12. 観光と道場
アタスタリア王国の王都アナミズキに入ったが、故郷の町を余り変わらないと思った。 一行はそのまま暫くそのまま進み、パーキングエリアで長距離用の自動車を小型高級車へと乗り換えるようだ。
さすがは王都である。 街中でも自動車が馬車に置き換わっていたのである。
ミズチ様が超高級車へ乗るのは当然なのだが、僕はそんな恐ろし車には乗りたくないので、別の車に乗ろうとしたのだが、ミズチ様は許してくれなった。 つまり超高級車へと引きずり込まれたのである。 そのことで、先行きが不安になってしまったのである。 まさかそのまま王宮へ連れ込まれたりしないよね?
王都の規模は別格と言って良かった。
最初王都が故郷と余り変わらないと思ったのは、王都の中でもかなり辺鄙といえる地域だったようで、やがて中心部に向かうに従い建物が立派になり、道も綺麗に整備されて立派になってきたのである。
そして王宮と思われる建物の城門が見えてきた。 さすがは王宮である。 あの伯爵邸とは比べ物にならない規模である。 超高級自動車は王宮方面へ向けて一直線だ。 えっ? 直接王宮へ乗り込むとかないよね。 ないよね? 僕は迫りくる可能性に危機感を感じて焦っていた。 そして手に汗握るスリル感が最高潮に達したところで、僕らを乗せた超高級車はあっさりと王宮の城門の前を通過したのだった。
母と兄を見ると、僕同様に緊張していたのか、今はホッとしているようだった。 そりゃ母だって王宮とかは怖いだろう。
そして僕らを乗せた自動車は漸く停車したのだった。
そこは故郷のマインタレスの町のお城を小ぶりにしたようなお屋敷の前だった。
車を降りて門の衛兵の前を、護衛達に囲まれた僕たちはそのまま入って行くと、使用人と思われる人々が気軽に挨拶するのが見えた。 彼ら彼女らは、ミズチ様の性分をよくご存じなようである。 察するに、ここはミズチ様の私邸なのだろう。 そう思うと、僕はかなりホッとしたのだった。
ミズチ様は使用人達と何か話しているようだったが、僕たちは周囲の観察に集中していた。 いろいろと観察した結論として、伯爵邸と比べると、壊れやすい高級な飾り物とかは無く、安全に滞在できそうな雰囲気だった。 そのように周囲に気を取られていると、使用人の一人が僕たちの方へ進みでて自己紹介してきたのである。
「ようこそおいでくださいました。 私はお世話をさせていただく、メロディアと申します。 今後ともよろしくお願いします」
この対応には、ちょっとビビってしまったのだが、それは母や兄も同じである。
「とりあえず長旅でお疲れでしょうから、お部屋をご用意しました。 こちらへどうぞ」
僕たちはお礼を述べて素直にメロディアさんに付いて行った。 断る理由もないし根性もないので当然のことである。 案内されたお部屋に入ると、中は簡素だが上品な感じであり、触ってはいけないような感じの装飾品もない。 伯爵邸の部屋とは大違いである。 これなら僕らでもゆったりできそうである。
その後僕たちにはお昼ご飯が出されたのだが、豪華というよりは健康的でスッキリした感じであった。 お部屋にしても食事にしても、これならば長期間の滞在でも耐えられそうである。
昼食も終わり少し時間が立つと、先ほどのメロディアさんが入ってきた。 曰く、これからはミズチ様はお城へ行かねばならないとのことで、僕たちは自由になるとのことあった。
さてこれからどうしたものかと思ったのであるが、メロディアさんが観光案内してくれるということになったので、それに甘えることにしたのだった。
屋敷を出る前に僕たちはミズチ様の関係者であることを示すネックレスを身に付けることになった。 外に出るとトラブルに巻き込まれてしまうこともあるからだそうだ。 ネックレスは身分証明みたいなものである。
さてそれでは待ちかねた観光である。
目立たない服装で目立たない自動車に乗り、まずはお城を見学することになった。 お城の中に入る時にちょっと緊張したのだが、意外なことに城門から内部への通行はすんなり許可された。 驚いたことに城門の中は一見すると僕のマインタレスの町と同じぐらいの広さがあるように思えるほど広大だった。
