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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
72/83

第72話 欠落 Re:birth

私生活の方が落ち着かず間を開けて申し訳ありません!

ではどうぞ!

「叶夢!」


時は戻り、光の中に消えた叶夢に向けての千夜の叫び声がコロシアム中に響く。


「あの野郎‥何無茶してんだにゃ!」


「というか今左手飛ばされてませんでした?」


「気のせいじゃなければだけど‥」


光が弱まり、二人の姿が段々と目視出来るようになったことでようやく四人の目に映る。


「‥驚きましたよ。左手を吹き飛ばされても果敢に襲いかかってくるとは‥」


「そりゃどーも。まぁ利き手を殺せなかったお前の不運だ」


四人の目に映ったのは左手がもがれた叶夢と、無傷で立っていた司の姿だった。

叶夢は刀の持ち手を咥えながら、空いた右手で消えた左手に治癒魔法を掛け、止血を行いながら司を睨みつける


「では次は確実に‥」


「次なんてあげるわけないだろ」


「片腕だけで私に抗えるとでも?」


「思ってねえ‥けど一本ありゃ十分だ」


叶夢は足元に転がっていた自分の左手だった肉塊を司に向けて蹴り飛ばす。


「愚かな策です」


そう言った司が叶夢に向けて手を翳すと、その肉塊が司を大きく逸れて宙を舞う。垂れた血液が司に降り注いだ。


「汚らわしい血をよくも‥死角から来ることはわかっています!」


司から見て右手の後ろ側。刀を咥えた叶夢が距離を詰めてそのまま刀身を首で振る。しかしその一撃は司の後ろに向けた短剣に封じられ、衝撃で口から刀が離れる。


「脆い‥」


「‥」


叶夢は表情を変えずに弾かれた刀を右手で掴み取って刀を振る。


(この程度で終わりとは私も思っていませんよ)


「なるほど、お前。かかる衝撃が全部反発する力に変えてんだな? ベクトルを変えてるって言った方がわかりやすい。ということは簡易施術で打ち込んだのは重力魔法で合ってるか?」


「このタイミングでの看破は見事‥ですがそれでどうなるというのですか?」


「語らずともお前の身体に答えを刻んでやるさ」


叶夢は反発した力を使って右手の刀を宙に放る。


「ばかな!?」


意味不明の行動に司の視点が刀に釘付けになる。その瞬間、左手から垂れた血が司の目に点眼されて視界を塞ぐ。


「ぐっ!」


「あばよ」


刀と左手は未だ宙に浮き、右手は斥力によって折られて動かず。魔法すらまともに使えないもはや叶夢に武器は無い。故に今の叶夢に攻撃手段は無い。


「‥ぜーんぶひっくり返せるんだ。『怠惰おれ』なら」


「は?」


その言葉が聞こえたと同時。司のこめかみに強烈な衝撃が走る。司は痛みの中で鮮明に生きる意識で何が起こったのかを知った。


(上段‥回し蹴り!?)


叶夢は右脚を高くあげて、その蹴りを司の脳天に直撃させた。


「常時発動じゃないみたいだな‥」


叶夢は司を一撃で地面に沈めると、落下してきた刀を右手でキャッチするとそのまま横たわった司の背中に刀を突き刺した。


「がはっ‥」


「悪いが、俺は頭さえ残ってればそこから情報を抜き取れる。お前が舌噛んで死のうが口を割ることになるだろうさ」


「なるほど‥容赦が無い訳だ‥‥ですが、油断ですね。このまま私を放置するというのも!」


「‥!」


司の人差し指から叶夢に向けて細い光線が放たれる。ノールックで叶夢の額へと向けられた光線は、咄嗟に叶夢が避けたことで頬を撫でる程度で済んだが、同時に叶夢の司への意識が無くなったことを意味していた。


