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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
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第63話 廻ッタ裏切リ者

叶夢達は裏路地の道を静かに歩き、帰路に着いていた。遺体の場所が見えなくなると、豹助が詰まった息を一気に吐き出すように沈黙を破った。


「はぁ、何だにゃこのクソ重空気」


「死体見つけた帰りなんざこんなもんだよ」


「いや隊長、そういう問題ですか!?」


「とりあえずこっからどうするか。天城や紅葉に連絡取って情報交換からか‥はたまた朔夜からの指示を待つか」


「というか叶夢はどうなんだにゃ」


「どうなんだって何だよ」


「とぼけんにゃ。疑ってたろ」


「あーバレてたのか」


叶夢は誤魔化すように豹助に不気味に笑みを返す。しかし豹助は叶夢のその顔に少し違和感を覚えた。


「あんまりいい収穫とは言えなさそうな顔してるにゃ」


「そりゃそうだ。アレはクロじゃない」


「叶夢くん。司の事がっつり疑ってたのね‥」


「まさか俺が初見野郎に信用から入ると思ってたのか?」


「性格悪い関係なしに誰だってそうだと思うけど‥で、叶夢くんがそう思う根拠は?」


「遺体見せたときの反応だよ。あれは本気で驚いてた」


「それだけかにゃ? いまいち理由としては弱い気が‥」


「あいつ自身が埋めたとするなら、あんな反応出来ねえよ。あの驚きの反応は嘘0%の初見反応だ」


「叶夢がそこまで言うのなら、本当なんでしょうけど‥」


「となるとほんとに顔見知りの中にしかいないのか?‥‥あるいは本当に‥」


叶夢は焦りを抑えられないまま、自らの爪を噛む。心の声が口に出ていることがそれを何よりも証明していた。


「叶夢‥」


「おいおい、お前がそんなに焦ってどうすんだにゃ?」


「そうだよ叶夢くん。君がそんなに焦って状況が変わるわけじゃないし」


「‥そうだな」


叶夢は自らの髪を乱暴に掻き乱して、気を紛らわす。


「そんなことより早く帰って夕飯にありつきたいにゃ」


「夕飯当番って今日って誰だったっけ? 豹ちゃん?」


「あ、俺だ。よし、このイライラは家事にぶつけるとするか」


「大雑把にやらないでくださいよ。主に香辛料」


「大丈夫だよ。どんだけミスってもお前レベルには落ちねえから」


「どういう意味ですか!?」


「その通りの意味だよバーカ」


叶夢と千夜の小競り合いを紫以奈と豹助は笑いながら見ていたが、白鳩は一人前と時計を交互に見て首を傾げていた。


「あれ、時計壊れたかな?」


「どうしたにゃ白鳩」


「いや、帰り道にしては長過ぎる気がしてさ。行きは道に迷ってたとはいえ、こんなに時間は掛からなかった。だけど今はこの道だけでかれこれ二十分近くは歩いてるよ僕ら」


「‥‥もしかして私達、罠にハマってます?」


「千夜、もしかしてじゃなくて普通にそうだにゃ‥」


全員が武器を構え直す中、叶夢はポケットに手を入れたまま立ち止まり、舌打ちをした。


「全く‥丁度いい。八つ当たりに付き合ってもらうかクズ共」


叶夢が壁に手をつけ、闇魔法を流し込む。すると四方の虚空にヒビが入り砕け散る。


「囲まれてるね‥」


「後ろも駄目っぽいです‥叶夢」


砕かれた空間から多数の人間が叶夢達の逃げ道を塞ぐように前方と後方に現れた。


「ったく誰の差し金だにゃ」


「本当の内通者様以外有り得ねえだろ。にしてもどっから聞きつけたんだか」


叶夢の問に対して、前方にいた一人が後ろの人混みから乱暴に子供を引きずり出した。


「あの子は‥」


千夜が子供を見た瞬間に顔が青ざめる。その子供は叶夢達が最初にあった子供だった。しかしその子供の顔には何かで殴ったことで出来た痣があり、腕や膝にも同じような痣や出血があった。


「可愛そうになぁ、お前らが関わんなきゃこいつがこんな目に遭うことは無かったのにな!」


短めの髪にピアスをした男が、子供の腕を乱暴に上げながら叫ぶ。叶夢達はそれを見て苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。


