第45話 沈むデトロイト
新キャラが登場しますので、キャラステータスをあとがきに貼っておきます!
それではどうぞ!
「やっと着いたわ‥」
「豹ちゃーん?‥‥だめだこれ。しばらく動けなさそうです」
征魔連合軍アメリカ支部から空中輸送機で数時間。叶夢達は無事デトロイトの工業地帯に降り立った。
「予想以上の有様ですね‥ベロニカ隊長」
叶夢達が降り立ったのはデトロイトの湖に面した自動車工業地帯。数週間前にここで突如として魔族の巣が発生し、多くの犠牲者を出した。警察や軍が武装して潜入し手に入れた数少ない情報を元に、リアムが隊を編成し現在に至る。
「昼は魔族の活動が活発じゃないから、こうやって無事に辿り着けたけどね」
「はい、問題はこれから。デトロイトの天気は晴れから雨‥すなわち日が刺さなくなります」
「警戒した方が良さそうね‥」
「何があっても僕がサポートしますから!」
ベロニカと話をしていた深緑色の髪少年は垂れ袖で埋まった右手で自分の胸を叩き、緊張した声を張り上げた。
「おうくん。あたしが言うのもなんだけど、無理はしないでね?」
「いいえ! この第一小隊副隊長オズワルド・ガルシア。全力を持って元同僚もサポートをしますから!」
「なんと言うか‥ベロニカもまたキャラ濃いやつを副隊長に付けられたな‥」
「何よ叶夢、あんたよりマシよ。隊員には迷惑掛けてないし‥」
「貴方が朔夜隊長ですね! 今回はよろしくお願いします!」
「お、おう‥よろしく‥」
「どうしたんですか? 元気がありませんが‥もしかしてどこか具合が?」
「いや、大丈夫だ‥」
「ほんとですか? にしては声にも元気が‥」
ベロニカの手を離れたオズワルドは、朔夜に声を掛けた。朔夜は戸惑い気味に応対していた。
「おっくん、それ以上朔夜に話しかけない方がいいわよ? そいつそれで平常運転だから」
「そうでしたか! 失礼します!」
「おう‥悪いな‥」
「それじゃ皆集まって、作戦の確認するから」
ベロニカがそう言うと、オズワルドはバッグからタブレットPCを取り、地図の画面を表示した。地図の画面には地形の他に2km×2kmの割合で線が引かれており、デトロイトを九分割してあった。その上に電話のダイヤルと同じ順番で1から9のエリアを振り分けていた。
「オッくん。今どのエリア?」
「僕らが着陸したのはエリア5です。そして魔族の巣が発生したのは 2.3.4.8 の4エリアです」
「多過ぎないかにゃ‥おえ」
「そしてあたし達のサブターゲットはサクリファイスの手掛かり。レーダーのデータをサルベージしたのはどのエリア?」
「それならここエリア5です。ここから少し行った場所に観測所がありますから、そこを調べましょう」
「さすが頼りになるわ。うちの副隊長は」
「えへへ‥‥褒めても何も出ませんよ‥‥」
「「うっ‥」」
「ど、どうしたんですか!?」
オズワルドの照れた反応を見ると、朔夜と叶夢は口を塞ぎ肩を震わせた。
「ちょっと、あたしをいじめるのはいいけどオッくんに対してそういう嫌がらせは無しよ」
「いやそういうわけじゃない。お前にも俺たち以外に接してくれる仲間がこの世に存在したんだなーって‥なぁ朔夜」
「あぁ‥世の中捨てないで良かったなベロニカ」
「あのね‥あんたら二人がボケるとあたしがツッコミに回らなきゃ行けなくなるから」
「不思議だな。この会話だとベロニカが一番まともに聞こえる。俺も朔夜もお前もも変わらんのにな」
「三人とも脱線してます! 作戦会議に戻りますよ!」
「終わったら言ってくれー」
オズワルドは声を張り上げて三人を黙らせると、再びデータを全員に見せる。
「今回は長期任務ということもあって時間は二週間もあります。ので、一つのエリアを僕達三つの小隊で時間をかけて調査をして行きましょう」
「はーい。ちょっといいかいオズワルドくん?」
「どうかしましたか白鳩さん?」
「さすがに十五人固まって歩くのはリスクがでかいんじゃないかな?」
