沖矢俊才の遺書
沖矢俊才の一生はとある戦場で、儚くも終わりを告げた。戦人が戦場で死ねたのは本望であったのかもしれない。身寄りもなく、とにかく自分以外の人間とは、一切の交流を絶っていた筈の沖矢俊才の遺品を整理していたのは、意外な人物であった。
インディアーセン共和国陸軍大尉アルデンカ・バイカス、沖矢の直属の上官であった。すると大尉は1通の手紙を発見しチラッと読んでみた。
「今日は何となく今の気持ちを書こうと思う。まぁ、いつ死ぬかも分からない職業ではあるし。異国の地で肌色も言葉も、何もかもが日本連邦とは違う事は分かりきってはいたが、実際にそこに身を投じるとなると、これは凄まじいまでのカルチャーショックだ。孤独は慣れているが、たあいもない会話すらまともに出来ないのは流石にキツい。インディアーセン共和国の人は皆親切だし、とにかく陽気だ。戦いをしていない時は、とりあえずドンチャン騒ぎだ。それにはもう慣れた。」
「戦場を求めてこんな西の大国まで足を伸ばしたのは間違いではなかった。インディアーセン共和国は、日本連邦とは比較にならないくらい国家戦争が多く、毎日が刺激的スリルである。インディアーセン共和国は、日本連邦とは違い圧倒的な軍事力を保有していない事が大きく影響しているからだと推察される。とにかく今、自分はこの国の軍人として必要とされている事を強く感じている。ここが終わりではない事もよく理解している。しかし、世界中どこに行っても戦場はある。」
「残念ながら人類は未だに戦争の抑止に有効な手を打てていない。そして何より、今も多くの人間が戦争により何らかの被害を被っている。俺一人でどうしようもない出来ない問題なのは理解しているが、くだらん正義で人は救えないと言う事は、よく分かっているつもりだ。ガムシャラに戦いを続けても、これと言う答えには辿り着いてはいない。」
「そもそも、一体何の為に生きているかも全く理解出来ていない。それでも強さを求める気持ちは変わらずある。強さとは何か?たった10年ちょっとの軍隊生活で、何が分かるのかと言われてしまえばそれまでだが、明日には自分はこの世にはいないかもしれない。そして、この手紙を読んでいる時点で俺は死んでいるだろう。」




