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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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閑話6 隣国でおきたこと




ネコと京花がホムンクルスのアリスを、育て始めてから2年後。

ネコたちが暮らしているジャスタール王国の東の隣国『ボルドバルグ王国』で

70年ぶりとなる勇者召喚が行われた。



勇者召喚。

よく物語などで出てくるものと違い、実際は勇者を召喚するものではない。

召喚対象は、召喚者に任されるがそのほとんどが異世界人を召喚している。


別の言い方をすれば、異世界人誘拐魔法といったところか。

また、異世界人を召喚したところですぐに戦えるのかと言ったら戦えない。

召喚された異世界人は、この世界の子供より弱いのだ。


そう、この世界の常識や魔法、何より、レベルを上げなければ使い物にならない。

たまに、本物の勇者が召喚されるがそれは本当にごくまれのケースだ。


そのため、この世界には勇者召喚の手引書なるものが存在している。

今回の勇者召喚もそれを手に入れて行われたようだ。




ボルドバルグ王国の王城にある執務室で、王様は大臣2人とともに報告を待っていた。

「う~ん、そろそろですか…」

財務を担当する大臣のワーグは、時計を見ながらそわそわしていた。


「ワーグ殿、少し落ち着かれよ」

宮廷魔導士のレミルーが注意する。

その2人の前に、目を瞑り腕を組んで静かにしているこの国の王がいた。


そこへドアの方からノックがする。

「失礼します」

入ってきたのは、この国の騎士の1人。


「陛下、召喚儀式は無事成功とティリア様より報告がありました」

王はそれを聞くと、「報告ありがとう」と言って騎士を下がらせる。

「陛下、召喚が成功したということはこれからですな!」


ワーグはこれからのことを思い、思わず力が入る。

「うむ、これから何年かは忙しくなるぞ」

異世界人を育てる、召喚者がしなければならない仕事だ。


だが、どう育てるかは召喚者にゆだねられる。

真の勇者になるか反逆者になるか、はたまた復讐者になることもあるそうだ。

「陛下、まずは召喚理由と私たちの目的は話しておきませんと…」


「…そうだな、あとで復讐者になられても厄介だ」

宮廷魔導士のレミルーの忠告が王を冷静にする。

そして、3人は立ち上がり異世界人と会うため謁見の間へと進む。




玉座に座った王はまず、その光景に驚いた。

召喚した異世界人の数が、多いのだ。

王の側に来たティリア姫に召喚人数を聞くと、100人だという。


また、勇者の称号を持っているのが6人。

能力に期待できそうなのが70人ほど、無能者が2人だそうだ。

全員レベルは1~3で、これからだという。


あと年齢が、10代が70人ほど。

後はバラバラだが、20代~60代だそうだ。

ティリア姫の話では、どこか異世界の学園の生徒と教師らしい。


そんなことを聞き、少し考えた王は話を始めた。

「まずは、そなたたちを召喚してしまったことを詫びよう。

だが、こちらも他に縋るものがなかったのだから許してほしい。


それから、元の世界に帰る方法をここにいるティリア姫に聞いてきたものが

いるそうだが、はっきり言う。

元の世界に帰ることはできるが、今は無理だ。


君たちを召喚したあの広間にあった7色の宝石を見たと思うが

あれが召喚と送還のために必要な魔石だ。

あれに魔力を充てんするためには1年かかる。


だから、元の世界に帰るには早くて1年後という訳だ。

帰りたいものは、この1年をどう過ごすかよく考えてくれ。

また、私たちの依頼を受けてくれるものは依頼達成の暁には望む褒美を上げよう。


無論、何でもとはいかないができるだけのことはしよう。

そして、召喚者全員の生活面はこちらで面倒見るから安心してくれ」




召喚者たちは、王の言葉に一喜一憂しながら話を聞いていた。

しかし、こうして見ると面白いものだとティリア姫は思う。

召喚者の中には、不安になるものやこれからどうすればと考えるものがいる。


また、自分の力を明らかに過信しているものや黒い笑みを浮かべるものもいる。

同じだ、この世界の人たちと考えることは同じだと思う。

どの世界だろうと、人の考えることはそう変わらないのだろう。


今も、私に嫌らしい目を向けているものがいる。

ホント、困ったものだ…




勇者召喚から移動、そして陛下の話が終わり、その日はみんな眠れなかった。

後で聞いたが、先生たちも眠れなかったそうだ。

俺は、クラスメイトと同じ部屋でこれからのことを考えていた。


王様からは、自国の領土のダンジョン攻略をお願いしたいというものだった。

魔王がどうのとか、邪神がどうのとかいう話はなかった。

こういう召喚物の物語では当たり前の魔王がいない。


なんか不思議な気持ちだった。

だが、魔王なんてそうそう現れるものではないらしい。

でもダンジョン攻略か…


まるでゲームのようだ、レベルもあるし魔法もある。

友達はみんな浮かれていたな、魔法が使えるって言って。

でも、これは現実なんだ。


これからのことを考えると憂鬱だ。

でも、さすがは江尻君だ。

さっそく「俺はハーレムを作る!」って宣言して女子に白い目を向けられていた。


元の世界に帰るには1年必要みたいだし、王様は信用できそうだ。

この手の召喚話には、信用できない王国側がいるけど今回はそれはないみたい。

とにかく、この1年で情報収集とレベル上げはしておこう。




4年後、王国内のダンジョンはことごとく攻略され

召喚者たちは、1人もかけることなくこの世界にとどまっていた。

そして、ボルドバルグ王国の北の隣国ゲストバル帝国が


食糧事情を理由に南へ侵攻を開始、ジャスタール王国の辺境領

キュビールが最初の犠牲となった。

くしくも、アンナが嫁いでいった領地だった。


また、バルドバルグ王国へも侵攻を開始。

帝国は二か国を相手に、戦争を始めてしまったのだった…







ここまで読んでくれてありがとう。


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