「いいかお前ら! 遠慮なく殺せ! 危なくなったら持ってきたガキ共盾にしてこいつらを鈍らせろ! やれ!」


ピアスの男がそう叫ぶと、前後にいた男達がいっせいに叶夢達に向けて走り出す。


「‥‥この外道共がにゃああああああ!!!」


男達の武器や魔法が叶夢達に着くよりも早く、豹助がその拳を後方の男に直撃させた。


「叶夢! こいつら全部征魔士ウィザードなら魔法使っても罰は受けねえよにゃ!?」


「当たり前だ‥お前ら、殺さなきゃ何でもいい。好きにやれ」


「「了解!」」


豹助が後ろに進み、叶夢が前に走り出したのを見て、千夜は地面に手をつけて魔力を流す。


「皆さん足元に気をつけてくださいね!‥地を這う吹雪ブリザガ・グランド!」


二人の後を追うように氷が地面を走る。


「あっぶにゃ!」


豹助と叶夢はその足を身体の内側にしまい込んで氷結に足が巻き込まれるのを防いだが、男達は反応が遅れて足が氷に巻き込まれてしまった。


「くそっ!」


「慌てんな! たかがガキ共だぞ!」


叶夢が近づくにつれて、男達の意識は必然的に武器である刀に向く。


(さぁ早く刀を抜けよ‥お望み通りガキをさびにしてやるからよ!)


豹助と叶夢は武器を構えるが、その意識はただ目の前の障害を打ち破ることに向く。


(剣抜いて最速で切り伏せる。それが最善策だが)


(あくまでそれは安全策を考慮しなかった最善策っていう話だにゃ)


(となりゃやるべきは)


(ギリギリまで武器に意識向けさせて)


二人の思考が重なる。射程に入り武器にかけていた手を強く握り締め


「!?」


豹助はその拳を男の顔面に叩きつけ、叶夢は拳を合わせてエルボーを男の頬に突き入れた。


「「前言撤回! ぶっ殺すッ!」」


叶夢と豹助が攻撃を仕掛けると、白鳩と千夜が続いて走り出した。


(クソどもは俺たちがやるにゃ‥)


(お前らは)


(子供を奪い返してやります!)


(任せてよ!)


四人はアイコンタクトで互いの意志を確認して、行動に移す。それを見た紫以奈は腰のホルスターからハンドガンを二丁取り出してそれぞれ銃口を前後の男達に向けた。


「皆さん! あとは上手くやってくださいね! 風の弾丸ウィンド・バレット!」


紫以奈は狙いをつけて、弾丸を放つ。足元に着弾した弾丸は強風を吹かせて足元の氷を一瞬で払った。


「今です! 子供たちの保護を!」


叶夢達は男たちをどかしながら子供達の手を引く。


「大丈夫か! 捕まってろよ!」


叶夢は一人を自分の背中に乗せて、空いた両手でもう二人を脇に抱える。途中男が襲ってきたが、叶夢は左足で男を蹴り飛ばして紫以奈の元に走り去った。


「千夜! そっち残り二人だ!」


「叶夢! こっち五人全員連れてきたにゃ!」


「ナイスだ豹助! 白鳩!」


千夜は二人の子供の手を引き既に走り去ろうとしていたが、体勢を直した男のひとりが千夜に向けて鉄パイプを振り上げていた。


(しまった!)


それに気付いた千夜は後ろを走っていた子供の手を思いっきり引っ張り、押し出す形で先に走らせた。


「行って!‥‥ッ!」


二人のうち、一人は叶夢たちの元に辿り着いたがもう一人は途中で転んでしまい立ち上がれずにいた。千夜はその姿を見てすぐに走り出す。しかしそのすぐ後ろには男達が迫っており千夜自身の逃走時間がゼロに近づいているのを告げていた。


