第17話 王都の学園へ
夕食を終えて、紅茶を飲みながらまったりと過ごしていると
アンナの母親から、何やら話し始める。
「アンナちゃん、そろそろ学園への入学手続きをしないといけないわね」
「お母様、学園ですか?」
「もうそんな歳になったのね~」
「アンナちゃん、貴族の子女は10歳で王都にある学園に入学して
友達を作ったり、将来に向けて勉強をしたりするのよ」
「将来に向けての勉強ですか? フローラ母様」
「そうよ~、アンナちゃんのお姉ちゃんたちも学園で
いろんな友達を作って、将来のために勉強をしているのよ~」
アンナは、5人の姉たちをそれぞれ見ていく。
「でも、お母様。アンナはどこの学園に入るのですか?」
「そう、そこなのよねサラちゃん。
学園はいくつかあるけど、自分の将来を考えて入らないといけないのよね」
「ジェシカ、ニコル、アンナちゃんの将来を考えて学園を選びましょう」
3人の母親は、見合って頷いている。
そしてそのまま立ち上がり、食堂を出て行った。
子供の将来を考えて、親が苦労する。どこの世界も同じなんだな~
「それで、アンナちゃんの希望はあるの?」
アンナの姉で長女のアシュリーが、聞いてくる。
「ん~、今のところ希望はありません」
「まあ、そうだよね。私もそうだったし…」
理解を示したのは、三女のサラ。
「サラ姉様、それではまた学園は私たちと同じところということになりますよ」
「そうね、オリビアの言う通り私たちと同じ学園になるかしら」
「私はそれでもかまいませんよ、姉様たちと同じ学園でも…」
ふむ、俺もアンナならみんなと同じ学園に入っても問題ないだろう。
「アリーヤはどう? 私たちと同じ学園にアンナちゃんが通うかもしれないけど」
「私は問題ないと思うよ、アンナは頭いいし友達もすぐにできると思うし」
「うんうん、アシュリー姉様。私も賛成です」
「クレアちゃんも反対しないなら、お母様たちに提案してみるわ」
そう言うと、立ち上がって母親たちの部屋へ行った。
「ブロトール学園か、この学園は入りやすいけど卒業は難しいんだよね」
クレアがオリビアに聞いている。
「そうなのよ、10歳から入って8年間学園で学んで卒業試験があるわ。
その試験が合格できなくて、
何回か卒業試験を受けることになった人もいるらしいわね」
「変な学園ですよ、他の学園は入学を難しくして卒業試験は簡単に。
そんなところが多いのに」
アリーヤが愚痴り始めたぞ?
「確か、学園長が昔『異世界人』に学校の在り方という話し合いをしたとか。
その時の話し合いの中で、
学園で何を学んだかを見るために卒業試験を難しくする、
とアドバイスを受けたとか言ってましたわね」
…確か日本の大学の卒業が簡単だとか言って、問題になった時があったような…
まさか『異世界人』が出てくるとは思わなかったが、
この世界には、何人かまだいるのかな?
「だからアンナちゃん、学園ではしっかり勉強して卒業しようね」
「はい、オリビア姉様」
そこへ、母親に意見してきたアシュリーが戻ってきた。
「お母様たちの了承は得ましたわ。
アンナちゃんも私たちと同じ学園へ行くことになりますわね」
「はい、学園に通うようになったら先輩としてよろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。
みんな笑顔で、頷き合っていた。
「ところで、アンナちゃんが学園に通うのっていつから?」
アリーヤが肝心な質問をしてくる。
「確か……」
「お嬢様方、アンナお嬢様の学園入学は来月からとなっております」
「え! ジニーそれだと、王都へ旅立つのが明後日ってことになるわよ?」
サラが驚き、時間がないことを指摘する。
「はい、ですから使用人全員での荷物整理は終わっておりまして
後は、奥様方とお嬢様方の王都へ持っていく荷物と馬車の手配だけになっております」
おいおい、準備いいな使用人。
「ジニー、ケロちゃんも一緒に連れて行っていいの?」
「はい、奥様方や王都の旦那様には許可をもらってあります」
「ありがとう、ジニー」
ジニーって、優秀なんだな~
「では、私たちも荷物の整理をすませましょうか」
「「「は~い」」」
食堂から皆それぞれの部屋に戻り、荷物の整理をして王都へ旅立つ。
…俺も荷物整理と、図書館の本を返しておくかな。
それから次の日、俺はまず図書館へ無断で借りている本を返却して
冒険者ギルドへ。
そこでは人化を使い、無限収納に収まっていた使い道のない素材を売却。
勿論、驚かれたが父との狩りの成果だというと納得してくれた。
魔石や薬草類などは売却しないで、『薬学』のためにとっておく。
売却額が金貨3枚になったが、薬師や魔道具作りの道具購入で飛んでいった。
しかしこれで、前から作ってみたかったポーションを作ることが出来そうだ。
あと余ったお金で、料理の道具を購入。
これで持ち金をほとんど使ってしまった俺は、屋敷に帰り明日の出発を待った。
そして出発の日、馬車10台を用意し荷物をすべて載せて
母親3人と、アシュリーとオリビアにサラが馬車に一緒に乗り
残りの姉妹にジニーと俺を別の馬車にのせて出発となった。
道中の護衛は、冒険者ギルドから20人を雇って護衛してもらう。
冒険者の中には、新人に近い人もいたがこれも経験だろう。
「ケロちゃん、王都に着くまでおとなしくしててね」
俺はアンナの側で丸くなって寝ている。
この馬車は、貴族用だが外への抜け道は見つけてあるし大丈夫だろう。
ここまで読んでくれてありがとう。




