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さあ、行こう

とうとう王族から手紙が届いた。しかも獣人族からの手紙も同時に着いたのだから、双方に何らかの動きがあったのが窺える。


あれからさらに霊魂の浄化と送り出しを進めて1ヶ月半。想定していたより数週間早く手紙が届いた。


「出来るだけ多くの霊魂を送り出しておいて良かったね!獣人族は恐らく面会についてでしょ?後回しにして王族からの返事を先に聞かせて!」


「公爵家からコンシールについて何か聞かれるかと思っていたが、全く何もなかったな。」


「それより、早く!早く!」


「分かった、分かった。そう焦るな。じゃあ、開けるぞ。」


ワクワクするリタの隣で珍しく笑顔を崩して訝しげな表情のイルを余所に、レイズは王族からの手紙を開けた。


「なんて書いてあるの?」


「研究については何も。この1ヶ月音沙汰も何もなかったからな、手紙で来るかと思っていたが、それもなし、か。綺麗なものさ。休暇の許可をする。期間は3ヶ月、長いな!研究費用は公爵家が負担する。助手の同行も許可をする。1ヶ月に一度研究成果又は獣人族の埋葬について報告をすること。あとは俺が獣人族の埋葬に携われるよう、取り計らった、だと。」


「終わり?」


「以上だ。」


「なんだか拍子抜けね?もっと研究について揉めるかと思ってたのに。」


「それ程深く関わって欲しくないか、関わりたくないのでしょう。」


「俺に何かを聞けば、どんな情報を欲しがっているのか知られることになるし、こちらから何かを聞かれるのも嫌だったんだろうな。」


「許可を貰えたのなら良しとしよう!」


「次は獣人族だな?これはリタ宛に来ている。」


レイズが手に持っていた手紙には獣人族の紋章が蝋で固められ、封をされている。


「じゃあ、これは私が開けるね。」


針を手袋から出すと、針に風魔法を纏わせペーパーナイフにしてスッと開ける。


「なんて書いてある?」


「んーっとね、1ヶ月後に面会だって。同行者による埋葬業への関与も許可する、とあるね。やったねレイズ!ふむふむ……私が獣人族の調査を行う話も伝わってるみたい。騎士団の時と同じ役割で顧問守護官殿とその同行者の滞在を無期限で許可する、だって。」


「前回行った時に騎士団の治療はできたんだろう?獣人族の国に行ってもまだ調査はするのか?」


「うん、根本的な解決をしたわけじゃないからねえ。また調達した防具に悪さでもされたら困るじゃない?市井でも獣人族や魔族が不当な扱いを受けているみたいだし。誰がなんの目的でこんなことをしているのかは調べないと。不安の芽は小さいうちに摘んでおくに越したことはないと思うし。」


「まあ、前回の治療が完璧だったかは経過を観察しないと分からないのもあるよな。調査するに越したことはないか。どうせ挨拶にも行かなければならないんだし、丁度良いっちゃあ丁度良いか。」


「そうだね。あ、忘れてた!ジルクも同行するんだった!」


「誰だ、そいつは?俺とイルがいれば十分だろう?いらんいらん。」


「あれ?レイズ、ジルクとは知り合いだったっけ?」


「ジルクなんて奴は知らないな。知らないから来なくて良いぞ。」


「そうは言っても、一応騎士団として護衛に来てくれるって言ってたから、同行はしないといけないんじゃない?」


「さあ?どうでもいいな。」


「なに?なんでちょっと不機嫌なの?あ、わかった!拗ねてるの?」


「拗ねていらっしゃいますね。」


「別に拗ねてない。」


「私もリタ様と2人っきりが良いなと思っているように、きっとレイズ様も」


イルの言葉を遮って焼けくそだと言わんばかりにおざなりに言う。

「同行者?騎士団?頼もしいな!是非同行してもらおう!やったー。」

顔は表情がなくなっている。


レイズが嫌がろうとも、王族としてもネクロマンサー補佐として働く私がすでに人族側である事を示す為にもジルクの同行が建前上、必要なのかもしれない。


他国との間で異世界転移者については、色々こちらに知らされていないこともあるのだろう。どの道、調査を1人で行うのは心細いので、ジルクも手伝ってくれると言うなら出来れば協力を仰ぎたい。


「……い、いいかな?ジルクに書物伝令を送っておくよ?」


レイズの機嫌を一応伺っておく。やっぱり嫌だと言うなら仕方がない。1人で調査を行おう。イルもいるし何とかなるだろう。


「別に良いって言ってるだろ。俺は人見知りなんだよ。それだけだ。呼べ、呼べ。お前は人族の護衛が付く騎士団の顧問守護官殿だと示す必要もあるんだろうさ。」


「あ、やっぱりレイズもそう思う?」


「当たり前だろ?異世界人の魔力もさながらその知識はどの種族も喉から出が出るほど欲しい。ネクロマンサー補佐なんて、特に地に縛られる職業だ。王族はお前がネクロマンサー補佐として働くことには大歓迎だろうよ。顧問守護官という地位まで与えられていたら、他の種族も自分の方に引っ張り込みたくても、大っぴらには動けないから良い牽制にもなる。」


「その上、レイズ様は研究費用として公爵家からいくばか受け取っておられます。少なくともネクロマンサーを辞める気はないとレイズ様を評価されているはずです。その補佐であるリタ様もそのお陰で人族を離れる気はないと思われているはずかと。」