「大丈夫!? しっかりしてください!」


「千夜! 後ろ!」


子供の体勢を立て直したと同時に、千夜の頭上に凶器が振り下ろされる。それを知った千夜は間に合わないと知った子供を抱き寄せ、自分の中に隠すようにしゃがみ込んだ。


「千夜!」


叶夢の叫びも虚しく、凶器の鉄パイプは千夜の頭に真っ直ぐに振り下ろされ何かが割れる音ともに真っ二つに折れた・・・


「は?」


全員の呆気に取られた声が路地にこぼれる。頭に強烈な一撃を当たられた千夜本人は歯を食いしばりながらも笑みを浮かべていた。


「残念‥でしたね‥死ぬほど痛いですけど!」


「どういうこ」


男が疑問を投げかける前に叶夢の拳が顔面に突き刺さる。男は仲間たちを巻き込みながらその衝撃で路地のはるか向こうに飛ばされた。


「ったく、お前なぁ! 心臓に悪いから変な賭けしてんじゃねえよ!」


「助かったからいいじゃないですか! それに叶夢が無理してる時のハラハラはこんなもんじゃないんですからね!」


千夜は打たれた頭を手で払いながら、三人の元に歩く。事態が飲み込めていない三人は空いた口を塞げずにいた。


「ふぅ‥どうしたんですか?」


「いやどうしたじゃねえにゃ!? お前なんでそんな平然としてられるんだにゃ! 頭変なところにでもぶつけたんじゃないかにゃ!?」


「ぶつけたというか、殴られましたけど」


「そういう問題じゃなくて! どうして平然としてられるのって聞いてるの!」


「あ、なるほど」


千夜は頭の打たれた箇所から透明な破片を取り、それを三人の前に差し出した。


「凶器が当たる直前に頭を凍らせたんです。氷の密度をかなり圧縮させた分、衝撃はだいぶ殺せたかな〜とは思ったんですけど‥‥超痛かったです」


「だろうね! だって鉄パイプ折れてるからね!」


「え‥‥うわ本当です!」


「千夜‥あえて言葉選んで言わせてもらうけど、馬鹿なの?」


「言葉選んでそれですか紫以奈!?」


四人が話してる間に、豹助側にいた男たちが体勢を立て直した上で再び襲い掛かってきた。


「ったく、どんだけ来るつもりだにゃ!」


「豹ちゃん私も!」


「紫以奈と千夜、白鳩は子供守ってろにゃ! 俺がこいつら全員戦闘不能にしてやるにゃ! 」


豹助が一人男たちを相手にしてるとき、千夜はふと叶夢の方に目を向ける。しかし千夜が目を向けた先に、叶夢はおろか男たちの姿すらなかった。


「あれ、叶夢は?」


「あっち片付けてるんでしょ‥あれ戻ってきた」


千夜の疑問はすぐに晴れることになる。路地の向こうから息を切らした叶夢が男のひとりの襟を掴んで引き摺りながらこちらに戻ってきた。


「そっちは終わりそうか?」


「何とかね。それは?」


「リーダーっぽい奴。鼻の骨折って戦闘不能にさせた」


「それ話せるんですか?」


「舌抜いてねえから大丈夫だろ」


「にゃんだよ。そっちかにゃリーダー」


しばらくして豹助も戻って来た。叶夢は四人が揃ったをの確認して、リーダー格の男を壁に寄りかからせた。


「さーて誰の差し金だ? なんで俺らを狙った?」


「何だよ‥聞いてねえよ‥こんなにつええなんて‥」


「独り言呟けなんて一言も言ってねえんだけど‥‥最終通告だ。吐けばその傷治して見なかったことにしてやる。吐かなきゃ死んだ方がマシって言える拷問コース直行だ」


「し、しらねえ! 俺たちはただ雇われただけだ! アイツに‥アイツに‥」


「そのアイツについて吐けって言ってんだろ」


叶夢は、その顔面を殴ろうと拳を魔力と力を込めて振り上げる。


「叶夢!」


「千夜は静かにしてろ。こいつらだってそれぐらいの覚悟はして俺らを襲撃した。それなら‥‥」


「そうじゃなくて! そいつの様子、なんかおかしいです!」


「ガッ‥ガッ」


「おかしい? どういう‥‥ッ!?」


叶夢が男に目を向けると、男が突然苦しみだしていた。それを皮切りに殴打で気を失っていた男達も喉を抑えて同様に苦しみだし、まともな呼吸が出来なくなっていた。