城門の中にはそこら中に衛兵がおり、巡回していたり立哨もしていた。 そして兵士の訓練場や、魔法修練場、王宮図書館、劇場、散策用の公園、病院、駐車場、商館、工房など、町と遜色ない種類の建物があった。 もっともそれらは僕らの町のそれとは根本的に高級感が違い別物と言ってよかったのである。 王族が住まう王宮についえは流石に外から見るだけだった。
お城の見学を終えた僕らは、ざっと王都図書館、王都科学博物館、植物園、動物園、魔物博物館、劇場、闘技場、音楽ホール、芸術館、魔法学校、高等学院、治療院、王都役所などを車の中から見学した。
さらには商業区の店舗などにも案内してもらえた。 僕は、<図面記録ボード>を用いて、その光景を写真に取ったのであった。 もちろん索引機能を使って説明書きも入れてである。
僕はこっそりと写真も撮れるし分からないように書物も写し取れるのだ。 この特技を生かせばスパイとしてもやっていけるんじゃない?と考えたのだが、そんなにこの世界も甘くないだろう。 僕はHPやVITが初期値なので、暴力を受けたら容易に気絶してしまう。 今なら幼少加護のお陰で気絶するだけで済み、すぐにはHP0にならないものの、1日の間に続けて何回も気絶すると命を落とす可能性すらあるのだ。
メロディアさんのお蔭て、充実した一日であった。 そして最後に地図がほしいとお願いして書店へと案内してもらったのである。
王都の書店は僕の家の商館と違って明らかに内容が充実している。 そんな雰囲気に浮ついた僕はつい出来心で高級そうな本を2、3冊ほどパラパラとページを捲って立ち読みしてしまったのである。 ハタと気づいて周囲を見回したが、そんな僕の行動には誰も気にを留めていないようであった。 ホッとした僕は、地図を探すことにして、地図が置いてあるセクションへとやって来た。
う~ん。 地図といっても沢山ありすぎて選べない。
選べないので、選んでるフリして<図面記録ボード>へ取り込んでしまおう。
そう決断した僕は、王都地図、王都観光地図、王都食べ歩きなど王都に関するもの、そして王国地図、この世界の地図(世界は丸かった)、魔物生息地図など、20件ほど立ち読みして。<図面記録ボード>へ取り込んだのだった。
流石に立ち読みだけではアレなので、最終的には王都観光地図と王都地図を購入した。 それらは合計で何と金貨2枚もしたが、ミズチ様からいただいていた給料で十分足りたのだる。
母や兄も書店で何かを買っていた。
母の買ったものをちらりと見たが、”教育”という文字が見えたのでそれ以上は無関心を装った。 知ってはいたが、母は教育ママさんなのだ。 体が弱いまま大人になってしまう見込みの僕に期待されてもどうしようもないのだけれど。
兄はどうやら剣術の指南書を購入したようだ。 そんなの僕の家の店でも売っているんじゃ? 僕はそう思ったのだが、王都旅行の記念にはなるだろうから言わないでおくことにした。 また泣かれても困るし…。
さて充実した観光で熟睡できた翌日、母は知り合いに会うといって出かけてしまった。 つまり取り残された僕とレビンは暇になってしまったのである。 それではと僕らも外出しようと思って門の方へ歩いて行ったのだが、案の定お屋敷の門番に引き留められてしまったのだった。
ちょっと待たされたが、結局メロディアさんが付いてくることになってしまった。 子供二人のみでの外出は危険なのだそうだ。 やはり都会だからなのだろう、色々な人々がいて、中にはヤバイ人達も紛れているそうなのだ。
兄は剣術道場へ行きたいと言い、僕は図書館を希望した。 じゃんけんでどちらへ行くかを決めることししたのだが、僕はあえなく僕は兄に負けてしてしまった。
僕たちが訪れたのは、烈古武術流という道場だった。 道場の中へ入ると、受付らしき人がいたが、メロディアさんと顔見知りだったらしく、僕たちはそのままで入場が許された。
