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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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お誘い



 苗場への授業は一応の一段落はしたが、これで全てを教え終えたという訳ではなく、これからも定期的に行われることになった。


 ……が、その内容は今まで程濃いものではない予定で、お互い社会人であることも鑑みてゆっくりと進めていくことになるだろう。


 それでも苗場の生真面目さがあれば十分なレベルに成長していけるはずで……それに対し異論が上がることはなかった。


 ハクト達も苗場も、役場としても文句なし。


 ゴーレム関連の研究は研究所や大学が進めることになり、ハクトや苗場の手を完全に離れていて……その辺りにタッチする必要は一切なく、静かに見守るだけになるだろう。


 それでもあえて研究に絡んで成果や名誉を得ることも出来るのだが、誰もそれを望んでおらず、能力を持っておらず……ユウカが両親に研究の経過を知らせて欲しいと伝えるのがせいぜいだった。


 それでも誰にも不満はなく、平穏に日々が過ぎていって……数日が経った頃、少しずつハクトの生活に変化が起きていった。


 変化の一つは名前すら知らない相手からの手紙が届くようになったことだった。


 知己を得たい、あるいは授業を受けたいと、そういった内容の手紙が。


 ハクトとしてはどちらも受ける理由がなく、丁寧に断るばかりだったが、どこからか評判が流れているのか、その数は段々と増えていった。


 それでもハクトは丁寧に断りの返事を書いていって……同時にブキャナンにその件に関してを相談していった。


 何か変なトラブルが起きた際の対策、事前に相談しておくことでブキャナンにもある程度動いてもらおうと考えたからだ。


 何かが起きてから相談したでは手遅れで、事前に相談しておくことが大事だと考えていて……ブキャナンはそれを大いに喜び、精力的に動いてくれた。


 そこにはブキャナンなりの思惑もありそうだったが、相談した側として文句など言えるはずもなく、ハクトはそれでも相談を続けていった。


 それと同時にグリ子さんは食欲を増させて……そしてハクトの周囲を守る結界を強くしていた。


 範囲を広げ、厚みを増させ、防げる攻撃の種類を増やすために構造を変えて、常に改善を繰り返し……そのための魔力を食事で賄う。


 恐らくは手紙以外の方法でハクト達に近付こうとする者達がいるのだろう、それをグリ子さんは感じ取っているのだろう。


 それを防ぐために結界を改良しているのだろう……結界がある限り、ハクトの下に望まれない客人がたどり着くことはなく、来客を嫌がっているハクトにとってはありがたいことだった。


 そんなある日のこと、明日から連休というタイミングで仕事を終えて帰宅したハクトの下にブキャナンからの手紙が届いた。


 切手、消印がないところを見ると直接持ってきたか、小僧天狗に預けるかして届けたもののようで……ハクトは訝しがりながらも、着替えや軽い家事を済ませてから封を破り内容の確認を行う。


 そこには結構なことが書かれていた。


 簡単に要約すると、


『自分でも断れないところから依頼があったので、一度だけで良いから会って欲しい。

 断る断らないは自由だが、会わないという選択は難しい』


 というものだった。


 一体全体どこからの手紙なのか? という疑問があったが、気軽に手紙に書ける相手ではないのかもしれない。


 ブキャナンは常にハクトのためを思って行動してくれていて、相談をした上でこういう手紙をよこしてくるのなら、これでも相応の配慮あっての内容なのだろう。


「……それならまぁ、会うしかないかな」


「クッキュン」


 リビングで手紙を読み進めて一言、すぐさまグリ子さんが「そうした方が良い」と返してくる。


 グリ子さんなりに思う所があるのだろう、グリ子さんもそう言うのならと頷いたハクトは、返事の手紙を書こうと最近出番の多い文箱に手を伸ばそうとしてから、ブキャナン相手なら電話でも良いかと思い直す。


 それから立ち上がり、電話の下へと向かい……ブキャナンの庵の電話番号のダイヤルを回す。


 すると数コール後に受話器が取られて小僧天狗の声がし、ハクトは名乗った上でブキャナンに用事があることを伝える。


 それを受けて小僧天狗はすぐさまブキャナンの下に向かい……そしてこれまたすぐにブキャナンがやってきて受話器を取り、声をかけてくる。


『これはこれは、ハクトさん、早速の連絡を頂いたようでありがたい限りでございやす』


「こちらこそ、いつもお世話になっています。

 ……それで何事ですか? 尋常ではない内容の手紙でしたが」


『えぇ……アタクシも驚いたんでやすが、とある名家よりお話を頂いておりやして、様々な事情から顔を合わせたいと言われれば断りにくいお相手となっておりやす。

 もちろん話を受けるか受けないかは別、少しでも嫌と思ったのなら断っていただいて構いやせん。

 ハクトさんが受けたご加護にはそれだけの価値と力がございやすし、ハクトさんの経歴なども断るだけの力を与えてくださることでございやしょう。

 ですが一度だけはお会いしてくださると幸いでございやす。

 ……会談の場などはアタクシの責任で用意させていただきやす』


「分かりました、大僧正の言う通りにします。

 まずは会ってみて……受ける受けないはそれからの話ですね。

 会談の場や時間などもお任せしますが、仕事中の対応は不可能ですのでその点ご留意を」


『えぇ、もちろんでございやす。

 恐らくは明日のお昼前後となると思われやすので、そのつもりで準備を進めておいてくだせぇ。

 ……では、早速先方に連絡させていただきやす』


「分かりました、お願いいたします」


 それで通話は終了となり、受話器を置いたハクトはリビングに戻る。


 戻って椅子に座って……それから必要かもしれないと、礼服などの確認を始める。


 着ていける状態なのか、ホコリやシワがないか、洗濯すべきものはあるか……などなどしっかり確認をしたなら、次はグリ子さん達のお手入れだ。


 しっかりブラッシングし、クチバシや爪を磨いて輝きを与えて……明日連れて行っても問題ないように仕上げていく。


 グリ子さん達はそれを素直に受け入れるだけでなく協力もしてくれて……そうしてハクト達は、夕食の時まで準備に励むのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。

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