「何なのこれ‥いっせいに」


「クソが!」


叶夢は苦しむ男の腹を思いっきり蹴り上げる。


「何やってんですか叶夢!」


「こいつら喉に何かを詰まらせてやがる! 助けたいならすぐに吐き出させろ!」


叶夢は回復魔法で蹴った傷を治しながら、吐き出させる為にそこを集中的に蹴り続けた。しかし叶夢達の処置も虚しく、男達は苦悶の表情を浮かべながら絶命した。


「‥駄目です。誰も息をしてないです」


「こっちもだ‥どうする? 叶夢くん」


千夜と白鳩が安否確認を取ったが、誰一人として生存者はいなかった。


「お姉ちゃん‥この人たち、しんだの?」


「え、それは‥‥」


子供たちの涙を貯めた目を見て、紫以奈の顔がどんどん青ざめる。目の前の死と子供の問答は紫以奈の正常な思考を奪うのには十分だった。


「あ、ああ‥」


「紫以奈! しっかりするにゃ!」


「ごめんなさいごめんなさい」


「叶夢! 早く指示を!‥‥叶夢?」


叶夢は自分が蹴り続けた男の死体を見ていた。


「!‥あった!」


叶夢は何かを発見すると、男の口の中に手を入れて、そこから謎の白い物体を取り出した。


「叶夢、それって‥」


「千夜、白鳩、豹助、紫以奈。子供たち連れてここから撤退するぞ」


「この状況でかにゃ!?」


「当たり前だ。ここに居続けるデメリットの方がでかいからな。それと豹助は紫以奈を介護してやれ」


「わ、わかったにゃ」


「それとその前に‥」


叶夢は白い物体をポケットに入れると子供たちに近寄り、静かに子供の頭を撫でる。


「ごめんな。教育に悪いもの見せて」


叶夢が頭を撫でた子供が次々と気を失った。最後の子供が意識を失うのを見届けると、叶夢は背中に一人、両脇に二人の子供を抱えて歩き出した。


「ほら行くぞ」


「何やったんだにゃ」


「モンテクリストで記憶を消した。ここ数分の記憶だけだがな。あとはこの子らの住処に置いて俺らは去る」


「この死体はどうするんだにゃ」


「警察に任せるさ。変に処理したら俺らが捕まっちまうからな」


叶夢はそう言うと死体を踏まないように、間を縫うようにして歩きその道を抜けた。


ーーーーー


叶夢たちは道を抜けてしばらく歩いた所にある建物の中に子供たちを置くと、そこで緊張の糸が切れたように座り込んだ。


「叶夢、あのまま逃げてきて大丈夫だったのかにゃ?」


「大丈夫なわけねえだろ‥かと言って残ってた方が更にまずかったがな」


叶夢は焦り気味に自分の携帯をいじりながら答える。


「どういう意味だにゃ? 」


「アイツらの死因は窒息だ。この石による‥な」


「その石って、叶夢があの男の喉から取ってきたやつですよね‥‥」


「あぁ‥こいつが唯一ぶんどれた証拠品だよ‥お、繋がった」


叶夢は携帯のスピーカーボタンを押して、通話を始めた。


「もしもし朔夜、悪いやらかした」


『第一声で爆弾投下してんじゃねえよ』


電話の主は朔夜だった。朔夜の反応に叶夢は乾いた笑いを吐き出す。


「事情を三行で説明する。

一つ、裏路地で情報屋の遺体発見。

二つ、帰りに刺客から奇襲された。

三つ、それがくたばった。

終わり」


『一つ目は良くやった。二つ目はドンマイ。三つ目は詳しく説明しろマヌケ』


「俺がやった訳じゃねえよ。死因は窒息。喉から石が出てきやがった」


『それが気道を塞いだのか‥‥』


「あぁ、それだけじゃねえ。この石、妙な点があるんだよ」


『妙な点?』


「妙な点ですか?」


叶夢は四人の前にその石を見せる。その石はペットボトルの蓋ぐらいの大きさをしており、形自体も綺麗な球体であった。


「ペットボトルの蓋並に大きくて、綺麗な球体」


『‥お前バカなのか? そんなもので死ぬ訳ねえだろ。もう一回り大きくねえと‥‥ッ!?』


