第一話
サブタイトルは今のところ考えずに書くことにします。
この街の図書館はとても大きな書庫がある。
誠はその書庫が大のお気に入りだった。
一生かかっても読みきれるかわからないほどの蔵書数のその書庫は、誠にとってはくだらない世界にあるささやかな楽しみであった。
今日は美空が自由研究に必要な資料が欲しくて、図書館に行くことにしたが、誠が入り浸っていることを知っているので、一緒に探してもらうことにしたのだ。
もちろん即了承したのだった。
「あっつい……」
「そんな長袖着てるからでしょ。脱げばいいのに」
「だが僕は日に焼けたくない」
「少しは私みたいに日に当たらないと駄目だよ」
「神崎の場合は少しではないだろう。陸上部はどうだ?」
「うん、またタイム伸びたんだ!先輩にも褒められたんだよ!」
「そうか、よかったな……」
美空は陸上部に入っている。種目は短距離。
実はかなりの速さでレギュラーになれそうなのだが、彼等の学校はかなりの強豪校で、まだ美空は補欠だ。
誠は密かに応援している。
そんな美空はいつも部活の話になると、同じ部活の先輩の話を必ずと言っていいほど話す。その先輩がただの先輩ならいいのだが、如何せん見た目はいいし、誠ほどではないにしても頭が良く、美空と同じ短距離で全国大会では二位になるほどの足の速さを持つ男なのだ。
そう、男。
何度も言うが、誠は美空に好意を持っている。そんな相手が嬉しそうに話す先輩のことを誠は、話したこともないのに勝手に嫌っている。
「それより!それよりアレだ!あーテーマはなんだったっけ?」
「急に大っきい声出さないでよもう……。えーとね、この街の古地図から見る歴史って感じかな」
「なるほど、わかった」
そんな話をしながら二十分歩いて、図書館についた。
「資料の場所はわかるから僕が取ってこよう」
「えーいーよー。そのくらい自分で取りに行くって」
「いや僕が行く」
こうなったら聞かないことを知っている美空は誠の言うことを聞いて大人しく机で待つことにした。
誠はすぐに書庫の古地図コーナーに行き、必要そうな地図帳等を引っ張り出した。
そして、すぐに持っていくつもりだったが、折角だからと自分の読みたい本があるところに行く。
それは天文学コーナーだ。
彼は未知というものが大嫌いであり大好きである。
その中で宇宙と深海、特に宇宙に関して凄まじい執着を持っていた。
そんな彼の夢はやはりと言うべきか、宇宙飛行士になることである。
あまりゆっくりもしてられないからと、パーっと眺めてまだ読んでいない所から、背表紙を見て決めようとする。
その時ふと、一冊の本に目を留めた。
その本は真っ黒で、他の本のように背表紙に図書館特有のシールが貼っていなかった。
背表紙の文字も擦り切れて読めない。
なんとなく、ねずみ色で何かが書かれていたのではと感じる。
そして明らかに他の本よりも数段古いと思われた。
興味を持った誠は、明らかに古い本のため、持ってた資料を置いて、両手で優しくゆっくりと引き抜いた。
「何度もここに通ったがこんな本初めて見たな。新しく入ったのか?」
呟きながら表紙を見るが、真っ黒で何も書いていない。
裏表紙も見たがやはり真っ黒である。
「なんだこれ……。読ませる気があるのか?」
そして、何気なく開くと、
「なんだこれ?!」
ミミズののたくったような字でさっぱり読めない。
ヘブライ語か?とか考えたがいくら頭がいいと言っても勉強したことのない文字なんぞ読めるわけがない。
だが、完全に興味を引かれた誠はすぐさまそれを解読すると決め、一旦美空のとこに戻った。
「遅い!」
「すまない。ちょっと、いやかなり面白い本を見つけてな。解読しなくてはならなくなった」
「あー大丈夫だよ。この資料は借りていくから。今日は帰る」
「え、そ、そうか。わかった。なら僕も帰ろうかな」
今日は美空がいるからと一緒に来たから、美空が帰るならもう用事はなかった。
「でも、本の解読するんでしょ?」
「あーまあそのー、家でもできるからな」