試合をしているところ、乱取り稽古をしているところ、型の稽古をしているところ、瞑想?をしているところなど様々であったが、僕たちは最初に試合を見学することになったのだった。
試合が始まった。 気合とともに2名が斬り結んだ。
凄い! 何が凄いかって、早すぎて動きが見えないのだ。
剣戟の音も、半端なく大っきい。 耳が痛くなる。
正直言って7才の僕には全く参考にならない。 分かったことは”凄い”とうことだけだ。 それでもレビンは感動しているようだった。 夢中で試合を観戦しているのだが、動きが分かっているとは思えない。 レビン兄は、剣士に憧れているお年頃である。 英雄剣士に魅せられて、将来の自分に重ね合わせた夢を見ているに違いない。 ぼくはその場をそっと離れて型の稽古をしている方へ興味を向けた。
道場の稽古を見学できる機会は今後少ないと思われたので、一つの型について連写で写真を取っておいた。 連写速度は余り早くはないが、パラパラ動画ぐらいには動きを再現できる。 一通り18種類程の型を見終わったところで、ついパラパラ動画を見ながら体を動かしてしまう僕であった。
「坊主、将来は剣士志望か?」
そんなところを見られてしまい、華奢な感じのお兄さんに話しかけられてしまった。
う~ん。 僕は剣士にはなれないんだよな……。 どう答えようかと迷っていると、棒を渡されてしまった。 えっと、困るんですけど(泣)。
僕は渡された棒をもち、先ほどの型をパラパラ動画を見ながらゆっくりとなぞってみた。
「ほぅ、なかなか筋がいいな。 動きは遅いがほぼ正確といってよい。 坊主の<ギフト>は何だった?」
ヤバイ失敗した。 一番聞かれたくない質問をされてしまった。
本当の事を話すわけにいかないし、有望だと目をつけられても困る。 ここはどうにかして誤魔化さねばならない。
「えっと フィジカル系ではないです」 フィジカル系とは、STR, VIT, DEX, AGIのことだ。 嘘は言ってない。
「ああ~そうかちょっと残念だが……、もしもの時には後衛でも必要になるし、護身術を覚えるぐらいなら良いだろう。 よし! 仮入門を許可してやろう」
ちょっ、 何を言っているんだ!
後衛ってなんだよ。 戦闘職確定での話なのか?。
それよりも、仮入門ってなんだ?。
やはり貴方もお貴族様のようなアッチ系統なお人なの?
僕はエスナ様とミズチ様を思い浮かべて心の中で叫んだのだった。
「あらあら、アレンちゃん。 訓練剣なんて持っちゃって、剣士にでもなりたいの?」
そこへメロディアさんが割り込んできた。
ちゃん付けで呼ぶな! と思ったのだが、要点はそこではない。
僕は剣士になれるわけないのだ。 僕の<ギフト>について聞いてないのだろうか。
もしかしてメロディアさんもアッチ系統? 僕は呆れてしてしまったのだった。
「まぁしょうがないわね。 キリヒラさん、体験入門って可能かしら」
「ああ、メロディアさんか。 この子の腕だと、仮入門でもいいかもですよ」
「あと、この子だけではなくて、もう一人希望したいのですけど……」
「メロディアさんの紹介じゃ断れないな~。 二人だと、やはり体験入門からが良さそうですね」
「じゃ、お願いします。 手続きはカウンターに行けばいいの?」
「あ、僕もついていきますよ。 その方がスムーズだからね」
「キリヒラさん、ありがとうございます。 助かります」
二人は事の展開の速さについて行けず唖然としている僕を放置してそのまま受付の方へと消えて行った。 僕はいいとして、いや良くないけど、兄の知らないところで兄の体験入門を決まってよいのだろうか。 きっと良いのだろうな、剣士は兄の憧れのようだし。
こんなわけで、僕とレビンは週に2回も道場通いすることになってしまったのである。
それはそうと、週2回って、そんなに長く王都に滞在するの? 僕は違った意味で不安になってしまったのである。
結局この日は、兄と僕は体験入門の心得を習って一日が終わった。
体験入門について聞いたときに、兄が狂喜したのは言うまでもない。
道場通いについては、僕が墓穴を掘ったのだから、文句は何も言えなかったのだった。