「くらえ、ジャッジメン」


「‥黒き悪夢の腕ブラック・アーム


司が放とうとした魔法は、叶夢の闇魔法によって形成された巨大な左腕によって司の背中の肉を抉りながら薙ぎ払われる。


「ぐああああ!」


「喚くなよ。耳が痛い」


「はぁはぁ‥」


「じゃあな、司。お前、大して強くなかったよ」


「くく‥まだまだ‥この程度で終われるはずがない!」


「往生際の悪いやつだな」


「時間を‥与えすぎなんですよ!」


司の叫びと共に五人の目に異常な光景が映りこんだ。司の身体に刺さった紅祟が真っ直ぐ空に飛ばされた。


「くそっ‥!」


叶夢は刀をつかみ取ろうとするが、司が投擲した短剣に手のひらを貫かれる。痛みで叶夢の顔が歪んだ。


「これが天が許してくれた私のチャンス‥さぁ、死になさい! 裁きの聖光ジャッジメント・ライトブレイザー


立ち上がった司の手のひらから光魔法の奔流が放たれる。


(右手が使えなくなったか‥‥下から打たれて終わりだな)


「ッ!?」


諦めの思考とは裏腹に叶夢の顔は不気味に笑っていた。司がそれに気づいた時、すでにその詰みの盤面に一手が落とされていた。


「何故‥そんな‥ありえない! 何故、弾いたはずの刀が私に刃を向けている!?」


「右手が使えないなら左手使う。簡単な事だろ?」


「ありえない! その血塗れの左手で‥そもそも切断された左手がなぜ貴方の元に戻っているんだ!」


理解を拒む。時を戻し、それらの目に映ったのは存在しないはずの瞬間。叶夢の左の前腕から伸びた筋肉や血管などが宙を漂っていた左手の神経を繋げる。


(よし動くか‥‥あとは思いっきり振り下ろせば)


辛うじて残った三本の指が動くのを確認した叶夢はそのまま左腕を司に向けて振り下ろす。その軌道にあるのは司自身が弾いた紅祟であり、それによって本来では有り得ないカウンターが司に襲いかかる結果となった。


「オートカウンターなら、防げたかもな」


「ぐっ‥こんなことが‥あってたまるか!」


司は魔法を止めて紅祟を短剣で退けるが、刀の離れた左手は司の首を即座に掴んだ。


「がっ‥」


「それで逃げたつもりかよ。魔法撃ってたほうがまだマシだったと思うぜ」


司の首を掴んだ叶夢は左手に繋げた筋肉や血管を使って自分の伸び切っていた部位の位置に巻き取られたメジャーのように自分の身体を移動させると、そのままの勢いで魔力を込めた右の拳で司の顔面を殴り付けた。


「はい捕まえた。近付ければこの通りだ」


「き‥さ‥ま‥」


「何言ってるか聞こえねえよ。もっと口開けて話せ」


叶夢の言葉と行動は真逆に、司の喋らせることなくその拳を司の顔面に当て続けた。


「なんだにゃこれ‥」


「戦い‥というよりは」


「一方的な虐殺‥です‥」


(これが叶夢くんなのか?‥いやこれが彼の戦い方。紅い死神としての戦い方ではなく、ゼルリッチの魔子としての戦い方なんだ)