「そっか。じゃ借りに行こ?」
「ああ」
二人で資料と本を持ってカウンターに行った。
*****
「よかったの?その本、誠のじゃないんでしょ?」
「いいのいいの。いざとなったら返せばいいんだ」
カウンターで資料と本を出したが、資料はすぐ借りれたのだが、黒い本は図書館のではないと言うのだ。
そして、図書館で預かることになりかけたのを、誠は自分の本を間違えて出した!と無理矢理持ち帰ったのだった。
司書さんは怪しんでいたが、渋々と言った様子で誠に黒い本を渡した。
「さあてこの中身はなんだろうな」
そんな誠を見て、美空は思わず笑ってしまった。
「なんだ?」
「いや、なんかマコちゃんって昔からそうだなあって。気になったり知らないことがあると、そんな顔で調べてさあ。全部分かると満足したようなガッカリしたような顔になるんだよね」
「よ、よく見てるんだな」
顔を背けてにやけた顔を見せないようにする誠。
「そりゃあこれでも幼馴染だからねー」
そんな誠に気づいているのいないのかは分からないが、美空はそう続ける。
「あ、着いた。じゃあね!今日はありがとう!」
「ああ、また何かあったら手伝うぞ」
「うんお願い!」
美空の住んでいる部屋は一階。
誠は三階だ。
誠がエレベーターに乗って扉が閉まるまで、美空は待っていた。
美空は扉が閉まり、ランプの二のところが光るのを確認してから、部屋に戻らずにアパートから出た。
*****
「ふっふっふっー、さあ一体何語だあ?」
と張り切って調べはじめて既に五時間が経過していた。
「なんなんだ!この本は!」
結果、表紙をめくった所に手形のような模様が書かれていることくらいしか分からなかった。
法則もへったくれもなく、誠は既にただの落書きにしか見えなくなっていた。
「はぁぁぁぁ」
大きなため息をついた誠は、もう日が完全に落ちていることに気づいた。
「飯でも食べて頭をリセットするか」
椅子から立ち上がろうとしたが、ずっと座っていたからか、少しよろめいた。
その時、開いていた本の上に右手をついてしまう。
「あ、やば!破れてないよな……」
慌てて手をどかして本を持ち上げようとしたが、それは出来なかった。
なぜなら誠は、
「あれ?」
気がつくと周りが真っ暗な空間にいたから。
「なんだここ……?さっきまで……部屋にいたよな?つかなんで真っ暗?でも、手がみえる……って全裸?!」
何故か全裸で。
(暗闇だが身体が見えるなんてことはありえてはならないが……現に今自分が体験している。つまり何かしら原因があるはずだ)
そこから誠は脳みそをフル回転させようとする。
が、
「次代はなかなか面白い逸材ジャーン?」
「?!」
突然聞こえた声に思考を中断させられた。
「フムフムフーム……、お前かなーり見込みがあるねぇ。うんいいよいいよぉー。後継者に相応しい魂だ」
「誰だ?!」
「おいおいおいおい、誰だとは酷い言い草じゃねえのクソガキ。どちら様ですか、だろ?」
誠は見回すがやはり暗闇だらけ。
どこから聞こえているのかもよくわからず、だんだん上下左右も分からなくなってきた。
「あらまあ、随分心の弱ぁいお子ちゃまだこと。ガキというのもおこがましいわねぇ」
「僕を馬鹿にするな!」
誠は必死に叫ぶが、それは内心の焦りからきてることだ。
「馬鹿にする?何を言い出すかと思えば……。フッ、馬鹿にする価値もありませんよ、貴様程度では」
口調がコロコロ変わっているが、よく聞くと全て同じ声であるが、焦っている誠は気づかない。
「一体何なんだここは?!もう一度聞くぞ!お前は誰だ!姿を見せろ!」
「あーうっさいなぁ。わかったよーもー」
誠は体感で真っ直ぐ前を見ている気でいた。
そして、
「はいどーもーこんにちはーどこみてるんですかー?」
「ッッッ?!」
突然耳元で男の声がした。
声も出せず驚く誠。
恐る恐るその方向に顔を向けると……、
「近くで見るとなかなかつまらん顔ジャーン?」
ピエロの顔が目の前に。
誠は気を失った。
非常に遅い更新ですが、見て下さり感謝です。




