第1章幕間その2 緊急会議
謎の部屋捜索隊が、帰還してから数時間が経ったーーー。
「はあ…。なんだよ急に集合とか…。」
俺とミリヤは今、西棟1階廊下を共に歩いていた。
その黄金に輝く廊下は流石に何回も目にすると目障りになってくるもんだ。だが、ミリヤはこの光景を目の当たりにして目を輝かせていた。
「イクト!イクト!あれあれ!あれ見て!すごーい!」
見るもの全てが新鮮なミリヤにとってはこれも良い体験になるだろう。
後で、本当の廊下はどうゆう物なのかをちゃんと教えるとするとして、俺達はリュシルによって呼び出されて、今こうして黄金の廊下を歩いている。何でもミリヤに関する会議をしたいとのそうだ。今さらなんのことだろうか。教育方法とかか?
「イクトー!あれ見てー!」
「おお。すごいなー。」
黄金の手すりに興奮気味なミリヤを落ち着かせるように頭も撫でる。
しかし、何故手すりに興奮しているんだ?
もっと照明とか色々あるだろうに。
好きな食べ物だったり、ミリヤは少し渋いというか、変わっている。それは、それでミリヤらしくてとても良い。別に否定などはしない。
そんなこんなで、興奮し過ぎないようにミリヤを落ち着かせていると、集合場所の応接室へとついた。
「ミリヤが開けるー!」
俺が目障りな黄金のドアノブに手をかけようとすると、ミリヤは、ぴょんぴょん跳ねながらお願いしてきた。こんなお願いされたら断る事など天地がひっくり返っても出来ない。
「いいぞ。」
「やったーー!!」
満面の笑みを咲かせて両手で背伸びをしながらドアノブに手をかける。
俺はミリヤにバレないように補佐をする。
ミリヤは器用にも、つま先立ちしながらドアを開ける。
ドアを開けると、
「イクトー!遅ーい!」
「遅すぎ。」
「私を待たせるとかいい度胸ね。クトイ。」
「だ、大丈夫ですよ、イクト君!ほんの少し待っていただけですから!」
「全く。君といったら…。」
今回の会議の参加者、リュシル。
藤崎花咲にルルユユ姉妹。そしてカエデさんといったメンバーに部屋に入るなり一点集中砲火を食らったのであった。
「で、この会議の主旨はなんだ?」
俺は席につくなり、この会議の発案者、俺の真っ正面の席に座っているリュシルに問いかけた。
俺から見て右サイドにルルユユ姉妹が左サイドにはカエデさんと藤崎花咲が座っている。
そして俺の膝の上に当たり前のようにミリヤが座っている。
「ミリヤちゃんの教育方針についてです!
といってもね、イクト達が来る前にあらかた決まっちゃたけどね。」
おいおい。当事者とその責任者を差し置いてそれは無いだろ。
すぐに、俺はルルユユ姉妹の方を見る。
「勉強とか身の回りのお世話の事です!」
ユユがこの会議で話し合う内容を伝えてくれた。
なるほど。その内容だったら納得する。
勉強といっても前いた世界の事ならともかく、この世界の事はまだ俺も勉強中だし、男の俺がミリヤのお世話にも限度があるからね。
「安心して!ミリヤちゃん!私も凄ーく頑張るから!」
意気淡々と張り切るリュシルに一体何に頑張るんだよと突っ込みたいが伏せておいて、ともかくそれなら俺もこの方がありがたい。
問題はミリヤ自身だが、
「わかったーー!よろしくね!リュシルお姉ちゃん!」
あっさりと承諾した。
それからは具体的な内容になっていった。
基本的は、ミリヤは俺と一緒に行動するが、朝の数時間はルル御姉様による勉強をし、昼からはリュシルかユユのお手伝いなどをする事が決まった。
あと、ミリヤの入浴も女性陣が当番制にして共に入ることも決まった。
「寝るときはどうする?」
残すは就寝時だけになってリュシルは、皆に意見を求めた。
「イクトがいい!」
ミリヤが即答する。
勉強の時も入浴の時も全てミリヤはこんな感じで即答している。
そしてミリヤに視線が集まった後、その矛先は俺に向けてくるのもお決まりになっている。
そして、今回も俺に視線が集まった。
ここで俺は俺の意見を言う。
「まあ、寝るときぐらいは構わないよ。」
その言葉にこっちをじっと見つめているミリヤの表情が一気に明るくなる。
「イクトがいいなら、任せましょうか?」
リュシルが両サイドにいる女性陣へ問いかけた。
皆、頷いたりした。特に反論は無いようだ。
「なら、イクトに任せましょう!よかったね、ミリヤちゃん!」
「うん!」
元気一杯に返事をし、満面の笑みになるミリヤ。
「さて、そろそろ夕食の時間だから戻りましょうか。」
時刻は既に18時を回っていた。俺にとってはまだ昼間だけど。
「今日はスパゲッティです!」
ユユが先手を打つように夕食の献立を言う。
スパゲッティってこの世界にもあったんだな。もしかしたら、違うかもしれないから聞いとくか。
「ちなみに何スパゲッティ?」
「ミートスパゲッティです!イクト君!」
これは本物のスパゲッティだと安心して、さっきからガッツポーズをしているミリヤを落ち着かせる。
そして、皆が応接室を出ていった。
こうして、俺は特になにもしていない、ミリヤ教育会議の幕が閉じた。
数時間後ー。
「イクトもここで寝るの!」
ミリヤが眠そうにしていたため俺は、ミリヤをベッド運んだ。
そしたら、俺からミリヤは離れず一緒に寝ないとやだ。と駄々をコネ始めた。
シャンプーのいい香りが鼻をくすぶり、これまたミリヤの可愛さを引き立てており、もし破壊神がいるのなら破壊神さえも驚く程の破壊力だ。
「イクトが寝るまでミリヤは寝なーい。」
どうやら、俺がミリヤから離れないようにミリヤは俺を見張るようだ。これは本当に寝なさそうだな。
これ以上成長期に重宝な睡眠時間を削るわけにはいかない。ここは寝たフリでもするか。
「じゃあ先に寝るとするよ。おやすみ、ミリヤ。」
「おやすみ。イクト。」
俺は横になって目を閉じる。
数分が経った。いきなり頭を撫でられた。ミリヤによって。
「イクトはいい子。いい子。」
と、いって頭を撫でられ続ける。
なんだろう。懐かしいような感じがするが、これも微笑ましく思えてくる。しばらくじっとしとくか。
更に数十分後。そっと目を開ける。ミリヤは予想通りぐっすりと眠っている。
それを確認して俺は体を起こそうとすると、
「…お願いします。…もうどこにも行かないで…です。」
不覚にもビクッとなってしまった。
起きていたのかと焦ったが天使のような寝顔だったから寝言のようだ。
だが、俺はあることに気づいた。
「…そか。…ミリヤは…そうだったな。」
もう少しだけ側にいるかと思い、また俺は寝そべり目を瞑った。俺がはっきりと覚えているのはここまでだった。
リュシルやユユ達がおやすみの挨拶にイクトの部屋を訪れた時は、ミリヤとイクトはぐっすりと仲良さそうに眠っていたという事を聞かされるのは翌日に聞かされるのであった。
とても濃く、嵐のような慌ただしい異世界召喚2日目がようやく終わったのであった。
これで無事、皆様のお陰で第1章が終わります。
次回からは第2章「王都編」をお送りします。
これからも応援よろしくお願いいたしますm(_ _)m




