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クロリア地に向かいます2

ブックマークが時折外れて行く中でも読んで下さっている方に感謝をm(__)mちょっと凹んだけど、それよりもう一話投稿しようと思い、アップしました!

「どうなっているんだ!あれは水中深くで常に眠っている魔獣ではなかったのか?!」


「わかりやせん!浅瀬には普通居ないはずなのですが!」


後ろの方ではヴァンピーロが戦っているのだろう。凄まじい爆音と地鳴りが響いている。


「とにかく急げ!ヴァンピーロの邪魔になる!」


「分かっとりやすが!遺体が損傷しちまいやす!」


「そんなこと言ってる場合か?!」


「うううう!!専属を切られちまいやす……」


青い顔をして、もうダメだ、明日からあっしはゴミ溜めでまた暮らすんだとかブツブツ言っている。


「そうなったらギルドの配送で雇ってやるから!今は頑張れ!!」


「絶対ですぜ!!!その言葉忘れちゃいけやせんぜ!!!守ってもらえなかったらどこまでもつきまいといやすからね!!!」


「わかった!わかった!このまま行くと、どれぐらいで着く!」


「急いでも1時間はかかりやさあ!」


「とにかく今は距離を稼いでくれ!!」


「へいよ!しっかり掴まってて下せえ!」


言われた通りにアイザックは御者の席にある手すりにつかまった。


30分ほど走っただろうか。それとも距離が離れたからか、音がかなり遠のいたようだった。


「静かになったようだね。もう馬が泡を吹きそうだよ。止めてやれ。」


「いいんですかい?まあ、確かに静かにはなりやしたが……」


フューネラルは馬の手綱を引くと、並足にまで馬が速度を落とした。馬車を一時停止させると、馬がブルルンと嘶いた。口には泡が溜まっている。


「ここで私はヴァンピーロを待つよ。フューネラルは屋敷へ行ってくれ。急がなくて良い。遺体をこれ以上損傷させると不味いだろう?」


「こんなところに1人で置いて行けやんって!」


「ヴァンピーロが心配なんだ。魔法陣を起動させて待機するから、問題ないよ。さあ、行って!」


「はあ……伯爵を呼んで来ますので、踏ん張ってて下せえ。」


フューネラルはアイザックを置いて、馬車をまた走らせた。


「こんなこともあろうかと、杖を持ってきて正解だった。」


アイザックが胸の内ポケットから出したのは杖だった。一見ただの棒のように見えるが、れっきとした魔道具だ。主に魔法の力を増長させたり、魔法陣を描いたりするときに使用する。恒久的な魔法陣を描きたい場合は魔道具のインクなどを使用する。


今回は地面に描く程度でいいだろう。魔法陣に足を踏み入れるとトラップが発動し、相手の身動きができなくなる魔法を組み込む。身内がかかっては大変だ。キャナズマット限定の付与を書き足した。


罠魔法陣を置くときは、発動させたあとに見えないようになる、消えるインクなどを本来は使用するが、今は手持ちがない。出来るだけ細く、薄く描いて葉っぱを散らばらせた。


魔法陣を描き終わり、耳を済ませているとアイザックの数百メートル先に何か棒切れが飛んで来た。かなり距離があったので、一瞬なにか分からなかったが、嫌な予感がして棒切れの元に走り寄った。


「腕だ!!!なんてことだ!ヴァンピーロ!!!」


くそっ!加勢すべきだった!


腕を拾い上げ、魔力袋を新たに創造した。もう一つは馬車の中に置きっぱなしだ。腕を魔力袋に中に収納し、茂みに隠した。


戦いの音がまた聞こえてきた。しかも近くなってきている。だいぶ離れたと思っていたが、戦いで移動しているようだ。



ドガン!!!!!!!



