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私がチームを焼き尽くしたことのすべて  作者: 島流しパプリカ


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一 着任

私は、辞令が出る前から嫌われていた。


正式な発表は月曜日の十時だったが、金曜日の夕方にはもう、フロアの空気が変わっていた。

人事部長と事業責任者が、会議室「山吹」に二人で入った。十五分後、事業責任者だけが出てきて、私の席の横を通った。目が合った。彼は一瞬だけうなずき、それから自分の個室へ戻った。


それだけで十分だった。


Teamsの通知が止まった。

いつもはくだらない雑談が流れているチャンネルが、急に湖面のように静かになった。

誰かが「お疲れさまです」と書いた。

誰も反応しなかった。


月曜日、私は「北浜商事向け運用高度化チーム」のマネージャーになった。

高度化という言葉は、社内で最も便利な包み紙だった。

中身はたいてい、圧縮、移管、標準化、再配置、撤退準備のどれかだった。


誰も、解体とは言わなかった。


初回のチームミーティングは、十一時からだった。

会議室のモニターには、私が作った資料の一枚目が映っていた。


「既存運用資産の棚卸しと、次世代領域への人材接続」


我ながらよくできた言葉だった。

人を動かす話を、物を片づける話のように見せる。

痛みを、戦略の名詞に変える。

私はそういうことがうまかった。


十二人のメンバーが、長机の両側に並んでいた。

誰も遅刻しなかった。

誰も雑談しなかった。


いちばん奥に宮下さんがいた。五十三歳。北浜商事のシステムを、前身の時代から知っている人だった。白髪は多いが、背筋は曲がっていない。手元にはA4のノート。ノートには付箋が何十枚も貼られていた。


隣に北村さん。四十代半ば。顧客からの問い合わせに対する返信が異様に丁寧で、過去十年分の障害履歴をほぼ暗記していると聞いていた。


若手は三人いた。

そのうち一人、小野寺はすでに翌月から全社クラウド基盤プロジェクトへ異動することが決まっていた。本人にはまだ正式に伝えていない。だが、本人は知っている顔をしていた。周囲も知っている顔をしていた。


組織の本音は、人員配置に出る。

言葉でどれだけ「重要顧客」「安定運用」「品質重視」と言っても、伸びる若手が抜かれる場所は、未来の中心ではない。


私は資料を進めた。


「このチームには大きな資産があります。顧客理解、運用品質、長期安定稼働の知見。これは簡単に代替できません」


全員が、少しだけこちらを見た。


「一方で、クラウド、セキュリティ、AI活用、標準化という会社全体の方向から見ると、現在の業務構造には課題があります。属人性、ドキュメント未整備、技術スタックの陳腐化、社内人材市場との接続不足」


また、目が落ちた。


私は続けた。

続けるしかなかった。


「これから三か月で、業務棚卸し、スキル棚卸し、移管可能性評価を行います。そのうえで、個人ごとに次の役割を設計します」


宮下さんが手を挙げた。


「次の役割というのは、このチームの中で、ですか」


私は少しだけ間を置いた。

その間に、全員が答えを知った。


「チーム内に限りません。全社の成長領域も含めます」


宮下さんはうなずいた。

うなずくとき、首だけが動いた。目は動かなかった。


「わかりました」


会議は四十二分で終わった。

予定より十八分早かった。

いい滑り出しだ、と私は思おうとした。胃の奥が苦かった。


午後、事業責任者からメッセージが来た。


> まずは順調ですね。抵抗はあると思いますが、

> ここはやり切りましょう。


私は「承知しました」と返した。

その二文字は、いつも便利だった。

何も承知していなくても使えた。

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