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九尾の孫 番外編【策】  作者: 猫屋大吉
16/18

事故

遅くなりました。このところ更新が遅れていてすいません。

病院に着いた聡と優子は、玄関入り口の受付カウンターで樋口の入院先を聞き、病室へ急いだ。

病室は、個室では無かったので聡は少し、ほっとする。

ベット脇に真宮寺が座っていた。

「樋口さんは」と聡が聞くと

「トイレ」と真宮寺が答えた。

「どんな様子なんですか?」優子が聞くと

「体は、軽度の火傷程度で済んだんですが、なんか、ねぇ。あ、帰って来た」

「こりゃぁ、相馬さん、見舞い、ありがとうございます」

両手、両足を包帯で巻かれ、顔の左半分も包帯で巻かれた樋口が言った。

「ど、どこが軽度なんですか。大火傷じゃない」

優子は真宮寺に抗議すると

「見た目はこんなんですが、完全に元に戻る程度ですよ。いやぁ~、油断しました」

痛々しい包帯でグルグルと巻かれた体を揺すり、笑いながら樋口が言う。

「ほら、本人も言ってる」真宮寺がふてながら言う。

「真宮寺が居なかったらヤバい所でした。護摩を焚いてたらその炎に奴が現れましてね、こう、体中に炎が纏わりついて思わず、叫んだ所へ真宮寺が来て水でその炎を消してくれたんですよ」

樋口が説明した。

「ありゃ、妖火じゃなかった。野郎、本物の炎を扱いやがった」

真宮寺が拳を握り締めながら言った。

「そうなんだ、まやかしの火じゃなかった。おかげで俺はずぶ濡れ」

樋口が笑いながら言う。

「仕方ないだろ、池の水、半分くらい使ったんだから」真宮寺が言うと

「池?、あー、道理で臭いはずだ。風呂に入りたくなって来た」

樋口が苦笑いし、真宮寺の顔を見ながら言った。

「元気そうで良かった、なぁ、優子」聡が優子を見ながら言う。

「そうだね、真宮寺さんの話から想像して、やさぐれちゃったのかと思ってた」

優子は、にっこり微笑みながら言った。

「じゃ、長居も無用だし、私達は帰るよ。お大事に」

聡は言うと、優子を促し、病室を出て行った。

「なぁ、真宮寺、あのお嬢さん、鋭いな」樋口が呟くと

「あのなぁ、その態度を見てたら誰にでもわかるわ。相馬さんも早々に帰っただろ。お前、大丈夫か? まさか、初めっから無いプライドが傷付いたなんて言うなよ。それはお前の気の迷いだ。プライドなんて物は、言葉のアヤだ。形の無い物にすがるのはお前ら人間は得意だろう。言葉にすがってそれで終わる気か? 俺達から見ればたった百年生きてるかどうか分からん癖に。時間が勿体ないだろ」