「先に人族に取り込んでから他の種族王に行かせる計画の一つが騎士団の同行でもあったんじゃないか?その計画より先にお前は俺の補佐になったが……念には念をってやつだろ。ジルクとやらの役割は護衛もあるだろうが、リタが他の種族になびかないように監視もかねているのかもな。」


「じゃあ、レイズが嫌だと言ったところで、ジルクは絶対ついてくるんじゃない?」


「流石に俺が嫌だと言ったら、外されるだろうな。だが、バレないようにくっついてくるだろう。常に隣にいるか、こっそり後ろの方にいるかの違いしかない。」


「そんなに3人だけが良かったら後ろからついてきてもうらう、でもいいんだよ?」


「うぐ!べ、別にそういうわけじゃない!人見知りなだけだー!!」


「照れていらっしゃいます。」


「そうなの?人見知りでも護衛だと思えば大丈夫、上手くやれるよ。」


リタはジルク宛の手紙を書くため、ポシェットからつけペンを取り出す。紙がないので、霊魂に持ってくるようお願いした。


「その方に照れていらっしゃるのではないかと……」


「イル、こら、お前!」


霊魂に話しかけていたので聞き取ることができなかったが、なにかイルが話しかけてきていた気がしたので聞き返す。

「ん?どうかしたの?」


「何でもない!早く送れよ!」


なんだったんだ?と首を傾げるリタにレイズは口元を手で隠し、何やら呻いているが、状況が分からない。


「とりあえず私と他に2名同行者がいる状態で挨拶に向かうって連絡入れておくね。」


ジルクも王宮を離れるのに調整することがあるだろう、と考えたリタは直ぐ様『書物伝令』を送った。


メールを送る時の画面の時のように、送信すると手にあった筈の手紙は音もなくふわっと一度発光したらすぐ消え去る。


初めて行使した時は風に飛ばされたのかと思ったほどだ。


返事には数日はかかるかと思っていたら、隣にいるのかのように、すぐ書物伝令がジルクから返ってきた。


「すぐ準備する、3日後迎えに来るって!私を含めた合計4人で行く準備をしておくって!」


「早いな!まあ、俺たちの準備はもう出来てるけどな!」


「この数ヶ月頑張ったかいがあるね!他のネクロマンサー達の根回しは終わってるの?」


「幸いそれも王族が取り計らってくれるらしくてな。しばらくクロリア地は休業だ!他のネクロマンサーに死者は回してくれるらしい。」


「準備万端だね!さあ、あと3日間、出来るだけの事をみんなでやりましょーう!」


そしてきたる朝、獣人族の国に向かうべく馬車がレイズの屋敷に向かってくるのが見えた。御者席にはジルクが乗っているのが微かに見える。


「レイズ!準備はできた?!もう来ちゃうよ!」


「待ってくれ!今死者を魔力袋にまだ収めているところだ!」


「一人一人入って貰うのでは日が暮れちゃうよ!『針よ、私の魔力を吸い上げ糸を紡げ!』『捕縛!』」


レイズの目の前にいる3000体の死者の群勢を魔力の糸で輪を作り、一気に縛り上げた。


「大きく魔力袋の口をあけてー」


「いやいや、まだ1日が始まったばかりなのに、ここでそんなに魔力は使いたくない。道中何かあったらどうするんだ!」


「何言ってるの?レイズ!ほら、私羽から補充できるし、使ってよ。」


『針よ、私の魔力を吸い上げ、糸で縁を結べ!』


「ね?」

レイズの目を上目遣い覗き込むと、レイズが抵抗を見せた。


「これじゃあ、お前がいなかったら何も出来ないみたいじゃないか……」


どうやらプライドがあるらしい。


「いいじゃない、私がいなきゃダメになる体になっちゃっても、それでいいのよ。頼って?お願い、一人で抱え込まないで……」


「リタ様、私にも同じ事を言ってみて下さい。」


「イル!お前はあっちいってろー!これは俺の問題だ!」


突っぱねたことをイルに言っているが、レイズの顔は既に真っ赤に染め上がっている。


「ね?」


もう一度リタに覗き込まれ、両手で手を包まれると、リタと初めて出会った時の温かさに全身が包まれた。こいつの針には本当に敵わない。そう、これは針のせいだ。絶対そうだ。


「たまに頼る。世話をかけるな。」


その代わり、何かあったら守ってやろうと心にこっそり誓う。


「ううん、一緒に頑張ろう。」


『その糸は私に縁を授けるものとする。』


レイズはリタに照れを隠しながら詠唱し、小声でありがとう、と言った。

きっとリタにその声は届いていないだろうが、それでも気持ちだけは伝わっているはず。


『魔力譲渡!』リタが叫ぶ。

『魔力ドレイン!』レイズが同時に詠唱する。


リタの魔力でガバッと大きく開いた魔力袋に死者を詰め込むと、レイズの準備が完了した。


「さあ、皆、行こう。獣人族の国へ!」


まだ続きますが、ここまでいかがでしたでしょうか?


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!

ブックマークもよろしくお願いいたしますm(__)m


これからの章を続ける原動力になります!

(2020/08/22)


第一部はこれで完結です!次は獣人族の国での話が始まります!!このあと登場人物のまとめを載せますね。

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