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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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手



 グリ子さんが持ってきたらしい魔石の中に、まず立体的な召喚陣が浮かぶ。


 その直後、魔石の中に送還陣も一緒に浮かび、それを見たハクトは驚かされる。


 何故召喚と送還が同時に?


 そんな疑問をハクトとユウカは抱くが、すぐにその答えがやってくる。


 黒スライムの右側に丸い穴が現れる。


 空間に突然、穴が開いてそこから凄まじい熱気と激しい音が響いてくる。


 そして黒スライムの左側にも同じような穴が現れる。


 右と左……それを見てハクト達はなんとなく、どうしてなのかトンネルの入口と出口のようだな、なんてことを思う。


 そしてその予感は、概ね的中ということになる。


「クッキューン!」


 というグリ子さんの声に呼応するように右の穴からグリフォン達が雪崩込んでくる。


 グリ子さんとは違って伝承通りの姿で、大きく……体長は2mか、それ以上か。


 大きく重く、力強く……それが全力で駆けながら穴からやってきて、黒スライムを引き倒しながら左の穴へと入っていく。


 召喚され体当たりをかまし、すぐさま送還。


 まるで水流のように、一定速度で止まることなく淀むことなく流れ続ける。


 何体も何体も……数え切れない程の数のグリフォン達が右から左に流れ続ける。


「……えっとぉ! あれって!! 全部で何体いるんですかぁ!!

 さっきからずっと終わらないですし! なんかぁ、すっごい数走ってますよねぇ!!」


 大量のグリフォンのいななきと足音で、声がかき消されると思ったのだろう、力強い声でユウカが問いを投げかけてくる。


「……ざっと数えたが、累計ではもう400を超えた!

 ……が、恐らく30前後のグリフォンでしかないだろう!!

 右から左に、そしてまだ右に……同じグリフォン達がループしていると言えば良いのか、時たま同じ特徴を持ったグリフォンが現れるから、恐らく間違いないだろうと思う!」


「……ああ! なるほど!!

 そうなるとあっちにも穴が二つあって、その間を駆け続けていて……グリフォン達の意識ではただただ真っ直ぐ走っているだけってことですかね!!

 ……そうなるとあの黒いの、ずっと体当たりをくらい続けるんですかね!?」


「さて、それで倒せる相手かどうか……。

 グリ子さんもそれくらいは分かっていそうだが……」


 なんてことをハクト達が言っていると、グリ子さんが、


「キュン!?」


 と、何かに驚いたような声を出す。


 それから指示を出すような声を出し、それをきっかけにグリフォンが現れなくなり、ボコボコに踏み潰された黒スライムだけがそこに残される。


 それからグリ子さんは少し慌てたような様子で右を見て左を見て、それからまた号令……少し離れた所で様子を見守っていたフェーとフォスに近くに来るように指示してから、ハクト達にも側に来るようにと声を上げる。


 それを受けてハクトとユウカが素直に従っていると、黒スライムが再生を始めて……同時に地面が揺れ始める。


 直後、大きな手が地面から生えてくる。


 地面が割れるとか、掘り返されるとか、そういったこともなく地面を透過して太く毛深く、力強い真っ赤な腕。


 爪は長く、数珠玉を腕輪にしていて……ユウカはそれを見て、


「まるで赤鬼の腕ですね」


 なんてことを言う。


「……地獄の鬼を怒らせたかな?」


 と、ハクト。


 実際はどうなのか、とにかくその腕は黒スライムを掴み、そのまま地面へと戻っていく。


 黒スライムごと……黒スライムも地面を透過して、地面の下へと持っていかれる。


「……終わった、んですかね?」


 と、ユウカ。


「さて……。

 しかしアレは恐らく神々の差配だろう。

 隣国の神々を動かす程の事態、その主犯を放っておく訳にはいかなかったのかもしれないな。

 俺達がトドメを刺してしまいそうだから慌てて動いたと、そんな所だろうか。

 ……そしてあれが神々か、あるいは地獄の使いであるのなら不死身の化物への対処もできるだろう。

 例えば地獄の底の底に落ちた場合、新幹線や飛行機のスピードでも地上に上がるまで数千年はかかるという。

 当然その間も責め苦に遭う訳で……それで消滅するかもしれないし、しなかったとしても上がってくる頃にはもっと強い魔法なりが生み出されているはずだし、なんとでもなるはずだ」


「なーるほどー……。

 ……って、えぇ!? 地獄って本当にあるんですか!?」


「ある、というか昔はなかったらしいが地獄に関する話を聞いた神々が作り出したそうだ。

 罰のため、必要だから作ったというよりは、好奇心や実験的な意味で地獄が実在したらどうなるか、気になって作ったとかなんとか。

 それも本当かどうかは分からないが、幻獣や魔法によって観測されてはいるからね、なんらかの魔法的空間が地下にあるのは事実のようだよ」


「な……なるほど。

 でも、そうですよね、大僧正とかいらっしゃるんですもんね。

 前に説法してもらったんですけど、地獄と地蔵様は縁が深いとか、色々聞かせてもらっちゃってて……大僧正も地獄を信じてるからこそ、お話してくれる訳ですもんね」


 実際にブキャナンが地獄をそこまで熱心に信じているかというと、そうでもなさそうで、説法も様式美でしかないと思っていたハクトだったが、わざわざ言う必要もないかと言葉を飲み込む。


 と、その時。


 地面から黒く細い手が伸びてくる。


 それは明らかに黒スライムのソレで、どうにか戻ってこようとしているらしい。


 それを見た瞬間、グリ子さんが駆け出しクチバシでつつき始める。


 トトトトトッと手をつつき、つかれる度に手は痛みに悶える。


 悶えるだけで引っ込みはしない手に対し、グリ子さんはどんどん速度を速めていって……そしてトドメを刺そうとしているのか、一旦攻撃をやめて力をためてのけぞって……渾身のクチバシを手に突き刺す。

 

 それは流石に効いたのか、一瞬ビクリと跳ねてから動かなくなる手。


 するとそんな手を先ほどの大きな、赤い鬼を思わせる手が掴み、地面へと引きずり込んでいく。


 ……そうして改めて決着となり、一応念のためにとハクトが作り出した布を地面に貼り付けて封印を行う。


 これでまた手が生えてくることはないだろうと安堵のため息を吐き出し、それから一同は役所に連絡し、事の次第を報告するのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
グリ子さんに、今回も素敵なご褒美があればいいな。
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