対決魔王の鎧4
――次の瞬間マリィの顔の左側から付き出される腕があった。腕の先にはソードブレイカーの切られたダガー。右脇から回された腕に引き寄せられ抱き抱えられる。その後マリィを庇うように体勢を変えられて鳴り響く金属音で我に返った。マリィの回りに音が戻り、先程の音のした方を見ると大剣の腹を内側から弾いて軌道を変えさせたダガーと軌道を変えられて地面に切っ先を埋める剣が目に入る。
魔王の鎧にも何が起こったのか理解できず埋まった自らの剣を凝視して固まっている。
先に動いたのはマリィを抱える男で、そのまま右後方へ数歩下がる。為されるままにマリィも下がり抱える男を首を回して見上げようとしたところで声を掛けられる。
「あれを甘く見るな。愚鈍な鉄の塊に見えるかもしれんが、中身は下手な戦士より手強い」
「……それはわかってるにゃ。でんもぅっ!」
「エミリア、受け取れっ」
「っんにゃあああ――!」
マリィが答える間もなく猫のように襟首を掴まれ強引に後ろに放り投げられる。僅かな滞空の後「きゃうっ」という小さな声と共にエミリアに尻餅をつきながら抱き止められる。
「命令だ、エミリア。命に代えてもマリィを離すんじゃないぞ」
後ろからエミリアの頷く気配を感じ、回されていた腕に力が込められる。
「何やってるにゃ! 今はこんなことしてる場合じゃないにゃ! もうっ。エミリア放してよ」
「いいえ、放し、ません」
「はあ?」
離れた前方でカイルが剣を払い相手に突き付けている。相手はまだ納得がいかないようで埋まった切っ先を見つめていた。
本来であればマリィの腕力には全く抗えないはずのエミリアをふりほどけない。強引に回されている腕を引き剥がそうとするがびくともしない。
「私はまだ、こんなところで、死ぬわけにはいきません」
「だから何言ってるの? 今ご主人を助けなきゃアンタの務めも全うできないでしょ」
「いいえ、この腕は、何があっても、離しません。カイル、様は、命に代えてもと、私に命じられたの。だから私は、離せないの」
「だからお願い」と半ば涙声が混じりながら、息が上がって途切れ途切れになりながらのエミリアの言葉を聞きマリィの身体から力が抜ける。エミリアにとって隷属の契約は絶対。カイルが宣言してしまった以上エミリアがいくら努力しようがマリィが振り払った時点でエミリアの絶命は避けられない。
「……なんでよ。アイツ一人で何ができるのよ」
「カイル様を少しは信じなさい。あなたの主人でしょう」
マリィが暴れるのを止めたのでエミリアはなんとか息を整えることのできたようだ。
「あの方は元聖騎士です」
「そんなの知ってる。でも聖騎士は聖騎士でも予備隊にゃ」
「そうね。でも、聖騎士団に名を連ねるということがどういうことか、ちゃんとその目でいい加減確認なさい」
「そんなの……あっ!」




