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19/72

19 家路


「では、どうしてドラゴンは争っていたんですか?」


「ドラゴンだからだ」


「はい? 理由になってませんよ!」


「まぁ、何事もこの一言で終わっちまうんだけどな!」


「ちょっとー! 教えてくださいよぉ!」



 よしよし、食いついたな。

別に興味なくとも、「待て」をさせられると欲しくなるってもんだ。

これが、テイマーの本領発揮ってやつよ。



「いいぞ。ドラゴンってのはな、オスしかいないんだ」


「あのー、話が繋がってませんが?」


「そして、戦いに負けた方のオスが、メスになるんだ」


「……はい?」


「だから、負けた方がメスになるんだよ!」


「またまた、ご冗談を……」



 あ、信じてないなこれ。

まぁ、俺もにわかには信じられなかったけどな。

けど、今回の件で、これは確信へと変わった。



「世の中には、結構そういうのは多いんだぞ?

 魚なんかは、卵の時の温度が数度違うだけで、オスメスが変わったりするんだ。

 他にも、オスが群れにいなくなると、一匹がオスになる種類なんかもいるしな」


「うーん、想像できません……」


「まぁな。でも、この話を飲み込んだ上でないと、話が進まんな」


「はぁ……。まぁ、そうだとして、どうやって子どもをつくるんです?」


「ドラゴンってのは、さっきの魚と違って、全部がオスなんだ。

 そして、戦いに負けた個体が、魔力を注入され、その魔力の影響でメスになる。

 そしてその二匹がつがいになって、子孫を残すんだ」


「うーん、なんでわざわざそんなことを?」


「そりゃ、強いヤツの遺伝子を残すためさ。勝った方は、より強い個体だ。

 つまり、勝ち続けるヤツの子孫が、大量に発生することになる。

 次の世代は、その強い遺伝子を持つ奴ら同士で同じことをする。

 そうなると、どんどん種として強くなってくって寸法さ」


「はー、なるほど? 強いのが多く残るシステムなんですねぇ……」



 しかし、これはドラゴン特有のシステムだ。

大抵は、強い方を母体として、出産に耐えるようにする種が多い。


 さすがそこはドラゴン、負けた方とて出産に耐えられぬほど弱くはない。

もしくは耐えられぬなら不要と割り切るのか、負けた方が母体となる。

なかなか面白い生態だ。



「ま、そういうことでな、今回の個体が、子どもができてないか見てみたかったんだよ。

 なんたって、ドラゴンが子をなすのは、数百年に一度あるかないかだからな!

 それに出くわせるなんて、興奮するだろう!?」


「それに興奮するのは、変態だけだと思います」


「なんだと!?」



 これだから分かってないヤツは……。

珍しい現象を直接見たい、それは誰しもが持つ、知的好奇心というものだ。

それを変態などと……。



「それで、ドラゴンの卵を持ち帰ったんですか?」


「あ……。いや……、その……」


「まさか、収穫なしですか!?」


「それがだな……。メス化はしていたんだが、どうやら子どもは作ってなかったようでな……」


「えー。期待煽っておいて、そんなオチですか」


「いやいや、考えてもみろ。

 こんなポンポン子どもできてたら、世界中ドラゴンだらけだぞ!?

 数百年に一度ってのも、こういう不発があるからって分かっただけでだな……」


「言い訳は結構。今回の依頼も、変態の趣味も、どっちも収穫なしなのは変わらないですからね?」


「くそっ……。そう言われると言い返せねえ!!」



 確かに無駄足だと言われればそこまでだ。

そりゃ、傷ついたドラゴンを治療できたから後悔はしないが、それでも空振りで残念だという気持ちは変わらない。

いつか、いつか必ず、ドラゴンの卵を調査してやる……。



「でも、旦那様が無事帰ってきてくれたので、私はそれだけで十分です。

 さぁ、一緒にお家へ帰りましょう?」


「あぁ、そうだな」



 そうだ、これからまだまだ時間はある。ゆっくりと探せばいいさ。

そう思い直し、俺は家路へとつくのだった。



「旦那様! どこへ行くんですか!?」


「へ? 家はこっちだろ?」


「そっちは、かんっぜんに逆方向ですよっ!


「へ? そうだっけか?」


「もう! 私がついてきてて、本当によかったですね!」


「あぁ、そうだな……」


無茶な生態しててもいいじゃない、ファンタジーだもの。

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