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九尾の孫 番外編【策】  作者: 猫屋大吉
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邂逅

遅く成って ごめんなさい。

私の借りている海外のメールサーバーの親側がハッキングされたらしくサーバー屋さんが懸命に復旧された様です

時計が深夜二時を回った頃、優子は眠くなったと言い、

「おやすみなさい。ごゆっくり、御二人の部屋を用意して其のまま寝ます」と言って立ち上がり、お辞儀をしてリビングを出て家の奥へと行った。

樋口は優子がリビングを出て行く時、笑顔を持って送りだすと身を乗り出し聡に小さな声で

「どういった経緯でこんなとんでも無い妖力を持った化け物に目を付けられたんですか」

と聞く。

「とんでも無い力を持った相手なんですか」

「ええ、遠隔呪法でこの力ですから・・・私の作った符を切り裂く程の力、もし、相対して目の前に現れたら対処出来ずに殺されてしまう程の強大な力を持っていると簡単に判断出来ます」

樋口が言うと聡は若い頃からの一連を話すると

「うーん、狙いはお嬢さんか、お嬢さんに何かの力が有るのか、まだ眠っているのか・・・」

樋口が呟くと真宮寺が

「そうか、一連の獣に寄る殺人はそうやって近づいて能力が無い事が分かると証拠を消す為に惨殺して行ったのか」と言い、膝を叩く。

樋口は俯きながら

「其れにしても其処まで時間を掛けてまで手に入れたい力・・・どんな力なんだ。之ほどの力を持ちながらも欲する力とは・・・、其れと過剰な程の隠密性と用意の周到さ・・・まさか、クーデターを企んでいつのか?、この世界を変えるつもりなのか?、おい、真宮寺、心当たりは無いか?」

聞かれた真宮寺は、身を乗り出しながら両ひざの上に両肘を乗せ手を組みながら、暫く上を向いた後、正面を向くと

「俺の知ってる限りじゃ・・・そうだな・・・九尾狐率いる狐一族、天狗一族、土蜘蛛一族、大蛇一族に狸一族、その辺りしか思いつかねぇ・・・みんな、一族を守り、監視し、人と共存する方針を打ち出している。狐一族は妖最強の二人が他を抑えて平和を保ってる、まぁ、この間の京都の荒れ野原みたいにしてたが、ありゃ、その二匹がたまに遊びでじゃれ合っただけなんだけど、土蜘蛛一族は自衛隊で国を守る立場だし、天狗一族や大蛇一族は国を代表する会社を幾つか経営してるし、狸達は酒盛りに余念が無いし、今の妖達にそれ程 人に恨みを持ってる奴って・・・、多少は居るけど、個人レベルって程度だから、ここまで人に目を付ける理由が無いしなぁ」

「ちょ、一寸待って、あの京都の事件は狐二匹が・・・?」

(ハイテクを持ってしても簡単に作り出す事の出来ない 超高熱と絶対零度、その能力を戦いでは無く、遊びの上の戯言であの状態にしたと言うのか)

聡は驚愕を隠し切れなかった、手が勝手に震える。

妖達の底知れぬ特異な能力、否、彼らの魂の力、超能力、妖力に恐れを抱く。

聡のその様子を見て、真宮寺は、(びびらせちまったか)と思い、

「並の狐じゃねーぜ、馬ぐらいの大きさで九本の尾を持った、一匹は眩い金色でもう一匹は漆黒の狐、奴らは其々の神社に仕えている神使で善行しか行わない、あの時、一匹、野狐が犠牲に成っててな、問題はそいつが野狐だったって事だ。俺が思うには、野狐は南から北方向に走っていたらしいし、近くの妖達は事前に知らされていたから避難してたって事だから、もしかしたら病院を襲った野狐かもわからん。あの二匹の九尾は悪行を働く奴には悪魔も裸足で逃げ出すぐらいに無慈悲で冷酷で・・・なぁ」

「そんなに強いんだったら味方になってくれないかな」

聡が言うと

「残念ながら、神に仕えてはいるけど、なぁー、人嫌いで、神からの指示でもなきゃ、指一本 動かしゃしないよ」

真宮寺が答える

「相馬さん、私が私の力の限り守ります。ですが、もし、私が倒されたら 神と人、其れに妖と人との間に立つ一族が太古の世より存在しています。勿論、彼らは人間です。悠久の頃から私達、人間にはその人物の名や場所を語る事は禁忌とされて居ますので、教える事は出来ませんが、その方を探して下さい・・・お願いします」

樋口が言い、頭を下げた。

「頭を下げないで下さい。私が御願いした事なんですから、貴方を巻き込んでしまって悪いとさえ思っております。すいません、よろしく御願い致します」

聡は頭を下げながら両手を差出して樋口の手を掴んで握手した。

聡、樋口、真宮寺の三人は、この話題から離れ、世間話や冗談を言いながら酒盛りを続け、外が白じんで来た頃、漸く三人は、眠る為にリビングを後にした。




庭のツツジが赤く晩秋到来を告げ始めた日、

優子が会社から戻るとリビングで聡が電話を持ってつっ立ったまま背中を向けていた。

「お父さん」

優子が声を掛けるが、其の儘で居る。

「おとうさん」

少し大きな声で言うと聡は飛び上がって振り返ると

「びっくりした、お帰り」

振り向いた聡の顔を見て優子は驚いて聞く。

「ど、どうしたの⁉︎ 顔色、真っ青だよ」

「樋口さんが大怪我をして病院へ運ばれた」

ボソリと呟く様に言った。

「えー、あの樋口さんが‼︎ 何で⁉︎ もしかして、例の化け物⁉︎」

「真宮寺さんの話では どうもそうらしい。直ぐに着替えて病院へ行くよ」

聡が言った。




時は半日戻り、神社裏手の祭事の間に樋口は座って居る。

樋口の正面には角材を互い違いに組合わせた

囲炉裏で護摩を焚いて、和紙を巻いた榊を右手に持ち、四方に足を打ち鳴らした後、八方にも打ち鳴らしながら歌の様に呪文を唱えていた。

突然、護摩の炎が立ち上がると

「お前、俺の存在を何故、知っている」

炎が喋った。

「お前は、何者だ。何を企む」

樋口は榊を顔の前に掲げながら言う。

「先に答えろ」炎が言った。

「言う必要等、有りはしない。この国をどうするつもりだ」

「ほう、勘の良い奴だな。さっきから尻尾の一つが痒いから其れを止めろ」

「この国から手を引け」

「何を馬鹿な事を。祖母の代からの悲願を引けと、ケッ、笑わせるな。青二才が!」

「祖母とな。祖母の名前とは、如何なる名じゃ」

「答える義理は無い。其れとも 俺の手下に成って働かんか? くっくっくっ」

「働かせて その後は・・・殺すか?」

「おう、正解だ。流石に勘が良い」

と言うと炎は大きな声で笑い出した。

「私にはそんな野心は無いし、化け物に指図されるのは、もっと嫌だ」

「ならば、サッサとシネ‼︎」

大きく成っていた炎が更に大きく成って樋口に巻き付き始めた。

「うわー」

樋口の叫ぶ声がした時、真宮寺が飛び込んで来た。

「樋口!」と叫ぶと 真宮寺は手から大きなバスケットボール大の水球を出して樋口目掛けて投げつけた。

樋口に取り巻いていた炎は小さく成り、消えた。

「ひぐちー」

叫びながら真宮寺は倒れて行く樋口を掴み、両手で抱き留めた。

護摩の火も消えていた。

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