29 仲間を信じることは大事だが、練習も大事である
ホルストが靴を作ってくれていたのだが、結局それは必要なくなった。いや、言い方が悪いか。靴でなくてもよかった、が正しい。
私が靴に陣をつけたのは土属性で、地面に体がついてないと魔法を行使できないからだった。だがカールに色々聞いたところ、特にそんな制限は必要ないと言われた。魔法が得意なものならばそういうこともあるのだろう。本来ならば指輪や腕輪、耳飾りなど触媒を使う形でよいらしい。カールは一応首飾りをつけているという。
「教師陣もそれは誰も突っ込まなかったな。みんなの足型取る必要なかったのか」
「魔法得意なら別に制限ないからね。……気づかなかったけど」
放課後の練習場の一角にホルストと私、それにカールが揃っている。
「どうして皆腕輪とかにしないのかと思っていたが」
首をひねるカールが一番魔法に関しては理解力が高いようだ。紙以外のものに魔方陣を刻むことがまず異常で、今は皆が新しい方法に飛びついているだけだ。そのうち他にも気づく者が出るだろう。だがそれまでは、私たちの秘密にしよう。
「で、使うのは風でいいということだったので、これをフィッシャー先生に進呈します」
「カールでいい。これは、腕輪か」
金属に風の陣を刻み、更に紐で結べるようにした。腕輪ではあるが、腕に密着させるには紐で縛る必要があるからだ。
「試してみてください」
袖をめくり、紐で縛る。が、片手でつけるには難しいようだ。
「あー、そこは改善必要ですかね」
「結ぶんじゃなくて、……一周巻いて引っかけられるところがあれば固定しやすそうだな」
すぐに代案が浮かぶところに、彼の頭の回転の良さがわかるようだ。ホルストは改善点をメモにしている。
「さて、それじゃあ、やってみるか」
腕輪を袖の中に隠して、カールが息を吐く。練習場に来たのはカールの魔法の実力を知るためである。対人に見立てた人形を前にカールが手をかざす。
風が来た、と思うとすぐに竜巻が人形を襲う。そして一気に空へと舞い上がる。ばらけた人形の破片が少しして地面に落ちてくる。普通に考えてすごい威力だ。
「こんな感じだ」
「え、すっごい……ですね」
ホルストが目をパチパチさせている。魔法を放った当人は腕輪をあちこちから眺めて不思議そうにしている。
「体感で八割というところか」
「え」
あれで全力ではないのか。改めて化け物のような教師だ。
「私はいつもと同じくらいの力が出ていると思うのだが」
カールはどう説明したものかと首をひねる。暫し間を開けて口を開いた。
「……おそらく力がありすぎて腕輪では魔力を引き出し切れないんだ」
強いとは聞いていたが、力がありあまっているようだ。
「でもこの竜巻だと強すぎるんじゃない?」
どう考えても怪我以上になりそうだ。
「そこは加減しよう」
カールの言い分では今のはどれくらいの力になるか普通に使ったが、出力を押さえることは可能らしい。そして何故か私に顔を向ける。
「防衛科だったな。ちょっと的になれ」
「は?」
言うなり手のひらを向けられる。そして風が巻き起こるのを慌てて土壁を発動して防ぐ。だがゴリゴリ削がれているのがわかる。こちらはそれなりに魔力を込めているのに、全然防いでいる感じがしない。カールの指先一つで吹っ飛ばされそうだ。
「え、ちょ、先生ー! スヴェンがもう飛ばされそうなんですけど!」
「大丈夫、大丈夫」
土壁の向こうで笑っている声がする。本気でそろそろまずそうなんだけど。
数秒持ったが、やはり土壁が剥がれている気配がする。土壁に穴が開くと、そこから一気に崩壊した。
「ぐえ」
竜巻の風に煽られて体が浮く。地面に落とされるかと思った体はカールの魔法で一回転させられて、無理矢理立て直された。胃の中が気持ち悪い。
「スヴェン!」
ホルストが慌てて私の身体を確かめる。持つべき物はやさしい親友である。
少し休めば問題ない、と手で制すと安心したようだ。
「先生」
「やりすぎたのは謝ろう。すまなかった、スヴェン」
少々目を泳がせながら、カールは謝ってくれた。そして小声の呟きが聞こえた。
「……問題なさそうだな」
問題アリアリです!
すごい久々ですんません。




