第九十九話 レンタル?
咄嗟の場合、逃げられない事を色々説明したところ皆さんに呆れられたというか、そんな状況滅多に合わないと逆にお説教されました。
そうなる前に逃げるようにと。
でも待ち伏せされたりして急に角から出てこられると回避が難しいと伝えました。
某テレビ局のゲームのように忍者が付いてくれたら助かるんですがね。ボールは投げませんよ? あ、でも盾は欲しいですねと呟いて、呆れられました。
テレビは見ないんじゃなかったのかと聞かれましたが、ネットで動画を数十秒間偶然見たのです。
「それなら忍者をプレゼントした方が良かったかな?」
「忍者って今の時代いるんですか?」
素朴な疑問です。仮にいたとしても、人間なんですからプレゼントするものではありませんけどね。
「いるよ。今の時代でもきちんとね」
お兄さんが肯定されました。
いるんですか。
そうですか。
ちょっと、入門してみたいとか……思ってはいけませんでしょうか。
「うちにいるけど、貸し出すかい?」
「えっ?」
ゼリー寄せを食べながら信三郎さんが何でもないような風に言ったので、少しの間ポカンとしてしまいました。
「え、湯江さんのお宅に忍者がいるんですか?」
「見習いを含めると結構な人数」
思わず奈津子さんの方を見ますと、首を傾げて困った顔をしました。
「そっちの方はノータッチだから、私はわからないわ」
奈津子さんも知らないんですか。
「あ、いることは知ってるわよ。人数を知らないってこと。後、名前とか顔とかも知らないわね。もし仮に久保が忍者だと言われても私にはわからないというわけ」
今度は久保さんをみました。
ニッコリ笑って首を左右に振ります。
「残念ながら忍者ではありませんよ? 執事ですから」
忍者だと執事になれないということでしょうか。
久保さんは私に切り分けたケーキをお皿に載せてくれました。イチゴにチョコレートで顔がかかれています。
「お誕生日のお祝いですから、特別です」
どうやら私のイチゴだけにしてくれたようです。
携帯で写真を撮って、後で家族に送信しましょう。
「連絡しておこう」
「えっ、本当に貸していただけるんですか? でも、私のお小遣いではお給料払えませんけど」
「なに、お試しレンタルだと思ってくれて構わないよ。そうだなぁ、学園構内にいる時は必要ないだろうから休日に外出する時、貸そう。どうだい?」
大変興味がわいたために、その裏にある意味や理由を考えもせずに頷いてしまいました。
「はい、ぜひお会いしたいです」
私が言うと信三郎さんはニコニコしながら頷いて、船を下りてから自宅に戻るまでの間と、自宅から学園までの道のりに早速付けてくれるとおっしゃいました。
最終日に寮に戻りますからね。
結構忙しい日になりそうです。
「陽向さんって忍者好きなんだ?」
「はい、忍者になりたかったです」
実は私の部屋の本棚には忍者関連の本が結構あります。忍者は無駄に戦いませんし、逃げる技術も凄いのです。
「その割には無駄に戦ってるイメージだけど?」
「うっ……」
忍者になるには、まだまだ遠いようです。