しばらく司を殴り続けた叶夢は、ふとその手を止めて、右手のそばに刺さっていた紅祟を手に取り司に向けて振り上げる。


「げほっ‥」


「‥おもしろくねえな‥ッ!」


愚痴を吐き、刃を振り下ろそうとしようとした叶夢が突然喉を抑え出す。それを知ったかのように苦悶の表情を浮かべていたはずの司の口角が吊り上がっていた。


「ざん‥ねんですねぇ‥もう少しであったというのに‥」


「何があったんだにゃ!?」


「まさか叶夢‥エレベーターの中でかけられた魔法が起動したんじゃ‥」


「エレベーターでかけられた?‥櫂の魔法か!」


「それって裏路地の時と同じ‥!」


「叶夢! どうにかして喉の石を吐き出すにゃ!」


「無駄です! 彼の喉の石は急成長を続けている! もはやそれを摘出する術はない!」


血を吐きながら高らかに司は勝利を確信する。


「‥‥これで‥終わりかよ‥なら、大した事無いな‥」


「は?」


叶夢は右手の紅祟の刀身を自分の首に押し付けて、勢いよくその刀を手前に引く。首の皮膚を巻き込みその動脈から勢いよく血液が飛び散る。


「何やってんだにゃ!?」


叶夢はその傷口に手を伸ばしてそのまま血液が溢れるのを顧みず、喉の傷を掻き回す。そうしてそこから球体の石を抉り出した。


「ば‥か‥な‥」


「‥これで奥の手は終わりだ司」


叶夢は取り出した石を司に投げ捨てて、司に向けて刀を振り下ろした。


「こんな‥結末は‥認めないッ!」


司が叫んだ瞬間、身体が眩い光を放った。その光は近くにいた叶夢はおろか、離れてみていた四人の視界すらも奪った。


「クソっ、眩しいにゃ!」


「気をつけて叶夢くん! また攻撃が‥」


「違います! 紫以奈、入口の方向に向けて発砲を!」


「え!? わかった!」


千夜の指示を受けて、紫以奈がハンドガンを真っ白に染まった光の中に打ち込む。


「ぐっ‥」


紫以奈の弾丸が光越しに司の身体を貫く。それに反応した叶夢が白に飲まれた世界を駆ける。


「よくやった千夜、紫以奈‥どんだけ往生際が悪いんだよ。お前は」


ドアの前。吐き出した言葉の反響でその位置を知った叶夢は紅祟に溜め込んだ魔力を解き放つ。


(斬撃じゃ多分仕留めるのは無理だ。ならこうすりゃいい)


叶夢は魔力の爆弾と化した刀身を地面に突き刺す。しかしその位置には司は既に居ない。


「どこを狙っている! その位置では私にゼロ距離で魔法を当てることは出来ない!」


「誰が直接当てるつったよ」


行き場を無くした魔力が地面に流れ落ちる。司が叶夢の言葉の意味を知るのはそれを見たと同時だった。


黒い閃光の剣ブラック・レイヴン・ブレイド点火イグニッション


視界が晴れたかと思えば入口付近で黒い爆発が起きる。


「叶夢くん!」


「ギリギリで逃げたか‥まぁいい利き腕は使い物にならなくしてやったし‥‥場所移動するぞお前ら」


「了解です!」


「豹ちゃん? 走れる?」


「あぁどうにかにゃ‥‥さっさと追ったらどうだにゃ。叶夢」


「あぁ。お前が無事で何よりだよ」


「‥そうかにゃ」


叶夢は豹助と言葉を交わすと、コロシアムの外に駆け出した。明かりがない廊下では視界は暗いまま。流れ出した血液による血痕すらも確認出来なくても、その匂いが司の位置を知らせ続ける。走り続けた先に僅かに明るく開けた場所に出た。


「くそ‥ここまで逃げられ‥ッ!」


叶夢が出た場所は地上に続く螺旋階段の部屋だった。その中で司を探していた叶夢の目に最初に映ったのは、今まさに朔夜にトドメを刺そうとしていた櫂の姿だった。


(間に合え!)


「「朔夜ーー!」」


叶夢は右手に持った刀を逆手に持ち替えて、櫂に向けて力の限り投擲する。


「ぐっ!?」


紅祟は金属片を放つ直前の櫂に突き刺さる。しかしその手から既に魔法は放たれ、金属片が今まさに瀕死の朔夜の身体を貫こうとしていた。


(クソがッ!)


叶夢がボロボロの魔力回路に魔力を込めようとした瞬間。叶夢の目に階段の上から白い人影のようなものが落下していくの様が映り込む。


(くそっ、まだ上にも敵が‥いや、あの髪に両手に武器?‥赤と青の‥刀!)


叶夢はその正体に気づくと、笑みを零す。

朔夜に迫っていた金属片はその白い人影が持った刀に斬り裂かれた。


「え?」


「ギリギリだった‥あそこで叶夢が刀を投げて無かったら金属片が上に逸れてくれなかったから、こうやって斬り飛ばす事も出来なかったし。随分と運がいいね朔夜」


「‥ったく、タイミングが良過ぎんだろ。白銀先輩!」


焔の帯びた刀と霜の降りた刀を両手に持ち、白銀しらがね 竜次りゅうじが朔夜達の前に降り立った。

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