「ほんと吐き出させて正解だ。こいつ、窒息させた時の大きさから溶けてんだよ、飴みたいにな」


「「「はぁ!?」」」


「シーッ!‥‥子供が起きたらどうすんだよ‥」


叶夢が口元に人差し指を立てて、静かにさせる。叶夢は子供に目を向けて、変わらぬ寝息をたてているのを確認すると、安心したように溜息を吐いた。


『‥おそらく男達を唆した奴が仕掛けた魔法だろうな。証拠隠滅まで図りやがって‥』


「豹助、さっき俺がさっさと逃げた理由話さなかったよな? これが答えだよ。こいつは魔法で作られた石で唾液に跡形もなく溶けやすい性質で出来たヤツだ」


「そんなことまで魔法で出来るのかにゃ‥ほんと何でもありだにゃ‥」


「ほんとムカつくやり方だよ。ちなみに形も残らねえから疑われるのは間違いなく俺らだった。何より、一番危なかったのは紫以奈だったんだぜ?」


「‥え、私‥ですか?」


突然話を振られ、紫以奈は怯えながら反応する。憔悴しょうすいし切ったその顔が今の状況が紫以奈の目にどう写っているのかを物語っていた。


「死因が窒息死になることで、真っ先に疑われるのは唯一気体に干渉出来る風魔法を使える奴、つまりお前に矛先が向く可能性が高い」


「そんな‥‥」


「だからあの場から去るしか無かったんだよ。悪いな朔夜、責任負わせて‥」


『謝るな気色悪い‥わかった、こっちで処理はする。お前は早くそこから撤退しろ』


朔夜からの通話が途絶えるのを見届けた叶夢は、ゆっくり立ち上がり子供たちに近寄る。ぐっすりと眠った寝顔を覗いて、クスッと笑うと先程あげた飴の袋と未開封の飴を近くに置いた。


「行くぞ」


「‥分かりました」


叶夢の言葉と共に四人も重い腰を上げる。子供が起きないようにゆっくりと扉を閉めて裏路地の帰路を駆け抜けた。


「そういや叶夢くん」


「ん、何だ?」


「何であの時迷わず男の腹を蹴ったの?」


ふと白鳩が叶夢に疑問を投げかけた。叶夢は表情を曇らせながらも答える。


「知ってたからだよ」


「はぁ!? てめえ知ってたにゃら」


「そういうことじゃねえ!」


叶夢が声を荒あげ立ち止まる。突然の大声に四人も驚きのあまり足を止めた。同時に千夜の目には叶夢の閉じた拳から自らの爪によって出た血が垂れるのが見えた。


「‥‥この殺し方はゼルリッチがよく用いてた方法の一つだ。だから知ってた。まぁ、サクリファイスがゼルリッチの関係者である以上は同様の手口は使ってくるんだろうって事は予想の範疇に入れとくべきだったんだがな」


「ゼルリッチの手段‥か」


「それでひとつ特定出来た事があった」


「特定出来たこと‥かにゃ?」


「内通者の使ってる魔法だよ。ゼルリッチの手口でこれを使えるのは限られたやつだけだ。少なくとも俺はできない」


叶夢は自分の手から出た血に気付くと、その血を舐める。


「そもそもこいつは喉に何を作った?」


「石‥ですよね。隊長」


「そうだ紫以奈。それで千夜、石を作れる属性の魔法は?」


「‥土魔法!」


「正解だ。例外は割といるが、そのどれもが絶対に該当しない。それでだ白鳩、ちょっと調査頼んでいいか?」


「あぁもちろん。土魔法使える征魔士‥しかもある程度練度がある人間ってことなら特定が進む」


「ありがとよ。それならある程度準備も進む」


叶夢が再び自分でつけた傷を確認する。爪によって出来た傷はすっかり治っており、叶夢はその手でポケットに入れた携帯に手を伸ばした。


「白鳩。今日の夜までに出来そうか?」


「あぁ、帰って直ぐにやればね」


「なら明日から準備するぞ」


「準備って何するんだにゃ?」


「決まってんだろ」


前を見ていた叶夢が四人に顔を向ける。後光に照らされて目を凝らさなければ見えないその顔は四人が見慣れた叶夢の悪意に満ちたニヤケ面だった。


「告発と抹殺だ」

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