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転生女子会の黒一点  作者: ケー/恵陽
一学年前期
7/33

07 雨の日もできる領内散策

 攻略対象者のメモを貰い受けると、私は彼女たちに領地での娯楽について訊ねてみた。

 我がホルトハウス領は標高高い山を中心にある。観光と酪農が主な産業だ。自然豊かな景色を散策したり、酪農の体験教室なども行っている。体験教室は主に子ども向けだが、下級貴族には結構人気だ。侯爵様などは逆にプライドが許さないのか子どもであっても参加されないことが多い。こちとらしがない男爵だもんで、そこらのプライドは割合低い。

 滝や季節の花、ピクニックなど観光に関してはなかなかいいと思っているが、雨の日や外に出られない夜などに当たってしまうとやることがないまま帰ってもらうことになる。それをどうにかしたいのだ。

 暇そうにしている姿は申し訳なくなるし、結局宿の近くや町の辺りしか見学できないのもさみしい。

なので屋内でちょっとしたゲームなど考えられないかと思っているのだ。

「ゲームねえ。チェスみたいなの、あるのかな」

「あるとは思うんだが、そういうのよりもっとチープでいいんだ。子どもから大人まで一緒になって楽しめるやつ」

 チェスではないが、オセロのようなものなら見たことがある。

 どうせなら楽しくホルトハウス領のことを知ってもらえるゲームが欲しい。

「むずかしいですわねえ」

「この世界の子どもってどんなの好きなんだろう。あと平民も貴族も楽しめるってこと?」

 唸るクリスタとユッテに私も困る。できればそういうゲームも欲しいと思っている。どうせなら領民たちにも楽しめるとよい。

「……すごろく、とかどうでしょうか」

 うんうんと頭を抱える私たちに、ジビラが控えめに提案した。

「双六? あのサイコロ投げてコマを進んでいく双六?」

「そうです。マスに領内についての問題を書き込んで、回答してもらうんです」

 考えてみる。

 雨の日の鬱屈した気分の中、気分を変えませんかとゲームに誘う。大きな紙に自分の駒を置き、進めていく。子どもにもわかる問題から、領民でないとわからない問題から、答えてもらう。親子連れや友達通しならそれできっと楽しんでもらえる。一番にあがった人にはちょっと贅沢な景品を用意して、周りから羨んでもらうのだ。景品は乳製品か花を使った小物がよいかもしれない。

 一人旅の人なら宿の主人に出張ってもらって一緒に酒でも交わしながら、なんて出来るだろうか。

「ジビラ、それいい! ちゃんと作りたい!」

 興奮して大きい声が出てしまった。周囲から視線を寄越されて、慌てて声のボリュームを落とす。

「じゃ、じゃあ、試作品作ってみようか? 型を作ってみるから問題を考えてみてね」

「え、作ってくれるの?! そっか、ジビラ、技師技能科だったな。わー、すっごいうれしい。あ、無理はしなくていいからな。問題はいくつか考えてみるよ」

 うれしさが溢れすぎて無意識にジビラの頭をなでまくっていた。照れるジビラはかわいいし、天使だと思った。

 頭の中でどんな問題にしよう、こうした方がいいだろうか、などと考えていると、ユッテが私の頬をつついてきた。

「ね、ね、イチゴ君」

「お、おお、なんだユッテ」

 うるさすぎたか、と居住まいを正すと彼女は人差し指を私の目の前でぐるぐる回した。

「双六、学校内で魔王のあぶり出しに使えないかな」

 思いつきだったらしく、ユッテはたどたどしく説明を始めた。

 進める駒を「王子」「騎士」「魔法師」「商人」「村人」そして「魔王」で作る。そして双六のそれぞれのコマには魔王退治の冒険を書いていく。あがりの一つ手前には、サイコロの一の目が出れば魔王が改心し、ここであがりになるというものにする。普通のあがりには魔王を退治して世界の平和を守った、にする。とにかく魔王絡みの冒険譚を書いていく。本当にこの学校に魔王がいれば、何かしら反応があるのではないか、とユッテは言う。

「ねえ、ジビラ、今のユッテの言う物、明日のお昼までに作れるかしら。とりあえず簡単なものでいいの」

「明日の昼って急すぎじゃないか」

 今度はクリスタから提案が来た。

「何を言っているの、イチゴ君。使うのはあなたよ。王子たちに双六を見せてみたらいいと思うの。きっとのってくるわ」

 自信を持って答えるクリスタに、私もようやく理解した。王子が気に入ったなら学校で広まるのは早い。少しでも早く魔王を見つけられるかもしれない。



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