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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第58話 侵攻状況




ジャスタール王国キュビール領に、帝国軍約2万が迫っている。


これは今朝、王のもとにもたらせられた情報だ。

この情報のおかげで、今王都は大騒ぎになっている。

キュビール領に近い領主へ、軍を出しキュビールの領民を救えとか、


帝国軍を迎え撃てとか、王都からも軍を出せとか

要望や願望も含めて飛び交っていた。

実際は、王の命令で領軍を出させて領民の救出をするようにとのこと。


今、キュビール領は全土で交戦状態らしい。


幸いなことに、帝国軍の中には魔導士などの魔法が使える兵が1人もいなくて

何とかキュビール領内で押しとどめているようだ。



キュビール領と接している領主たちは、境界線上に砦を建設し

それと同時に、領軍によるキュビールの領民救出をおこなっている。

だが、その中に領主本人や家族は姿を見なかった。


そこで、フリーデルド領の領主ブーゲンはせめて領主の家族の救出をギルドに依頼し

また、領軍の兵士たちにも家族救出の命令を出した。




王都にいた俺は、最近騒がしくなったなと王都内を見回っていた。

アンナの嫁ぎ先であるキュビール領が、大変なことになっていることに

この時はまだ、気づきもしなかった。


しかし、それは仕方がないことなのだ。

何せ、アンナの嫁ぎ先も知らないし相手の男の名前すら知らないのだから。


それに、何かあれば俺と別れるときに渡した腕輪で召喚してくれるだろうと

油断していたのも大きい。

だから、今日も王都内を見回った後、冒険者ギルドの屋根でひと眠りするのだった。




フリーデルド領の領都リーバン。

ここにある領主の屋敷では、兵士や騎士、魔術師や治癒師などが

激しく出入りしている。


「第22師団、キュビール領のコブルの町より避難民を救出して戻りました」

「ご苦労、避難民の人数は?」

「全部で4211人です」


「よし、第22師団は避難民をフリーデルドのナサダ地区へ護送してくれ」

「了解です、時間の休息をとった後護送します」

「すまんな、あとの指示は現地のものに聞いてくれ」


「はっ!」

立派な騎士の姿をした師団長が、屋敷の主人である領主に敬礼し出て行く。

「偵察部隊は、もう戻ったか?」


そばにいる秘書らしき女性に訪ねると、

「先ほど戻ってきたと知らせが来ましたから、もうすぐ報告が来るかと」

「うむ、キュビールの情報があればもう少し領軍が出せるかもしれん」


領主は少し焦っていた。

キュビール領主とフリーデルド領主は幼馴染だ。

そのため、両領地は交流が積極的で仲がいい。


だからこそ、キュビールへ帝国が侵攻してきたことを知った時

真っ先に駆けつけ、領民の救出をおこなったのだ。

これは、領主同士で飲み会をしたときに取り決めたことだった。


また、フリーデルド領主はキュビール領主やその家族もまた救出対象にしている。



「遅くなりました、偵察の報告に来ました!」

「ご苦労、さっそく報告をしてくれ」

「はい、現在キュビール領のブルヤークの町までが帝国軍の手に落ちました」


領主がその報告に眉を顰める。

また、傍にいた秘書の女性も顔を青くした。

「ブルヤークと言えば、キュビールの領都ネスビアから一番近い町です…」


「はい、そのため領軍はネスビアの城壁を使って帝国軍を抑えようと準備中でした。

おそらく今は、城壁を挟んで睨みあっているころです」

「領主様、軍を派遣しますか?」


フリーデルド領主は、秘書の意見を手で制して質問をする。

「ネスビアの民衆は避難しておるのか?」

「はい、今ネスビアにいるのはキュビール領主とその家族、あとは領主軍です」


「領主軍?領軍ではないのか?」

「領軍は、民衆の避難誘導と護衛にほとんどを回したようです」

フリーデルド領主はその場に立ち上がり


「何と! すぐに動ける部隊を用意! 領主の家族だけでも救出せねば!」

「領主様、今動ける部隊は第12師団と第33師団だけです」

秘書から動ける部隊を聞くと、すぐに命令をする。


「ならば、すぐに準備をさせてネルビアへ向かわせろ!

第1目的、領主の家族の救出! 第2目的領主の救出! 第3目的は援軍だ!」

「わ、わかりました!」


秘書の女性はすぐに部屋を出て連絡兵に事を伝え、準備に取り掛かってもらう。

「偵察部隊は休息をとった後、キュビール領の偵察をおこなってくれ」

「はっ!」



出て行く偵察隊の隊長と入れ違いに、秘書の女性が部屋に入ってくる。

「連絡兵に伝えておきました、

準備を終えた部隊の団長があいさつに来ると思います」


椅子に深々と座り、目を瞑る領主。

「帝国軍には魔導師などはいなかったそうだな…」

「はい、騎士や兵士のみの編成です」


「騎士や兵士だけで、ここまで入り込まれるとは

帝国軍は、やはり一筋縄ではいかないようだな…」




「伝令! 帝国軍先発部隊、城壁と東門にとりつきました! 現在交戦中!」

ネルビアの西門近くにあるテントの中は司令部となっていて

領主をはじめ、各騎士団長4人が詰めていた。


「南門の封鎖は完了したか?」

「はい、石などを積み上げ封鎖してあります」

「ならば、南門の兵士たちを偵察と伝令を残して東門へ移動させろ!」


「はっ!」

すぐに伝令兵は、テントを出て行く。

「ケルビス、妻たち家族は避難させたか?」


ケルビスと名乗る騎士団長の1人が答える。

「はい、かなりご不満のようでしたが何とか無理やりに…」

「ん~、すまんな。妻のわがままに付き合わせてしまって…」


「いえ、しかし、なかなかのご婦人ですな」

「あれで2児の母だ、私としてはもう少し落ち着いてくれるといいのだがな」

女性騎士団長が、会話に入り込む。


「よいではありませんか、アンナ様も魔法の腕前はかなりのものなのでしょう?」

「だから、困っているんだがな…」

テントの中が笑い声で包まれる。


だが、次の伝令でそれが焦りへと変わる。

「伝令! 領主様のご家族をのせた馬車が襲われました!」

「な、なんだと! どういうことだ?!」



伝令兵はその場の全員の叫びに一歩引いて答える。

「先ほど、領主様のご家族を護衛していた兵士の1人が戻って来まして

盗賊に扮した帝国兵に襲われたと報告してきました」


騎士団長の1人がさらに質問する。

「その兵士は?」

「今治療中です、かなりの大怪我をしていましたから」



領主は少し考えると、

「ケルビス、動かせれる兵は少ない! 少数で行ってくれるか?」

「わかりました、このケルビス、必ず救出してきます」


そういうとケルビスは伝令兵とともに、テントを出て行った。

「…帝国め!」

机をたたく音が、テントの中に響いた。








ここまで読んでくれてありがとう。


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