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対決魔王の鎧3

「何をしている! 籠手で奴の手首を受け流せ!」


 硬直していたマリィにカイルの怒鳴り声が届く。咄嗟に挙げた左拳の裏と相手の手首がぶつかり金属音を鳴らす。

「次は手首を返して相手の手首を取つて引け! そのまま相手の左脇腹に全力で掌底を! 振り抜け!」

 強引に腕を引かれたのと打ち込まれた掌底により魔王の鎧がバランスを崩す。

「そこで左足で奴の前足を刈りながら投げ飛ばす! よしっ!」


 必死で反応した甲斐もあって魔王の鎧が宙を舞う。この闘いが始まって初めて魔王の鎧を崩せた瞬間だった。


 しかし地に手を着くとその勢いのまま一回転して地面に転んでしまうのを回避する。全身鎧の金属の塊であっても見事な身軽さであった。

「取り敢えず一旦退いて体勢を立……って、バカ」

 マリィはカイルの忠告を聞かずにチャンスとばかりに一気呵成に拳を繰り出し攻め立てる。

 マリィのグラブの金属と魔王の鎧の胴の金属が打ち合う音が幾つも鳴り響き相手の上体が堪らずそれに合わせて揺らぐ。

「へっ。このまま一気に終わらせるにゃ」

 マリィの渾身の右拳を受けて相手の胴が僅かに左へ下がる。下がった左側の代わりに前へ出た右脇腹に左拳を打ち出すために右拳を引きかけたところで右腕を何かで打ち付けられる。関節のあるはずのないところでぐにゃりと曲がる腕が見える。曲がった腕の側にあるのは魔王の鎧の拳。そして半ばめり込む拳に握られた大剣の柄頭。

 魔王の鎧の左半身が下がったのは耐え兼ねて退いたわけではなく、上体を回転させ振り上げた大剣の重さを加えた柄で張り付く敵の腕を打ち付けるためだった。

 思わぬタイミングで打ち付けられたことと既に左拳を打ち込む姿勢に入りかけていたために何も新たな行動を起こせない。怯んで力の抜けた左拳が魔王の鎧の右脇腹に当たるが相手は全く堪えた様子がない。

 そして相手の爪先が自分に向けられ間合いを取るように半歩下がり、先程必死に逃げた上段の構えに剣が移動するのを何もできずに見守ることしかできなかった。カイルがなにか叫んでいるような気がしたが何も耳に入ってこない。もうこのまま真っ二つになるしかないのだと冷静に考えてしまう忠告を無視して突っ込んだ自分に泣き笑いが込み上げてくる。

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