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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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オモチャ


 五大協会についてあれこれと話をし……それからグリ子さんのブラッシングを二人で行って、そろそろお昼かなというくらいの時間になって客の来訪を告げる呼び鈴が激しい音を鳴らす。


 それを受けてハクトが玄関に向かいドアを開けると、大きな荷物を抱えた配達員の姿があり……受取のサインを済ませたハクトは、礼を言ってからその荷物を受け取って……両手で抱えながらリビングへと戻る。


「あれ? 何かお荷物が来たんですか?

 ……えぇっと、ダンボールに書いてある店名は……オモチャ屋さん?」


 するとユウカがそんな声をかけてきて……リビングにダンボール箱を置いたハクトは、カッターを片手に開封作業を始める。


「テレビでCMを見たグリ子さん……というか、ミニグリ子さん達が家で遊ぶオモチャを欲しがってね、いくつか注文しておいたんだよ。

 幻獣用のオモチャは電話注文での通販が基本で……それがこうして届いたという訳だね」


 開封作業を進めながらハクトがそう言うと、グリ子さんが嬉しそうな顔をし……それと同時に全身の羽毛が弾けてミニグリ子さんへと変化し、わらわらとミニグリ子さん達がハクトやダンボールへと群がってくる。


「いつのまにかこんな風に自由に現れたり、そうかと思えば羽毛に戻ったり、そんなことが出来るようになったようでね……グリ子さんが寝ている時でも遊んだり飛び回ったりとしているんだ。

 だからまぁ……彼女らが暇しないように、こういったものも必要という訳だ」


 そんな様子を見ながらハクトが更にそう続けると、ユウカは「へー!」なんて声を上げながらダンボール箱へと近づき、開封作業を手伝い始める。


 梱包材などのゴミを整理し、ゴミ袋に入れて、オモチャを傷付けないよう丁寧に開封し、開封が終わったならオモチャを綺麗に並べていって……使い方の書かれた説明書に目を通していく。


「私、幻獣用のオモチャってしっかり見るの初めてなんですけど……人のとそんなには変わらないんですねぇ。

 クチバシとかで持てるように工夫されてるだけで、私が使ったことのあるようなオモチャもたくさんで……あ、チェスなんかもあるんですね。

 チェスがあるなら将棋とかも……って、そうか、将棋のコマはクチバシじゃ難しいのか。

 あ、ボードゲームとかもある……結構難しいルールのやつだけど、ミニグリ子さん達プレイ出来るの……?」


 説明書を読みながらユウカがそんな声を上げると、楽しげにオモチャを眺めていたミニグリ子さん達が一斉にユウカの方を見て、キッと鋭く目を細めて、ならばやってみせてやろうじゃないかとか、そこまで言うのなら勝負しようじゃないかとか、そんな表情をしてから「キュン!」と声を上げて、ユウカをゲームに誘う。


 そんな挑戦を受けてユウカは、腕まくりをしながらリビングのテーブルに、かなり複雑な、高度な点数計算が必要となるボードゲームをセットしていき……3匹のミニグリ子さんを相手に勝負を開始する。


 3対1ではなく、1対1対1対1。


 ミニグリ子さん達も自分こそが一番のミニグリ子さんだと言わんばかりの闘争心を仲間に見せつけながらプレイをしていって……ユウカは点数計算をせずに本能と直感に従ったプレイをしていって……段々と点数差が開いていき、ミニグリ子さん達が結構な点数差を付けてのリードをしていき……最初は笑みを浮かべていたユウカだったが、段々と笑みが失われて歯噛みしながら、顔をしかめながらのプレイとなっていく。


「ミニグリ子さんの知能はグリ子さんと繋がっているというか、ほぼ同じようなものだから油断してはだめだよ。

 ミニグリ子さん同士も繋がっていて……ちょっとした集合精神というか集合知能というか、そんな状態になっているからねぇ。

 複数のコンピューターを並列に接続して連携演算している、という感じかな?」


 そんなユウカにハクトがそうアドバイスをするが……ユウカにはその意味をすぐには理解出来ず、仮に理解出来たとしても対策のしようがない話でもあり、ユウカはどんどんと劣勢に立たされ、ミニグリ子さん達はどんどんと点数を重ねていく。


 そんな中ハクトは、中身を全て取り出したダンボールを畳み、ゴミ袋の口を縛り終えて……オモチャ用のプラスチックの箱に全てのオモチャを入れてから、リビングの隅へと設置する。


 するとそこに早速グリ子さんがチャッチャッと鉤爪を鳴らしながらやってきて、オモチャ箱の中を眺めて……じぃっと吟味してから、一つのオモチャをクチバシで咥えて取り出す。


 それは俗に言う知恵の輪というもので、幻獣用に大きく、頑丈に作られたもので……それをグリ子さんはクチバシで咥えたまま振り回し……振り回すことで次々に解いて、知恵の輪をバラしていく。


 まさに神業、事前に解き方を把握していたとしても、人間の身ではそんな真似はまず出来ないだろうというもので、ハクトはそのことに深く感心し……グリ子さんは渾身のドヤ顔をハクトに向ける。


 そうしてからフスンと鼻息を鳴らし、満足したなら知恵の輪を元通りに組み直し……そうしてからオモチャ箱へと入れ直してから、また別のオモチャを引っ張り出す。


 それは磁石式のブロックオモチャで、磁石の力でもって組み立てることで様々な形状に出来るもので……グリ子さんはそれをクチバシで器用に組み上げ始め、塔のようなものを作り上げていく。


 広い大地から伸びて長く細く……そして先端には横に広がった円盤のような何かがあり……よくもまぁブロックオモチャでこんなものを作るものだなぁとハクトが感心しながら眺めていると、グリ子さんが声を上げる。


「クッキュン、クキュン、クッキューン、ピュイ」


「……え!? グリ子さんは召喚される前は、こんな形の巣で暮らしていたの!?

 というかこれが巣!? この円盤の所に巣材を集めてそこを寝床に……!?

 これがグリフォンの宮殿……!?」


 その声にはとんでもない情報が含まれていて、それを理解したハクトは驚愕の表情を浮かべながらそんな声を上げて……グリ子さんの作り上げたそれをまじまじと眺める。


 グリ子さんの話ではこの宮殿には多くのグリフォンが暮らしていたそうで、それだけの数のグリフォンが暮らしているとなったら、かなりの大きさとなるのだろう。


 ハクトの家とは比べ物にならない程に広く、どこかの運動場や体育館、もしかしたら学院ほどの広さがあるかもしれない。


 そしてその広い宮殿を支える柱があって……それが高く伸びていて……一体どれだけの大きさ、高さになるのだろうか。


 そうした想像を膨らませたハクトは、無理だと分かっていながらも、その光景を見てみたいものだと、そんなことを心底から思うのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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