退魔
外伝の割に話が長くてすいません。頑張って書いていますので今後共、よろしくお願いします。
聡は樋口に川沿いであった事を喋り、封書を差し出しながらその時に見た光景、空間の亀裂の向こうにあった景色を言う。
樋口は、切れた封書を左手に持ち、
「恐らく・・・嫌、間違い無く術者の今 居る場所と術者でしょうね」と言う。
横で左手にビールグラス、右手にピザを持った真宮寺が
「すげぇ、そいつ、この封書を一撃でこんな風にしやがったんだ」と言うと樋口が
「相当な術力、呪術と言ったところだな」
「樋口のコレに手を出しただけで消滅した奴、いっぱい知ってるぜ」
「一度は完敗したけどな」
樋口が呟く様に言う。
「あー、あの時か」真宮寺が言うと
「今は相馬さん一家の方だ」
樋口が真宮寺の言葉を遮る様に言い、右手で懐から新しい封書を取り出して聡に渡し、左手に持った封書を見つめて
「相手の妖気が少し残っている」と言いながら左手を伸ばして自分の目の高さにすると呪文を詠唱すると封書がひとりでに宙に少し浮き上がり炎を纏って焼跡、灰も残さず消え失せた。
真宮寺が思わず、
「オイオイ、此処でするか」と言う
聡と優子は 声も出ず、ただ目を丸くして封書の消えた空間を見ている。
「今のが不動明王火炎呪と言われる技だ」
真宮寺が言う。
「す、凄い、これが陰陽術の一つですか」
聡が言う。
優子が「紙を燃やしたのに灰も無いよ」
「今のは密教・・・退魔法の一つです」
と樋口が言った。
「貴方は一体・・・」聡が聞くと
横から真宮寺が口の周りの粉を拭いながら
「陰陽師で在り、退魔師でもある。この世界じゃかなり有名な退魔師だぜ。どっちが本業か分からんけどな」
と言うと
「え、え、一寸待って下さい。神官ですよね。坊さんじゃ無いですよね」優子が聞くと
「神社と寺院は統合されているんだよ、確か、神社の下に寺院と言う、そう、序列じゃ無いけどそんな風に位置づけられてるよ」
聡が説明すると
「そうなんだ、じゃ、何で二つあるの」
優子が尋ねた。
「神道は神様、仏教は仏様、仏道は人が死んだら進む道、神様は五次元より上の次元に住んで居られる。仏様は霊魂、三次元もしくは四次元で住み分けしている」
「あ、なる程。妖怪は?」
「真宮寺達は肉体は三次元、魂は四次元。中途半端なのさ」樋口が言う。
「はん、中途半端ですいませんねっと」
真宮寺はふて腐れながらピザを摘み上げる。
「妖達は肉体が三次元の影響下にあるので人間と同じ様に老化や劣化は避けられない、でも魂は四次元に在る為に時間に左右されない、其処で肉体の老化、劣化を魂の力で修復する。この力が妖力と言われる力の源と成っています。魂の肉体への干渉する力です」
聡と優子は身を乗り出す様に聞いている。
「今回、この封書が封じた事になるんですか?」聡が聞くと
「この妖力、全ての妖達が持っていますが、種類と言うか・・・うーん、特性だね、特性は 個々に異なる為に特性に合った対処を行う必要があります」
樋口は言い、グラスのビールを一口呑む。
連られて聡と優子も手に持ったままのビールを呑み込んだ。
優子が空いた各々のグラスにビールを注ぎながら
「封書に込められた力が妖気の特性に合ってたって事ですよね」と言う
「よく特性がわかりましたね」
聡が問いかける。
「分からなかったですよ」
樋口は にっこり笑いながら注がれたビールに口を付けて言って、
「分からなかったので、陰陽五行に乗っ取った相剋を使った呪文で防御し、同じく相剋を用い、相手が力を使った場合、合気に依って攻撃が発動する封書を作りました」
「そうなんだ、何か、これって凄いんだね〜」
優子は言いながら胸ポケットから取り出してマジマジと見つめる。
「嬢ちゃん、見て分かるかよ〜」
真宮寺が言うと
「うっさいわねー」
優子が封書を真宮寺の目の前に突き出す。
「止めろー」
大声を出して真宮寺が後ろに仰け反る。
「優子、」聡が声を掛ける。
「冗談よ、冗談」
「御嬢さんに妖達の教育を頼もうか」
樋口が笑いながら言った。
「妖達って真宮寺さん以外に?、ん?」
優子が聞くと
「どいつも気の良い奴らですよ、争いが嫌いで弱っちい奴ばっかりですけどね」
真宮寺が言うと
「真宮寺さんも弱い?」
優子が聞くと 今度は樋口が
「こいつは水を自在に操る。普通の人だったら身体中の水を無くす事の出来る力を持っている、でもね、理由は分からないけど人が好きなんだそうだ。たまに柏餅をお土産であけると何処かに持って行き、食べたあと目を真っ赤に腫らして帰ってくるよな」
「真宮寺さん、柏餅が好きなんだ。あっ、有るよ、昨日のだけど、持って来てあげる。さっきの御返しね」
優子が立ち上がってキッチンへ走り冷蔵庫を開けて包みを持って戻ると真宮寺に手渡す。
「ありがとう」と言って両手で受け取り何度も頭を下げる。
「ねぇ、何で柏餅が好きなの?」
優子が聞くが真宮寺は頭を下げるだけで言おうとしない。
「ほら、答え無いと失礼だろ」
樋口が肘で真宮寺の脇腹をつつきながら言った。
「うーん、恥ずかしい」真宮寺が言う。
「誰にでも有るよ、私も好きな物、リンゴなんだけどお父さんに聞いたらね、お母さんは私が生まれて直ぐに入院してて赤ん坊の私をお父さんが見舞いに連れて行く度にお母さんがリンゴを擦ってジュースにして飲ませてくれてたからなんだって。私にとってリンゴはお母さんの味なんだよ」
優子が言うと
「お、俺も小さい時に居た沼の近くの村人に虐められてて・・・沼の裏の山に住んで女の子を連れたおじさんにいつも助けて貰っていてね、キズ薬貰ったり・・・時々、柏餅をくれたんだ。ある日、女の子が裏山の川で溺れそうに成ったんだ、俺は沼に居たけど水の声で分かって沼の水流に乗って川に飛び、女の子を救っておじさんに手渡したら偉く喜んでくれて村人達にも伝えてくれて・・・其れからは虐められ無くなった。上手く言えないけど・・・其れから人が好きに成って、柏餅が俺と人とを結び付けてくれた・・・さっき、樋口が柏餅を渡したら何処かに行くって言ったのは、そのおじさんと女の子のお墓に持って行って其の前で食べてたんだ」
頭をかきながら真宮寺は優子に言った。
「うん、よくわかったよ、ありがとう話してくれて、其れと人を好きに成ってくれてありがとう。真宮寺さんの小さい頃ってきっと何千年も前の事だよね〜、その時の気持ちのままで居られるって凄い事だね、立派だよ」
優子は真宮寺の手を取りながら言った。
真宮寺は嬉しくって遂には泣き出して、泣きながら柏餅を食べていた。