けたたましい音と共に、アイザックの前に魔獣が吹き飛ばされてきた!体中を木の根で貫かれ、血を噴き出しながらもまだ動いている。



「しぶといやつですね。」



「ヴァンピーロ!」


「お館様!何をしているんのですか!お逃げ下さいと言ったでしょう!」


幸い、キャナズマットは怒り狂っているためアイザックに気が付かず、ヴァンピーロにその巨体をぶつけに行った!


「ぐはっ!!!」


アイザックに気を削がれていたヴァンピーロはまともにタックルを食らって茂みの奥に追いやられた!


あれの気を引かねば!どうしたら……そうだ!


アイザックは何かを思いついて、魔獣がいる方向に駆け出した!魔獣の背中が見えてきて、今だ、と魔法を杖で放つ!


効果は薄いかもしれないが、気を引くだけで良い!


『水槍!!!』


杖の先から水でできた槍がキャナズマットに向かって真っ直ぐ進んでいった。


キンっ!!!


硬い体表に弾かれ、槍はその場で消え去った。


「グルルルル……」


唸り声を上げて後ろを振り返り、アイザックの姿を見つけるも、無視してヴァンピーロに再度攻撃を繰り出そうとヒレをバタつかせている。魔法を繰り出すのか。


「くそっ!『水槍連撃!』」


無視できないぐらい叩き込むしかない!!



ザクッ!


当たった!


一本の槍が、血が噴き出していた穴に上手く刺さり、魔獣は雄叫びを上げた!



「ギャアアアアオオオオオオ!!!」



「こっちだ魔獣!お前の相手は俺だ!!」



逆鱗に触れたアイザックに攻撃対象を変更し、のっしのっしと重そうな体を引きずってアイザックに向かってきた。


気を逸らさないよう、後退りしながら水槍をひたすら打ちこむ!


「ギャアアアアアアアア!!!」


どうやら目に刺さったらしく、大きな体を仰け反らせた!


十分に気を引いた。あとは魔法陣まで誘き寄せるだけだ。


アイザックは走った。たまに後ろに杖を向けて水槍を引き続き放つ。



カキン!キンッ!!



槍が体表に弾かれた音がすぐ後ろまで来ている!


見えた!魔法陣だ!あれを超えれば……!


アイザックは魔法陣を傷つけないよう、葉っぱの上を走り抜き去った!



「ンギャアアアアオオオオオオごおおおおギイイイイイイイイイイイ!!!!」


やった!罠にかかった!


「お館様!!!」


ヴァンピーロが無くなった片腕を押さえて追いついてきた。


「拘束した!!とどめをさせ!!」


身動きが取れないキャナズマットに上位魔法を繰り出すため魔力をためれるだけためて、ヴァンピーロは上級魔法を唱えた!


