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# 第二十三話 ## 「運動会の日」

# 第二十三話


## 「運動会の日」


秋。


空が高い。


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保育園からのお知らせ。


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【運動会のお知らせ】


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その紙を見た瞬間。


白石雫は微笑んだ。


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陽翔は意味が分かっていない。


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そして雨宮悠人は、


嫌な顔をした。


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「なんだその顔」


白石が言う。


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悠人は紙を見る。


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「いや……」


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「うん」


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「親参加競技って何だよ」


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白石、吹き出す。


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「そこですか」


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「そこだろ!」


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## ― 運動会前日 ―


陽翔はやる気満々だった。


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「いっとうしょう!」


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「お前、まだルール知らないだろ」


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「いっとうしょう!」


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会話にならない。


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白石が笑う。


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「楽しそうで何よりです」


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## ― 当日 ―


朝。


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保育園。


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園庭。


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テント。


カメラ。


保護者。


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すごい人数だった。


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悠人は小さく呟く。


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「婚活パーティーより人多くね?」


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白石が笑う。


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「比較対象がおかしいです」


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## ― 開会式 ―


子どもたちが並ぶ。


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陽翔発見。


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しかし。


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立っていない。


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しゃがんでいる。


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砂を触っている。


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「おい」


悠人が思わず言う。


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白石は笑いを堪えている。


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「自由ですね」


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「自由すぎるだろ」


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## ― かけっこ ―


ついに始まる。


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陽翔の番。


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位置につく。


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先生が笛を鳴らす。


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走る。


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みんな走る。


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陽翔も走る。


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途中までは。


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途中で止まる。


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「あっ!」


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地面のどんぐり発見。


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拾う。


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観客席。


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爆笑。


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悠人は頭を抱える。


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「なんでだよ!」


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白石は笑いながら涙が出ている。


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「陽翔らしいです」


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## ― ゴール ―


結果。


最下位。


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でも陽翔は満足そう。


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「どんぐり!」


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誇らしげ。


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悠人はため息。


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「勝負しろよ」


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## ― 親子競技 ―


最大の試練。


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親子で障害物を越える。


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陽翔はやる気。


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悠人は不安。


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スタート。


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走る。


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陽翔も走る。


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途中。


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「パパ、おそい!」


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大声。


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観客席爆笑。


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悠人。


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「うるせぇ!」


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さらに爆笑。


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## ― ゴール後 ―


疲労困憊。


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悠人は芝生に倒れる。


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「無理だ……」


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白石は笑っている。


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「お疲れ様です」


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「現場の方が楽かもしれん」


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## ― 閉会式 ―


最後。


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子どもたちにメダル。


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陽翔ももらう。


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嬉しそう。


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その顔を見て、


悠人は少し黙る。


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順位なんて関係ない。


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走る途中でどんぐり拾っても、


ちゃんと嬉しいらしい。


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子どもの世界は不思議だった。


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## ― 帰り道 ―


陽翔は首からメダル。


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何度も触る。


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「すごい?」


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悠人は笑う。


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「すごい」


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「かっこいい?」


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一瞬止まる。


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「かっこいい」


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陽翔は満足そうに笑う。


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## ― ラスト ―


夜。


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陽翔はメダルを抱いて寝ている。


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白石がその寝顔を見る。


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「今日、楽しかったですね」


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悠人は頷く。


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「だな」


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少し間。


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「でもさ」


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「うん?」


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悠人は笑う。


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「俺、あいつに似てきた気がする」


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白石も笑う。


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「今さら気づいたんですか」


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窓の外では秋の風。


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運動会は終わった。


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でも今日の思い出は、


きっとずっと残る。


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どんぐりを握りしめたまま、


一生懸命走った小さな背中のように。


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