真宮寺が少し怒りながら言った。




翌日、聡は大学へ向かった。

久しぶりに研究室に行くと学生達が聡を取り囲んで

「教授、壁のシミが無いんですけど、教授が消したんですか?」

安藤達が言った(動物性蛋白質)に事の発端がある様で 校内では壁のシミが助手を惨殺したと学生達の間でもっぱら話題になっているらしかった。

「何!」聡にも心当たりがある為、壁を見に行く。

「此処、此処にありましたよね」

壁の一部を指先で丸く円を描きながら学生の一人が言った。

聡は、「あぁ、うん」と壁のシミの有ったらしい場所を見つめたまま 頷く事しか出来なかった。

(あの樋口さんでさえ・・・。腹をくくらんと)聡は、心に誓った。




夕方、早めに大学を出た聡は、片側3車線のある大きな通りで ふと、優子の事が気になり、車線を抜け出して路肩に駐車している車の列の間に止めるて電話をする。

「お父さん、うん、何?」

いつもの明るい娘の声で聡は今日一日の暗い気持ちが吹っ切れた気がした。

「今日は、何時に家に着く予定だ」聡が聞くと

「うん?、何?、そうだね~、7時ぐらいかな? どっかに食べに行くの?」

「そうだな、お父さんは、今、大学を出た所だから・・・家の近くのステーキ屋でも久しぶりに行くか」

「OKぇ~、じゃ、7時前に着く様に頑張るよ」

娘の声がなぜか懐かしく思えた聡は、路肩に止めた車を車線に戻す為にバックミラーを覗き、目視で右後ろを見た瞬間だった。

一台のタンクローリーが聡の3台後ろに止まっていた車にぶつかった所だった。

タンクローリーはそのまま路肩のガードにぶつかると擁壁に激突して止まった。

聡は慌てて運転手の安否を確かめる為に車を降りると聡のすぐ後ろの四駆の運転手が大声で叫ぶ。

「ガソリンが漏れている。降りちゃだめだ。もっと前に逃げろ」

聡は慌てて車を発進させる。

聡の前の車もほぼ同時に発進する。

後ろの車も発進する。

3台、4台と次々に発進するが、車線に入る所で止まってしまう。

タンクローリーに当てられた車の部品や、タイヤが邪魔で車線其の物が閉塞を起こしていた。

聡達、駐車していた車は車線に入るべく斜めに向いた状態で止められてしまった。

急ぎ、車を降りた聡の後ろの車の大男が、聡の車のドアを開けて走って逃げましょうと言って聡を促すと、また、前の車に駆けて行って窓を叩いている。

聡も降りてその男を追う様に駆けだした時、後ろのタンクローリーが爆発を起こした。

爆風で後ろの車が前タイヤを地面につけたまま後ろが跳ね上がった。

聡の車も少し浮いた様に思えた。

聡の体も前に持って行かれそうになる。

タンクローリーを真ん中にガソリンがアスファルトの上に広がって行く。

ガソリンの上を炎が走る。

大惨事であった。

周りの車からも次々と人が飛び出し、炎から遠ざかる為に車を放置したままで車道を走り出す。

後ろの車に乗っていた大男が走り込んで来て

「大丈夫ですか? こっちへ」と言い聡と聡の前の車の運転手を誘導する。

男は、坂になった上り口まで誘導すると

「此処なら風上になります。御二人共、大丈夫ですか?」と聞く。

「はぁはぁ、あ、助かりました。ありがとうございます」

聡は、息を切らしながらもやっとの思いで答えた。

「無線で消火ヘリを呼んであります。到着したら消火が始まりますから口や鼻を布か何かで被って下さい」大男が言うと

「あ、貴方は、いったい」聡が聞く。

聡の前の車の運転手も息を落ち着かせながら大男を見る。

「自分は、奈良の陸上自衛隊の者です」大男が答える。

聡と前の車の運転手が顔を見合わせ、納得した。

機転、判断、誘導、対策、どれをとっても最善、最速の決断をしていた。

「さすがですね」前の車の運転手が言った。

「助かりました。ありがとうございます」二人は言い、頭を下げた。

「自分は、逃げ遅れてる人がいないか確認に行きますのでこれで」

大男は言うと頭だけを少し下げると振り向き炎へ向かって走って行った。

聡と前の車の運転手がその後ろ姿を見送った。

大男の姿が見えなくなると 聡は内ポケットから携帯を取り出し、優子に電話を掛け事故の状況、無事である事を伝えた。

15分程すると消火ヘリが3機飛んで来て空中から消火剤を撒き始め、やがて炎は、鎮火した。

聡が、目を細め、ハンカチで鼻と口を覆って消火剤の粉塵をやり過ごして暫くすると携帯が鳴った。

聡の知らない番号からだった。

「はい? 相馬ですが」聡は訝しみながら電話に出ると

「相馬さん、俺です。真宮寺です」

「あー、真宮寺さん。今、事故に巻き込まれて 大変なんですよ」

「知っています。土蜘蛛から連絡ありました」

「へっ? 土蜘蛛?」

「貴方を安全な場所に誘導したって聞きましたよ」

「あれは、自衛、あ、もしかして、あの人も・・・そうなのか?」

聡は隣に居る男に聞こえない様に小声で言った。

「はい。彼も妖です。無事で良かった」

「ありがとう。本当、感謝してる。今度、会ったら礼を真宮寺さんから言っておいて下さい」

「彼らは、ほら、葛城山が本拠地ですよ。会ったら言っておきます。では、」

「ありがとうございます。宜しく御伝え下さい」

聡は、携帯を切った。


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