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思い出の1P(ページ)の為に,

 

(タダシ)本当(ほん)に写真写りが悪かね」

 

 新垣正の母方の祖母は生前――ずっと彼に言い続けて、顔をしかめた。

 彼がトラウマとなるのは当たり前だ。

 

 そんな彼も高校卒業を控えていた。騒動はそんなおりに起きてしまう。

 


 ◆

 

 

「ぬぁんだって~~っ」

 


 彼の担当クラスの教師、女装癖のある男教諭、伊丹拓哉(たくや)が職員室で発狂に近い声を上げた。

 

 

「あ、ぅ……ですからぁ~~」


 

 長く伸ばされた黒髪の頭を抱えている伊丹に、委員長の有留(ウル)もときも「見つかりません」と歯切れ悪く告げる。

 


「卒業アルバムの写真撮影は今日なんだよっ?」

 


 わちわち、と伊丹の両手が悶える。その度、豊満に盛られた胸が震えた。

 

 

「だからでしょ」

 


 唇を突き出して有留は吐き捨てるように言う。


 

「伊丹先生もご存じでしょう? あいつの写真嫌いのことぐらい」

 

「あ、まぁ。それは歴代の担当や親御さんも言っていたしな」

 


 有留の言葉に伊丹も応える。


 彼が入学当初からの問題児で、騒動を起こしたことを脳裏に思い出す。

 

 

「なら、こうなることぐらい分かっていたんじゃないですか?」

「! なんだよっ。俺が悪いって責めるのか? 泣くぞっ、この野郎っっ!」

「いい歳なんですから……なんつぅ反撃なんスか……」


 情けない女装癖男教諭の言葉に、呆れた口調で言い返してしまう。


 いい策が卒業式の今日まで、全く浮かばなかった。いや、考える気もなかったのだ。誰も。


 

「委員長の特権で馬鹿な新垣を見つけておくれよ~~頼むよ~~」

「……とっくに探してはいますよ」

「! お、おお!! さすが委員長様だぁ~~!」

 

 

 有留は眼鏡を外し目元を拭う。


 

「異常なんスよ」

「何がだい?」

「写真が一枚もないなんてのは」



 かちゃりと眼鏡を掛け直す有留は、強い口調で吐き捨てる。


 

「ま、う、うん。そ、そうだよな! うんうんっ」

「全力で校内を探します。聞こえませんか? 沢山の声が」

「……なんか、校内がやけに騒がしいかなぁ~~とは思っていたけど」



 伊丹は目を瞑って、耳を澄ましてみる。


 すると、捜索中の彼の名前を呼ぶ声が鼓膜に響いた。


 

「みんなも同じ気持ちなんスよ」


「何がだい?」


 

 腕を高く伸ばし背伸びをした有留に、伊丹の顔が傾げられる。



「みんな一緒にアルバムの一部になりたいってのがね」


 

 短く刈られた頭部のツーブロックに指をやり、有留はなぞる仕草をする。


 

「少しばかし校内が騒がしくなりますが、目をつぶってやって下さいよ」


「教頭に怒られるな……今から反省文の下書きをしておこうじゃないの!」

 


 有留と伊丹が歪な笑みを交わした。


 

「それでは失礼をば」

「あ、ああ。うん」

「あ」

「! な、なにっ」


 

 くしゃとした笑顔をすると有留は「見つかっても怒らないでやって下さいね」と伊丹にそう訴える。


 それには「……考えておくよ」と伊丹が苦笑いして頷いた。


 

「で、お前もこれから捜索活動するからジャージなわけ?」

 

「準備運動はこれからですけどね」



 ここは名門秋月高校。魔法もない至ってシンプルな現代社会の片隅だ。

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