第12話 迷子と図書館
女の子に抱きしめられて動くことができず10分ほどじっとしている。
…どうしたものかな~
女の子は抱きしめる力を強めている。
普通のネコなら、暴れて逃げ出しているぞ。
何とかこの女の子の保護者を見つけないとな…
確か『音魔法』に周りの音を長距離まで聞く魔法があったな…
覚えたばかりの『音魔法』でどこまでいけるか分からないけど、
このままという話にはいかないしな。
【集音声】
声を集めるってことで唱えてみたが、聞こえる聞こえる。
この声の中から、誰かを探している人の声を……見つけた。
え~と、アンナちゃんを探している人がいるな…
この場所が分かればいいんだが、たぶんわかりそうにないな…
ならば、知らせることはできるかな…
【飛音声】
『空を見て!』
よし、空に上げるのは照明弾みたいなものがいいから…
【ライト】
…おお~、頭上に光の玉が浮かんだ。
あの高さなら遠くからでも確認できるだろう。
事実、女の子を探していた人も気づいてこっちに向かっているようだし…
うお、抱きしめる力がまた強くなった…
「…ネコさん、みんな、どこ?」
ああ~、涙が止まらなくなっているな…
「ニャ~」
「うぅ、ネコさん…ママ……ジニー……」
うずくまってしまった、これはまずい!探している人、早く~
「お嬢様!」
女の子はすぐに顔を上げて、声が聞こえた方向を見た。
俺も声の主の顔を見ることができたが、きれいな人だな。
メイド服というのだろう、そんな服を着て走ったのだろうか息が荒い。
「ジニー…ジニー……うわあぁぁぁ~」
ああ、安心したのかとうとう泣き出しちゃった…
ジニーさんがゆっくり歩きながら、近寄ってきた。
「アンナお嬢様、探しましたよ…」
すごい優しい声で、女の子の名前を呼びながら笑顔で近づいてくる。
女の子は俺を放すと、そのままジニーさんの胸に飛び込んでいった。
「うううぅ~」
「アンナお嬢様、ご無事でようございました…」
いい光景だな、でも俺もいつまでもここにいるわけにはいかないし。
俺はそのまま忍び足で、脇の道に隠れる。
それと同時に、上空の光の玉を消す。……これで良し!
ちょっとした足止めだったけど、図書館を探してまたうろつくかな~
何か後ろから声がするな…『ネコさん~』とか。
たぶんお礼が言いたいのだろう、お礼なんていいのに。
屋台を回って、念話で図書館の場所を聞いてみるか。
▽ ▽ ▽
「ネコさん~、どこにいるの~」
お嬢様が、今までずっと抱きしめていたネコを探しているようだが
おそらく逃げてしまってもうこのあたりにはいないでしょう。
「出てきて、ネコさん……」
それにしても不思議な体験でした。
お嬢様が市場でいなくなってから、長い時間懸命に探していると
『空を見て!』という声で空を見ると、冒険者ギルドの方向に
光の玉が浮かび上がる。
直感で、あの下にお嬢様がいると思って走り出し護衛を
置いてきてしまいましたが、正解だったようですね。
見つけた時、うずくまっているお嬢様を見てつい大声を出してしまいました。
「アンナお嬢様、ネコさんとはまたお会いになれますよ」
「ジニー、本当?」
…相変わらず可愛らしい。
「ええ、こうして私とも会えたのですから」
お嬢様は笑顔になって、ネコさんにお礼を言っている。
「ネコさん、一緒にいてくれてありがとう。また会おうね~」
私はお嬢様の手を握り、護衛のいるところまで戻ろうと歩き出す。
「さあ、お嬢様。みんなのところに帰りましょう」
「うん!」
お嬢様が握り返してくれた。
今日は不思議な体験があったが、お嬢様の笑顔は私の最高の癒しですよ。
▽ ▽ ▽
屋台でおこぼれをもらっている間に、念話で屋台の主人に図書館の場所を聞くと
意外と近くだったようだ。
フフフ、俺の食べている姿を夢中で眺めていて
お客が聞いてきたと勘違いしてくれたのはラッキーだったな~
食事をすませ、さっそく図書館へ行ってみる。
すごいなこの大きさ、冒険者ギルドより大きいみたいだ。
さっそく中へ侵入を試みる。
図書館の周りの塀の上をウロウロ歩いてみる。
……ん~……えっと……あった、裏口だろうか。人の出入りに合わせて忍び込む。
潜入成功!
正面からは入れなかったから、塀伝いに探して裏口からようやく入れた。
厳重にしてあるんだな……
この部屋か、おお!すごい本の数、これぞ図書館って感じだな!
辺りを見渡して、誰かに見つからないように本を読んでいくか…
おお、これ『空間魔法』を利用した使い方だな…
この本によれば、空間収納を利用した『空間部屋』を造れるって書いてあるな。
ふむふむ、これはなかなか興味深いな……
これは実践してみる価値ありだな!
後は、鍛冶とか木工とか読んで実践もできそうだな。
…せっかく人化の法があるんだから、そこらへんも考えてみようか。
となると、いずれは料理に手を出すのもありだな!
日本にいた頃は引きこもりとはいえ、自炊はできたからな…
しかし、さすがは図書館だいろんな本がたくさんあって興味が尽きないな。
お、これは付与魔法の使い方だな…
これによれば武器だけじゃなくて、アクセサリーにも付与して使うみたいだな。
アクセサリーに付与できれば、デザインを考えて販売もいいかもな!
…これは夢が広がる。
ん~、付与したアクセサリーを誰かにプレゼントするのもありだな…
迷子の女の子にお守りをって感じだな!
あ、そうだ。
今この町に死霊軍団が向かっているんだった。
……確か光魔法の本はこっちになかったかな~
ここまで読んでくれてありがとう。