「勿論固まって動くということはありません。小隊同士で分かれてもらいますから」
「回る順番はどうするの?」
「今日はエリア5の調査を行います。理由としては」
「任務中はここが拠点になるから‥だろ?」
オズワルドの言葉を遮るように、朔夜が口を開いた。
「ええそうです。さすがベロニカ隊長の元チームメイトですね」
「ここは建物が少なく見晴らしもいい小高い場所だ。何より全エリアに面してるからこそ魔族が来たら一発でわかる」
「すごい! そこまで理解してくださっていたんですね!」
「ちょ、ちょっと待ってください!? 全エリア? 一気に攻め落とされたら終わりじゃないですか!」
「そ、そうですよね‥」
千夜が地図を見直して慌てた表情をうかべる。オズワルドはそれを聞くと苦笑いを千夜に返した
「拠点を決めたのは僕じゃなくて隊長なんですよ。実際これって大丈夫なんですか? ベロニカ隊長」
「むしろこれしかないわよ。だいたいほとんどの魔族なら、あたしと叶夢と朔夜で事足りるもの」
「「「あぁ‥‥」」」
他の隊員は納得と諦め半分の声を漏らす
「ちょっとみんな、そんな視線私に向けないで。戦いの前に濡れちゃう」
「イキリムーブかました後に性癖に走るな」
「いでっ!」
顔を赤らめたベロニカの頭に、朔夜の槍が振り下ろされる。鈍い音と共にベロニカは倒れ、頭を抑えて地面を転がっていた。
「というか勝手に俺を戦力に数えんな」
「何よ! あたしたちゼルリッチの魔子なら余裕でしょ!」
「火力トップ2のゼノンとラインハルトが抜けてることに気づけマヌケ」
「‥‥それでもやれるわ!」
「言い出しっぺは俺たち以上に魔族狩れよ?」
朔夜はベロニカにそう冷たく言い放すと、槍を背中に収めた。
「「それで‥」」
気を取り直した朔夜とベロニカは、少し離れた場所に視線を向ける。
「「お前はいつまでそこにいんだよ!」」
「ん? ミーティング終わった?」
その場所にいたのは、外に視線を巡らせた叶夢だった。叶夢は最初から話し合いに参加していなかった。
「あんた、話聞いてた?」
「聞いてない。まぁ意見は同じだろ? ここを拠点にしてエリアを全員で回る。防衛してる時は俺一人で守る」
「前半ちゃんと聞いてるなぁって思ったあたしの心を返して」
「冗談だよ‥俺はその作戦でいいと思うぜ?」
叶夢は気だるそうに欠伸をしながら仲間たちの元に駆け寄ってきた。
「というか調査つっても、こんな開けた場所に何かあるとも思えんが‥」
「サクリファイスの反応を捉えた観測所があるって言ってただろ。ホント話聞いてねえな」
そう言うと朔夜は槍の柄の部分で叶夢の頭を小突く。
「いてっ‥‥なら早く行くぞ」
「大丈夫かにゃ‥」
話し合いを済ませると、叶夢達は小高い丘の上にある観測所に足を踏み入れた。観測所は魔族の襲撃によって窓ガラスが割られ、がれきが散乱し、廃墟となっていた。
「随分と派手にやったもんだな‥叶夢、どう見る」
「通路が狭い。刀が振りにくい」
「誰が間合いの話をした。被害の状況だバカ」
「なんだよ、それならそうと‥」
「勝手に先行しないでくれる? この観測所はここ一階と二階、さらに地下室もあるのよ。勝手に行動して罠でも踏んだら‥」
「じゃあ俺地下いただきー」
叶夢はベロニカの言葉の途中に手を上げる。
「ちょっと! まだ話してる途中!」
「別に大して変わらないだろ‥ほら行くぞおまえらー」
「ほんとすいません‥うちの叶夢が‥」
千夜がすれ違いざまにベロニカに軽く一礼すると叶夢は第31小隊の仲間を連れて、玄関正面にある地下へ続く階段を降りていった。
「あいつ‥ほんっと変わらない!」
「同感だ。あ、俺二階で」
「人数追加‥あんたも大概よ」
「落雷の巻き添えを食らってもいいなら、 二階を譲ろう」
「それ取引じゃなくて脅しよ‥‥もう好きにして」
ベロニカが呆れながらそう言うと朔夜は静かに二階に上がっていった。
「隊長‥大丈夫ですか?」
