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believe  作者: PINKice007
2/22

jetstream


『ーあなたの声、うちの声楽部じゃ無理よ?退部して!』


『カエルみたい』


『絞め殺された鳥だろ?』



そして巻き起こる、嘲笑の渦ーー…












「呪いだ…」


自室のベッドで目覚めたみちるは、青ざめた顔でポツリと呟いた。


頭のすぐ脇に置いていたはずの、カエルとひよこのヌイグルミ。


その顔面に、一回転した自分の両足が、見事にヒットしていたからだ。



(ごっ…)


「ごめんねぇぇ!痛かったよねぇ」


踵落としを食らった歪みきった顔で、それでも笑みを絶やさずにいることがまた痛々しい。慌てて「彼ら」を抱き寄せる。


全く、自分でも呆れる程の寝相の悪さだ。



「花の女子高生だってのに…」


弱々しい声で独りごち、顔を上げる。

と、同時に神々しい輝きを放った真新しい制服が視界に飛び込んできて、みちるの目を奪った。


(…さすが新品!)


こうして眺めては、何度口元を綻ばせた事だろう。


上品なチャコールグレーのブレザーに、チェックのスカート。首元にはブルーのリボン。自分のテンションを上げる、いま最高のアイテムだ。


…強いて言えば、リボンは他にピンクもあり、そっちを選びたかったのだが…似合わなかった。あくまで「あまり」だが。


(まぁ、想定内と言うべきか…)


寝癖で乱れた頭をポリポリと掻き、抱えていた2つのヌイグルミを元の位置に戻す。その様を、正面の姿見がまざまざと映し出していて、みちるは手を止めた。


クルリとした二重の瞳は寝起きのせいか、ショボショボしている。尖った小鼻の先もどこかでぶつけたのか、少し赤い。


平均より少し高い身長、短い髪。着る服によっては、年下の男の子に間違われる事もしばしばある。


制服オーダーで青いリボンを選んだのは、やはり賢明な選択だ。間違いない。


(大体の女子は、ピンクにしてるっていうけどね…)


それでも満足はしている。市内では人気も高く有名な伝統校・私立青陵学園に入学出来たのだから…。



青陵の、声楽部に行きたい。



その夢を叶える為、必死でこの受験戦争を乗り越えて来たのだ。



入学したのは10日前。そして今日は、ついに夢にまで見た憧れの青陵学園・声楽部を見学するはずたったのだが、季節の変わり目だからか環境の変化からか、持病の喘息が出てしまい、学校自体を欠席するという有り様だ。


勝負の日だというのに、我ながら情けない。


一緒に見学する約束をしていた新しいクラスメイト・森下香奈からはお見舞いのラインが来ていた。気にしなくていいからと。





本当にいい声。綺麗なソプラノ。


歌を歌うと、いつも皆んなに褒められた。



歌うことが大好きだった。







「あ…」


再びベッドに転がると、サッシの向こう、


一面に広がった薄青色の真昼の空に、一機の飛行機が飛んでいる。


その軌跡を辿るように続く、長い白線。



『長くたなびく飛行機雲は、天気が崩れる予兆です』


(いつか誰かが言ったな、そんなハナシ)




飛行機雲なんて、特に珍しい訳でもない。けれど何故だろう…胸の中で何かが引っかかるような感覚に、みちるは首を傾げた。


(胸騒ぎっていうのかな…)


それは今まで感じた事のない、えも言われぬ奇妙な感覚。一抹の不安を抱きながら、窓の外に広がる光景にみちるは暫く目が離せずにいた。






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