第63話「タッグペア」
カードショップ「かちゅうのくり」の店内は、大会前ということもあり多くのプレイヤーで賑わっていた。
シングルカードのショーケース、パック売り場、デュエルスペース、そして奥にはクレーンゲームや休憩スペースもある。
瑞樹先生が手を叩く。
「はい、ここからはタッグペアごとに行動!」
「デッキ調整でもいいし、パック開けてもいいし、回してもいいわ」
「2時間後に入口集合ね」
レンジが笑う。
「マジで自由行動じゃん」
瑞樹先生はニヤッと笑う。
「だから言ったでしょ」
「今日はデートのつもりで、ってね」
カエデが少し照れる。
「も、もうその話いいです……」
「はいはい、じゃあ解散!」
部員たちはそれぞれのペアで店内に散っていった。
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ハルトとカエデはシングルカードのショーケースの前に立っていた。
ハルトは風属性カードのコーナーを見ている。
カエデはサポートカードのコーナーを見ていた。
「このカードどう?」
カエデが一枚のカードを見せる。
「風属性カウンターを増やすサポート」
ハルトはカードを見る。
「……これ、エアロフォトンと相性いいな」
「でしょ?」
カエデが少し嬉しそうに笑う。
「ハルトはエース出すこと考えて、私は場を整える」
「タッグなら、それでいいと思う」
ハルトは頷く。
「……うん」
「一人で戦うんじゃないもんな」
カエデはスリーブコーナーへ歩いていく。
「スリーブも新しくしよっか」
「タッグだし、色合わせる?」
ハルトは少し驚く。
「色?」
「うん、同じ色にしよ」
二人は同じ色のスリーブを手に取った。
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パック売り場では、希美とレンジがパックを選んでいた。
レンジが言う。
「大会前の運試し!」
希美も適当にパックを取る。
「当たり出たらトレードね」
二人でパックを開ける。
レンジ
「お、レア!」
希美
「……あ、これ当たり」
レンジ
「マジかよ!」
希美
「宝石龍サポート」
レンジ
「いいなそれ!」
希美
「炎刃と相性いいカード出たら交換してあげる」
レンジは笑う。
「タッグっぽいな」
希美も少しだけ笑った。
「でしょ」
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デュエルスペース近くのテーブルでは、樹里とマックスがカードを並べていた。
「この展開だと三ターン目に盤面が埋まる」
樹里が言う。
マックスが頷く。
「じゃあ俺がその次のターンに一気に攻める」
「あなたは攻撃のタイミングだけ合わせて」
「了解」
完全に作戦会議だった。
しばらくしてマックスが立ち上がる。
「ちょっと飲み物買ってくる」
数分後、戻ってきたマックスの手には缶ジュースと、小さなぬいぐるみがあった。
「ほら」
樹里に差し出す。
「……いらない」
「いいから」
樹里は少しため息をつき、ぬいぐるみを受け取る。
「……ありがとう」
マックスは笑う。
「素直じゃねぇな」
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店の奥。
クレーンゲームの前。
リアがコインを入れる。
リリが横で言う。
「カード見なくていいの?」
リアは操作レバーを動かしながら答える。
「デッキはもう完成してる」
アームがぬいぐるみを掴む。
そのまま落ちる。
ぬいぐるみが出口に転がる。
リアはそれを取り出してリリに渡す。
「ほら」
リリは少しだけ驚いた顔をして、
「……ありがとう」
ぬいぐるみを両手で持つ。
少しだけ嬉しそうな顔。
そして、ぬいぐるみの横を見る。
同じシリーズの猫のぬいぐるみ。
リリが小さく言う。
「……あっちの猫も可愛い」
リアは何も言わず、もう一枚コインを入れる。
アームが動く。
少しずれる。
落ちない。
リアはもう一度コインを入れる。
再挑戦。
今度はしっかり掴む。
猫のぬいぐるみが落ちる。
リアはそれを取り出して、リリに渡す。
「はい」
リリは少し驚いて、
「……ありがとう」
今度は少しだけ、本当に嬉しそうに笑った。
ぬいぐるみを二つ抱える。
その様子を遠くから見ていたレンジが言う。
「……あの二人、普通にデートしてね?」
マックスも頷く。
「付き合ってるだろ、あれ」
樹里が小さく言う。
「昔からあんな感じよ」
カエデも少し笑う。
「仲いいですよね」
ハルトも頷く。
「うん……」
その時、後ろから声がした。
瑞樹先生だった。
腕を組みながらその光景を見ている。
そして一言。
「リア充爆発しろ……」
少し間を置いて、
「いや、リア爆発しろぉ」
店内に笑い声が広がった。
大会前の最後の休日。
それぞれのタッグは、
少しだけ距離を縮めていた。
日本大会は、もうすぐ始まる。