「‥‥いつも通りだから気にしないで‥」
「あはは‥いつも通りなんですね。もう少しきつく言っても良かったんじゃないですか?」
「あのバカ二人‥だけじゃなくてゼルリッチの魔子はみんなあれなのよ。今更言ったところで変わるものじゃないわ」
ベロニカは話を続けながら一階を進む。
「ただ、あいつらはその部分を除いても、確実に何かを掴んでくる。それこそ手がかりに繋がる何かをね」
ベロニカはそう言うと、仲間を連れ薄暗い一階の奥を進んでいった。
ーーーーー
「何かあったかー?」
「いえ! まだ見つかりません!」
二階に進んだ朔夜は、荒れ果てた管制室に足を踏み入れていた。管制室はサクリファイスのデータをサルベージした場所であり、朔夜はそこにあるファイルなどを確認していた。
「にしても朔夜くん。ほんとにここで良かったの?」
「戦闘になっても余裕で対処はできる。それにこんな重要拠点。サルベージしたデータだけで終わることも有り得ないだろ」
「というと?」
「このデトロイトが攻め落とされた事実。その下には確実に基盤が存在する。ここら一帯を滅ぼすのに、いくら巣があるといっても魔族の数が足りないんだよ」
朔夜は本棚から、ファイル以外に一冊の本を取り出した。
「元々デトロイトは治安が悪い分、人間の悪意が溜まりやすい場所でもある。それらは魔族にとっては最高の餌だ」
「それぐらいはわかるよ。だからこそここには民間の征魔士が多く動員されてて‥‥」
「ならわかるはずだ桐原。一定数は狩られてるからこそ、この数を揃えるのは至難の業だ」
「つまり?」
「これは仮説なんだが‥サクリファイスには魔族の統率能力が含まれてるとした場合。攻め込む数日前に魔族の数は激減してるはずなんだ」
「そうか‥兵力の温存!」
「この観測所は魔族を感知してすぐに民間の征魔士に連絡するのが役目だ。そんなヤツらが書いた日誌ならその神経が敏感になってるはずだ。だからこそそれに書かれてるはずだ」
朔夜が開いたのは襲撃を受ける三日前のページだった。
「桐原、読んで見ろ」
「えーと‥日付はちょうど三日前‥で」
『今日は魔族を観測することは無かった。珍しい日もあるものだと言いたいところだが、一週間前から徐々に減っていた数字が0になった。少し妙にも感じる‥』
桐原が読み上げたページには、魔族の数が徐々に減って観測なしになるまでが書かれていた。
「これって‥」
「統率能力がある説が濃くなったな。お前ら、ここのファイルとこの日誌を押収しとけ」
「「了解!」」
「さてと‥別の部屋を調べてくる。桐原、頼んだ」
朔夜は指示を出すと、静かに部屋を出る。
「‥‥くるか」
そう呟いた瞬間、下の階から爆発音が響いた。
「何の音!?」
「遅いお出迎えだ。お前らは気にせず資料集めしてろ。露払いは俺が殺る」
朔夜は背中の槍を構える。朔夜の魔力の反応し、槍には電流が走っていた
「右か」
「ーー!?!」
朔夜は右手側の曲がり角から現れた魔族の脳天に槍を突き刺す。紫色の体液が顔にかかるが、朔夜はそれを意に介さず、槍に刺した魔族を後ろから現れた魔族に投げつけた。
「この狭い室内で戦うのは分が悪いか‥」
「ーー!!!」
「ーー!!!」
初撃の断末魔に釣られた魔族達が廊下の朔夜を左右から囲み込む。
「多いな‥何匹いんだ? 十匹は確実にいるぞこれ‥でもまぁ仕方ない。少し本気出してやるか」
朔夜は正面の魔族を睨みつけたまま、姿勢を低くする。魔力回路に魔力を流し込み、自らの身体を極限まで雷に近付けた。
「雷衣」
朔夜の姿が魔族たちの前から消えた。
オズワルド・ガルシア
164cm/60kg
誕生日 11月6日
征魔連合軍アメリカ支部の第一小隊副隊長。使用魔法は光魔法。深緑色の髪に薄い緑の目を持つ少年。サイズの合わないパーカーを着ており、常に萌え袖なのが特徴。性格は真面目で臆病。それが故に隊長であるベロニカの代わりに作戦を立てることが多い。




