥウヌムの話にほとんどついていけてなかった。

 魔導書だとか、魔の操り方だとか理解の範疇を超えている。


「あー全く理解できてないねぇ」

「ああ当たり前だろ!おそらくその魔導書とやらは本物だろうが、まず僕はそれを認めたくない!大体、僕は今怖くてたまらない!それはお前の顔だ!なぜピエロだ!しかも服装と髪型に合っていないぞ!大体あの暗闇はなんだ!わけが分からなすぎて頭が痛くなる!勘弁してくれ!」


 誠は話し始めると、まくし立てるように一気に不満をぶちまけた。

 エトゥウヌムはそれを黙って聞いた後、誠に言った。


「君、いつまで指差して後退りの途中みたいな格好でいるの?疲れない?」

「動けないんだよ!お前が何かしたのだろ?!治せ!」

「あ、さっき解くの忘れてたわーめんごめんごー」


 言いながら右手の指を鳴らす。

 誠は身体がようやく動くようになったことと、さっき怒鳴ったことで少し冷静になることができた。


「催眠術の類か?」

「魔だっての」

「ま?」

「魔。この世界に存在はしているものの通常は感知不可能。物質であり概念そのもの。それが魔」


 誠はせっかく動くようになったにも関わらず、ベッドに座り込んだまま、呆然とエトゥウヌムのことを見ていた。


「ギャッハッハッハッ!その顔チョーウケる!!まあ、あとでその辺は詳しく話すとして……。それでこの魔導書と言うものは俺自身と言ったことについてなんだがな。この魔導書に記されているのは俺様自身のこと全てが書かれている。何故ならばこの魔導書は俺様自身を材料に作られているからだ!」


 胡座の状態からピョンっと飛び上がり、着地同時に仁王立ち。


「……あれ?拍手は?ねえねえ拍手は?」


 まだ固まったままの誠。


「あのさぁ……さすがにもういいでしょ……。どんだけ固まってんだよいい加減にしやがれクソガキ」


 だんだんと苛ついてきた様子のエトゥウヌムは、頭を掻きむしったあと、


「あーもう!わかったよ!また出てくるからその時にまた話すからね!その時までにちゃんと整理つけときなさい!」


 そう勝手に叫んだ後、コルクが抜けるような音と共にエトゥウヌムは消えた。

 誠は座り込んだまま、エトゥウヌムが消えた場所を見続けた。




 エトゥウヌムが消えて約三十分。

 ようやく動き出した誠は台所に行き、コップに水道水を入れて一気に飲み干した。

 そのままコップを流しの中に置き、目をつぶって一度大きく深呼吸。


 そして目を開いた誠は先程までの誠とは別人のような顔になっていた。



 誠はまた部屋に戻り、机の上の魔導書を手にとる。


「出てこいピエロ!話を聞かせろ!」


 魔導書に向かって叫ぶ。

 すると、誠の後ろでコルクを抜いたような音がした。

 振り向くと、エトゥウヌムがやる気なさげに誠のベッドに寝っ転がっていた


「おーおーお早い復帰おつかれーっす。おちついたよーでなによりっすー」

「おいピエロ、話してもらおうか」

「えーまた最初から話すのー?」

「さっきまでの話は全て覚えている。続きを話せ」

「嘘でしょ?!あんなボケッとしてたのに?!」


 嘘ではない。

 確かにあまりにも超常現象が続いてパニックになってはいたが、冷静なれば言われたことは、


『誠は魔導使いになれる魂を持っている』

『魔導書は魔の使い方を教える物』

『魔導書はエトゥウヌムと同一存在』


 たったこれだけなのだから。


 エトゥウヌムは誠に目を合わせて見つめ続ける。

 誠はそれをじっと受け止める。


 ほどなくして、


「わかった。説明するからよーく聞け。あと話を聞いてからやっぱ無理ってのは無しな」

「はあ?!どういうことだ?!」

「お前魔導書の手形に手を置いたろ。あれ契約印みたいなやつだからさ」

「ふざけるな破棄させろ」

「いいけど死ぬよ?そういう契約になってるから」

「なんでだ?!」

「そうでもしないと後継者って作れないんだよねぇ。俺も最初はそうだっだよ。騙されてさぁ。でも結構いいもんだよ魔導使いって。ま、諦めろ!」


 陽気に話すエトゥウヌムの笑い声を聞いた誠は、


「もう……なんでもいいから話してくれ……」


 諦めて話を聞くことにした。

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主にこちらを書いています。転生した主人公があまり周りを気にせず生活していくお話です。

これといった山場があるわけではないですが、のんびり暇潰しにどうぞよろしくお願いします。

転生しました。

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