「串刺し公の名において貴様を火炙りの刑に処す!『業火!!』」



「ギエエエエエエエエエエエ!!!!」



勢いよくキャナズマットは青い炎に包まれ、フッと炎が消えると、そこはまるで最初から何もなかったかのように、ただ静寂が広がっていた。


「ヴァンピーロ!!大丈夫か!!」


業火を唱え終わったヴァンピーロは、力なく両膝を地面についた。


「不覚にも、腕を切られました。これさえなければあんな小物、なんてことなかったんですが……。」


「大丈夫か!!しっかりしろ!!」


腕からはまだ血がダラダラと脇腹を伝っている。


「もう私は無理です。ここに置いて行って下さい。まもなく消炭になることでしょう。」


アイザックは自分のシャツを脱ぎ、力を入れて破り、細長い布状にした。ヴァンピーロの腕にそれをしっかりと結び、止血する。


「馬鹿野郎!!!まだ諦めるな!直に助けが来る!!」


「いえ、もう血を流しすぎました。」


ぐったりとしてヴァンピーロの顔がどんどん青ざめていくのがわかる。


「何とかならないのか!お前なら腕を生やすぐらい出来るんじゃないのか!」


「先程の火魔法で魔力をほとんど使い果たしました。今は辛うじて残った魔力を止血と心臓に……無理や・・り……動かすのに……使用してい・・ますゆえ……」


「もう無理するな!喋るんじゃない!」


「腕がどこかに……腕が・・あればなんとかなっ……たのですが……」


「腕があればなんとかなるんだな!!!さっき一応魔力袋にお前の腕を見つけて収納しておいたんだ!!」


え?まじで?と言いそうな顔をしたかと思うとヴァンピーロはシャキッと背筋を伸ばし、アイザックに向かって言った。


「なんだ、早く言ってくださいよ。死にそうになっていました。早く持ってきて下さい。」


先程までの弱気だったヴァンピーロはいずこへ。


「おっおま!ぐぬぬ!!そこで待ってろ!!」


態度の変わり様を指摘するのはあとだ!


アイザックは腕を隠した茂みを探しに行った。


「あー意識が途絶えそうですねえ。間に合いますかなあ?」


アイザックが去って行ったのを確認すると自分の意識を確かめるようにヴァンピーロは呟いた。


「腕!!どこだ!!確かこの辺の茂みに!!」


そして自分の魔力辿ることに集中する。


『トレース』


あった!あそこだ!!入り組んだ洞窟や人の多い街などではほとんど使い物にならないトレースも、自然しかないここでは非常に有効だ。


自分の魔力を感じる方向を探し当て、無事ヴァンピーロの腕が入った魔力袋を発見した。


急いでヴァンピーロの元に戻る。


「見つけたぞ!!大丈夫か、ヴァンピーロ!!」


駆け寄りながら、魔力袋の中から腕を取り出した。砂だらけになっているそれを渡す前に綺麗にする。


『洗浄』


「ほら!腕だぞ!くそっ!!目を開けろ!!」


「うっ……」


既に気を失いかけているヴァンピーロの肩に腕を押し付けた。


「腕があればなんとかなるんだろう?おい!!」


そうアイザックが叫ぶと、腕から突如、煙が上がった。


シュウウウウウウ


「……ん?ああ、一瞬気を失っていましたか……おや?むずがゆいと思ったら腕を押し付けてくれたのですね。これで大丈夫です。」


「ああ、良かった。これで死なないんだな?」


「いえ、腕をつけただけでは、実はまだ万全ではありません。止血に使っていた魔力を今、腕を繋げるのために使用していますが、今度は血が足りません。」


「血が?どうしたらいい?俺には何が出来る!!」


アイザックは今にも泣きそうだ。


「お館様の血を少し頂いてもよろしいでしょうか?」


「そんなことか!!それでお前が助かるなら持っていけ!!」


アイザックはヴァンピーロが何かを言う前に、腕をヴァンピーロの口に押し付けた。


「では、ありがたく。」


アイザックが断るわけないと踏んでいたヴァンピーロは遠慮なくアイザックの腕に牙を立てた。


「あれ、全く痛くないんだな。」


「痛ふもできまふお?」


腕に口をつけたままフゴフゴと喋るヴァンピーロ。


「いや、なんでもない。さっさと飲んでくれ。」


10〜15分ぐらいそうしていると、ヴァンピーロが口を離した。腕を見るとシュウシュウと湧き出ていた煙もおさまっていた。


「ふう。もう大丈夫です。残りは後で魔獣でも探して狩ってきます。さあ、馬車に戻りましょう。」


「いや、もう大丈夫なのか?動いて平気なのか?」


「ええ、普段は果実や生肉しか食べませんが、本当のことを言うと主食は血液でして。血液であれば人族だろうと魔獣だろうとなんだって良いのですが、回復力が大幅に上がるのですよ。だからもう大丈夫です。いやー体が鈍っているようですな。まさかあんな小物にやられそうになるとは!はっはっは!!!」


確かにほぼ全快している様子に見えるヴァンピーロを、それでも不安そうにアイザックは見つめた。


「分かった。その言葉、信用するぞ?」


「ええ、お館様の魔力袋も今から会いに行くお嬢様の私物も置きっぱなしですし。さあ、行きましょう。」


大して落ち着く間も無く、二人は馬車に向かって歩き出した。


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